「フェイザーを試してみたいけれど、いきなり高額なペダルに手を出すのは不安」「MXR Phase 90は定番だけれど、もう少し音作りの幅が欲しい」――そんな悩みを抱えるギタリストにとって、tc electronic Blood Moon Phaserは有力な選択肢のひとつです。
実売5,000円前後という驚異的な価格ながら、完全アナログ回路と3ノブ構成で幅広いフェイズサウンドを実現するこのペダル。
本記事では、実際の使用感やユーザーの生の声をもとに、良い点も悪い点も包み隠さずお伝えします。
購入を迷っている方が「自分に合うかどうか」を判断できる情報をすべて盛り込みました。
Blood Moon Phaserとは?製品の概要
Blood Moon Phaserは、tc electronicが展開する低価格アナログペダルシリーズ「Smorgasbord of Tones」の一機種です。
1970年代のフェイザーサウンドを現代に蘇らせることをコンセプトに開発されており、4ステージ・アナログ・フィルターを搭載しています。
名前の「Blood Moon(ブラッドムーン=皆既月食時の赤い月)」は、フェイザーの「phase(位相)」と月の「phases(満ち欠け)」を掛けたネーミングです。
tc electronicといえばデジタルエフェクトの名門として知られますが、本機はあえてアナログ回路にこだわっています。
同社がMusic Tribe傘下に入った後に設計されたモデルであり、Behringerの既存回路をベースにしつつ、筐体設計やコントロールレイアウトを刷新した製品です。
低価格でありながら「使い捨て」ではない堅牢さと、上位機種に迫る音作りの柔軟性を備えている点が、本機の立ち位置を端的に物語っています。
外観・デザインと筐体の質感
筐体は折り曲げスチールによる2ピース構造で、手に取った瞬間にバジェットモデルとは思えない重量感と堅牢さを感じます。
ダークレッドからブラックへのグラデーションに月のグラフィックが映える外観は、ペダルボード上でもひときわ存在感を放ちます。
サイズは一般的なコンパクトペダルよりもやや幅広で、いわゆるミニペダルではありません。
ペダルボードのスペースが限られている方は、実寸を事前に確認しておくことをおすすめします。
ただし、入出力ジャックがすべて筐体上面に配置された「トップマウントI/O」設計のおかげで、ペダル同士を隙間なく横に並べることが可能です。
実際のボード上では、見た目の幅ほどスペースを圧迫しません。
3つのコントロールノブは大きめに設計されており、指で摘みやすく、ライブ中の素早い調整にも対応できます。
ポット(可変抵抗器)には適度なトルク感があり、一度設定した位置から不意にズレる心配が少ない点も好印象です。
スペック・仕様
Blood Moon Phaserの主なスペックは以下のとおりです。
エフェクトタイプは4ステージ・アナログ・フェイザーで、コントロールにはRate(スピード)、Depth(深さ)、Feedback(フィードバック)の3つのノブを備えています。
バイパス方式はトゥルーバイパスを採用しており、電源は9Vバッテリーまたは9V DCセンターマイナスのアダプターに対応しています。
筐体表記上の消費電力は100mAとなっていますが、実測値はわずか18mAと非常に省電力です。
入出力端子はモノラルのインプットとアウトプットがそれぞれ1系統ずつで、いずれもトップマウント配置です。
注目すべきは消費電流の低さです。
実測18mAという数値は、9V電池でも相当な長時間駆動が可能であることを意味しています。
マルチ電源アダプターを使用する場合でも、電源容量をほとんど消費しないため、他のペダルへの影響を最小限に抑えられます。
3ノブが生み出すサウンドの幅
Blood Moon Phaserの最大の特長は、低価格帯では珍しい3ノブ構成によるサウンドメイクの柔軟性です。
定番のMXR Phase 90がSpeedのみの1ノブであるのに対し、本機ではRate、Depth、Feedbackという3つのパラメーターを独立して操作できます。
Rateノブはフェイズスイープの速度をコントロールします。
最低速ではゆったりと数秒かけてうねる深いスイープが得られ、カッティングやアルペジオに心地よい揺らぎを加えてくれます。
最高速まで回しきると、もはやフェイザーの域を超えたリングモジュレーター的な高速パルスサウンドが飛び出し、実験的なサウンドメイクにも対応します。
Depthノブはエフェクトの深さ、つまりフェイズ効果がどの程度顕著に聴こえるかを調整します。
浅めに設定すれば、原音にわずかな空間的広がりを加えるサトルな効果が得られます。
深めに設定すると、70年代を彷彿とさせる濃厚なうねりが前面に出てきます。
そして本機の真骨頂ともいえるのがFeedbackノブです。
エフェクト出力の一部を回路に再入力することで、レゾナンスの効いたウォータリーなサウンドを作り出せます。
通常、Feedbackコントロールは上位価格帯のフェイザーにしか搭載されない機能であり、5,000円前後のペダルでこれが使えるのは大きなアドバンテージです。
Feedbackを上げた状態でDepthノブを動かすと、周波数スイープのように音色が変化する独特の挙動も確認されており、2つのノブのインタラクションが予想以上に深い音作りの可能性を引き出します。
実際のサウンド傾向と使用感
Blood Moon Phaserのサウンドキャラクターを一言で表現するなら、「温かく太い、ヴィンテージ志向のフェイズサウンド」です。
MXR Phase 90のようなカラッと明るいフェイズ感とは異なり、どこかユニヴァイブを彷彿とさせる「スクイッシュ感」――音が柔らかく押しつぶされるような質感――を持っています。
この特性を好む人にとっては唯一無二の魅力ですが、MXR的なストレートなフェイズ感を求める人には「癖が強い」と映る可能性もあります。
クリーントーンとの相性は特に秀逸です。
シンプルなカッティングに本機をかけると、音に透明感のある広がりと揺らぎが生まれ、楽曲のムードをガラリと変える力を持っています。
オーバードライブとの組み合わせでも良好で、歪みの上にフェイズを重ねることで、David GilmourやRobin Trowerを思わせるリキッドなリードトーンを引き出せます。
ベースでの使用も想定以上に好結果です。
一部のフェイザーはエフェクトをかけると低域が痩せてしまう問題がありますが、本機ではフルエフェクト時でも低域の損失が確認されていません。
ベーシストがフェイザーを導入する際の有力な候補といえます。
一方で、Rateノブの操作感には注意が必要です。
ノブの回転角度と実際の速度変化がリニアではなく、0から7割程度まではほとんど変化を感じられず、残りの2〜3割の範囲に実用的な速度域が集中しています。
慣れれば問題なく扱えますが、初めて触ったときは戸惑うかもしれません。
他の定番フェイザーとの比較
フェイザーペダルの世界には定番と呼ばれる製品がいくつか存在します。
ここでは代表的な3機種と比較してみましょう。
MXR Phase 90は言わずと知れたフェイザーの代名詞です。
Speedのみの1ノブ設計で、とにかくシンプルに良い音を出したい人に向いています。
一方、Blood Moon Phaserは3ノブによって圧倒的に広い音作りの幅を持っており、Phase 90では得られないウォータリーなフィードバックサウンドや深いスイープを実現できます。
実際にA/B比較を行ったユーザーの間では「Blood Moonの方が温かく太い」「Phase 90より好み」という評価が多く見られます。
ただし「Phase 90のストレートさが好き」という人も一定数おり、サウンドの好みによって評価が分かれるところです。
価格面ではBlood Moon Phaserが大幅に有利です。
MXR Phase 95はPhase 90とPhase 45を1台に統合したミニサイズモデルで、スクリプト回路とブロック回路の切り替えも可能です。
コンパクトさと多機能を両立していますが、DepthやFeedbackの個別調整はできません。
音作りの自由度という観点ではBlood Moon Phaserに軍配が上がります。
tc electronic Helix Phaserは同じtc electronic内の上位モデルで、TonePrint機能によってステージ数の変更やパラメーターの詳細設定が可能です。
フェイザーを徹底的に追い込みたいプレイヤーにはHelix Phaserが適していますが、「アナログの温かみ」「シンプルな操作」を重視するならBlood Moon Phaserの方がしっくりくるでしょう。
おすすめな点
第一のメリットは、やはり価格対性能比の高さです。
実売5,000円前後という価格でありながら、完全アナログ回路による本格的なヴィンテージフェイズサウンドが得られます。
上位機種にしか搭載されないFeedbackコントロールまで備えている点は、この価格帯では他に類を見ません。
第二に、3ノブ構成がもたらす音作りの柔軟性です。
サトルな薄がけからディープなうねり、さらにはリングモジュレーター的な飛び道具サウンドまで、1台でカバーできる守備範囲の広さは特筆すべきものがあります。
Feedbackノブの存在によってレゾナンス感を自在にコントロールできるため、「ユニヴァイブ的なスクイッシュ感」という本機独自の音色領域にもアクセスできます。
第三に、トップマウントI/Oによるペダルボード上の省スペース性です。
同シリーズのペダルと組み合わせれば、隙間なく並べてボードを効率的に使えます。
第四に、実測18mAという超省電力設計です。
電池駆動でも長時間使用でき、マルチ電源使用時も他のペダルの電源を圧迫しません。
第五に、ベースでも使えるという汎用性です。
低域を損なわない設計のため、ギタリストだけでなくベーシストにとっても有力な選択肢となります。
注意点
最も多くのユーザーが指摘しているのが、エフェクトON時の音量上昇です。
本機にはOutput Levelコントロールが搭載されておらず、ペダルをオンにすると原音よりも音量が上がる傾向があります。
クリーンチャンネルで使用すると、意図しない歪みが生じるケースも報告されています。
この問題はシグナルチェーン上の配置で軽減できる場合があり、コンプレッサーの前に置く、あるいはアンプのエフェクトループ内で使用するといった対処法が共有されています。
しかし、環境によっては完全に解消できないこともあるため、購入前に認識しておくべきポイントです。
Rateノブの非リニアな特性も注意点のひとつです。
前述のとおり、ノブの大半の回転範囲ではスピードの変化が乏しく、実用的な調整は狭い範囲に集中しています。
ライブ中に足元でスピードを微調整するような使い方には向きません。
ノイズについても把握しておく必要があります。
アナログ回路の宿命として若干のバックグラウンドノイズが存在し、特にFeedbackノブを上げた状態やハイゲイン環境では顕著になります。
ライブ演奏では気にならないレベルとの評価が多いものの、静粛性が求められるレコーディング環境では気になる場合があるかもしれません。
フットスイッチの踏み心地にも好みが分かれるところがあります。
一般的なペダルに見られる「カチッ」というクリック感が薄く、踏んだ確認をLEDの点灯で判断する必要があります。
また、オン/オフ切り替え時にポップノイズが発生するとの報告もあります。
電池交換にはプラスネジ4本を外して裏蓋を開ける必要があり、やや手間がかかります。
頻繁に電池交換を行う方は、外部電源アダプターの使用を検討した方がよいでしょう。
評判・口コミ
ユーザーが評価するおすすめな点
「この価格でこの音が出るのは驚異的」というコストパフォーマンスへの評価は、国内外を問わず圧倒的に多く見られます。
定番のMXR製品よりも大幅に安価でありながら、音の太さや温かみでは互角以上と感じているユーザーが少なくありません。
3ノブの操作性についても「不要かと思っていたが、実際に使うとあるほうが断然便利」「ダイヤルインが簡単で、ファンキーな音からライトな効果まで自在」と好意的な声が大勢を占めています。
サウンドの質感に関しては「温かく太い」「ユニヴァイブ的なスクイッシュ感がある」「スイープが滑らかで均一」といった表現が繰り返し登場します。
特にクリーントーンとの相性については「今まで試したフェイザーの中でも特にクリーンに合う」「広がりと透明感のあるサウンド」と高い評価を得ています。
アメリカン・ロック的なフィーリングを手軽に得られる点や、シンプルなカッティングに彩りを加えてインスピレーションを刺激してくれるという長期使用者の声も見られます。
筐体の堅牢さについても「ライブで踏んでも壊れない安心感がある」「バジェットモデルの質感ではない」と安心を感じているユーザーが多いです。
トゥルーバイパス設計やトップマウントI/Oも、実用面で評価されているポイントです。
購入前に確認すべき注意点
音量上昇の問題は、購入者の間で最も多くの議論を呼んでいるトピックです。
「オン/オフの音量バランスが崩れて使いにくい」「クリーンで使うと歪んでしまうほど音が大きくなる」という報告は少なくありません。
中には、自ら可変抵抗器を増設して音量を下げる改造を施したユーザーもいます。
一方で「コンプレッサーの前に配置したら気にならなくなった」「エフェクトループ内で使えば問題ない」という解決策を見つけたユーザーもおり、シグナルチェーンの工夫次第で対処できる場合もあります。
「癖が強い」という評価も一定数存在します。
MXR Phase 90のようなストレートで素直なフェイズ感を期待して購入すると、ミスマッチを感じる可能性があります。
「安いからとりあえず買う」のではなく、本機特有のウォームでスクイッシュなキャラクターが自分の求める音に合っているかを事前に確認することが重要です。
ノイズに関しては「電池駆動でもそれなりにノイズが乗る」「フィードバックを上げると上の周波数がシュワシュワ言う」という声がある一方、「ライブでは全く問題ないレベル」「アナログフェイザーとしては標準的」と評価を分ける意見もあり、使用環境やノイズへの許容度によって判断が分かれるポイントです。
Behringer回路をベースにしている点について気にするユーザーも存在しますが、「筐体の質やトゥルーバイパス設計など、Behringer版からの改善点は明確にある」「出音が良ければ出自は気にしない」と割り切っている声が多数派です。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
Blood Moon Phaserをおすすめしたいのは、まずフェイザー入門者です。
低価格ながら3ノブで幅広い音作りが可能なため、「フェイザーとはどんなエフェクトか」を一通り体験するのに最適な1台です。
次に、70年代のヴィンテージ・フェイズサウンドを手軽に手に入れたいプレイヤー。
Pink FloydやJimi Hendrixに代表される、あの柔らかく溶け込むようなスイープ感を実現できます。
さらに、ペダルボードのコスト効率を重視するプレイヤーにとっても、この価格帯でFeedbackコントロールまで搭載した製品は他にほとんど存在しない点で魅力的です。
ベーシストにとっても、低域を損なわない設計は大きなメリットとなるでしょう。
一方、おすすめしにくいのは、MXR Phase 90的なストレートでクセのないフェイズサウンドを求めている人です。
本機のウォームでスクイッシュなキャラクターは好みが分かれます。
また、エフェクトON/OFFで厳密な音量一致を必要とするレコーディング環境での使用や、ノイズに対して非常にシビアなプレイヤーにも不向きかもしれません。
より高度なコントロール(ステージ数の変更、TonePrint対応など)を求める場合は、同社のHelix Phaserなど上位機種を検討する方が幸せになれるでしょう。
まとめ
- 製品概要:tc electronic Blood Moon Phaserは、4ステージ・アナログ回路搭載のヴィンテージ志向フェイザーペダルで、実売5,000円前後
- 最大の強み:Rate・Depth・Feedbackの3ノブ構成により、1ノブの定番機種では不可能な幅広い音作りを実現している
- サウンド傾向:温かく太いヴィンテージ・フェイズサウンドで、ユニヴァイブ的なスクイッシュ感が特徴的
- クリーンとの相性:クリーントーンに対する広がり・透明感の付与は多くのユーザーが認める本機の美点
- コスパ:上位機種にしかないFeedbackコントロールを搭載しつつ、MXR Phase 90の半額以下という圧倒的な価格優位性
- 最大の注意点:エフェクトON時に音量が上昇する問題があり、シグナルチェーンの配置や外部機器での対処が必要になる場合がある
- 操作上の癖:Rateノブの変化がリニアでなく、実用域がノブの終盤に偏っている点は慣れが必要
- ノイズ:アナログ回路由来の若干のバックグラウンドノイズがあり、Feedback設定やゲイン環境次第で目立つ場合がある
- ベース対応:低域の損失がなく、ベーシストにとっても実用的なフェイザーとして機能する
- 総合評価:「価格を考えれば文句なし」が大多数のユーザーの結論。音量問題とRateノブの癖を許容できるなら、この価格帯で最も豊かな音作りができるフェイザーペダルのひとつといえる

