フェンダー・ジャガーは、その独特なルックスとサウンドで多くのギタリストを魅了し続けるエレキギターです。
しかし、兄弟モデルであるジャズマスターとの違いが分かりにくかったり、「人気ない」「弾きにくい」といった評判を聞いて、購入をためらっている方もいるかもしれません。
この記事では、ギター ジャガーの基本的な歴史から、サウンド、スペックといった詳細な特徴、そしてジャズマスターとの明確な違いまでを網羅的に解説します。
さらに、よく言われる欠点やその対策、愛用ギタリスト、そしてあなたに最適な一本を見つけるための選び方まで、あらゆる疑問にお答えします。
フェンダー・ジャガーとはどんなギター?まずは基本を知ろう
フェンダーの最上位機種として誕生した歴史的背景
フェンダー・ジャガーは、1962年に同社の最上位機種として発表されたエレキギターです。
当時、すでにストラトキャスターやテレキャスターで成功を収めていたフェンダー社が、ジャズマスターをベースにさらに多機能で豪華な仕様を盛り込み、新たな顧客層を開拓する目的で開発しました。
最新の機能を搭載し、ギブソン社のギターに対抗するフラッグシップモデルとして市場に投入されたのです。
一度は生産中止に?不人気から再評価までの道のり
華々しくデビューしたジャガーですが、時代が求めるサウンドの変化とともに人気は低迷し、1975年には一度生産が中止されてしまいます。
しかし、1990年代に入ると、ニルヴァーナのカート・コバーンをはじめとするオルタナティブ・ロックやグランジシーンのギタリストたちが使用したことで状況は一変します。
その唯一無二の個性が再評価され、特定の音楽ジャンルにおける定番機種としての地位を確立し、再び生産が開始されることになりました。
「ジャガー」という名前の意外な由来とは
「ジャガー」というモデル名は、開発者であるレオ・フェンダーがイギリスの高級車「ジャガー」のファンだったことに由来すると言われています。
流麗なボディシェイプと高級感を併せ持つその車のように、洗練された最上位機種にふさわしい名前として採用されました。
ギター ジャガーの最大の特徴とは?サウンドからスペックまで徹底解説

ジャガー独自のサウンド特性:シャープで歯切れの良いトーンの秘密
ギター ジャガーのサウンドにおける最大の特徴は、シャープでエッジの効いた歯切れの良いトーンです。
このサウンドの秘密は、ヨークと呼ばれる金属のギザギザが付いた専用のシングルコイル・ピックアップにあります。
ヨークが磁力を強化することで、他のギターにはない独特のアタック感と、金属的で荒々しさも感じさせる鋭いサウンドを生み出します。
クリーントーンでは奥行きのある艶やかな音色を奏で、歪ませればパワフルなサウンドが得られます。
見た目の特徴:左右非対称のオフセットボディと無骨なメタルプレート
ジャガーの見た目を印象付けているのは、立っても座っても体にフィットしやすいように設計された「オフセットウェスト」と呼ばれる左右非対称のボディ形状です。
このユニークな形状は、ジャズマスターと共通する特徴でもあります。
さらに、コントロールスイッチ類がマウントされた複数の金属製プレートは、ジャガーならではの無骨でメカニカルな印象を与え、デザイン上の大きなアクセントになっています。
なぜ弾きやすい?ショートスケールがもたらす演奏性とテンション感
ジャガーは、フェンダーの標準的なギター(約648mm)よりも短い、24インチ(約610mm)の「ショートスケール」ネックを採用しています。
スケールが短いことで弦の張力(テンション)が緩やかになり、弦を押さえやすく、チョーキングなどのフィンガリングも容易になります。
この弾きやすさは、手の小さな方や初心者にとっても大きなメリットと言えるでしょう。
多彩な音作りを可能にする複雑なスイッチ類とその機能
ジャガーは、他のギターに比べてスイッチ類が多いのも特徴です。
各ピックアップのON/OFFを切り替えるスライドスイッチに加え、フロントピックアップ用のプリセット回路、そしてサウンドの低音域をカットする「ローカットスイッチ」が搭載されています。
これらのスイッチを組み合わせることで、きらびやかな高音域を強調したサウンドから、甘くメロウなトーンまで、非常に多彩な音作りが可能です。
「音が太い」は本当?ローカットスイッチがサウンドの鍵
ジャガーのサウンドは基本的にシャープですが、「音が太い」と感じられる側面もあります。
これは、ローカットスイッチをOFFにした状態では、比較的豊かな低〜中音域を持っているためです。
しかし、バンドアンサンブルの中ではその低音が他の楽器とぶつかってしまうこともあります。
そこでローカットスイッチをONにすると、余分な低域が削られてサウンドが引き締まり、音の輪郭がはっきりとした軽快なトーンに変化させることができます。
ジャガーとジャズマスター、見た目が似ている2つのモデルの違いは?
【比較表】ジャガー vs ジャズマスター|スペック・サウンドの違いが一目でわかる
ジャガーとジャズマスターは見た目が酷似していますが、実際には全く異なる特徴を持つギターです。
ここでは、その主な違いを表にまとめました。
項目 | フェンダー・ジャガー | フェンダー・ジャズマスター |
発売年 | 1962年 | 1958年 |
ネックスケール | ショートスケール (24インチ) | ロングスケール (25.5インチ) |
ピックアップ | ヨーク付きシングルコイル | 大型シングルコイル |
サウンド | シャープで歯切れが良い | 太くウォーム |
コントロール | ローカットスイッチ搭載 | シンプルな3wayセレクター |
フレット数 | 22フレット | 21フレット |
決定的な違い①:弾き心地とサウンドに影響するネックスケール
両モデルの最も決定的な違いは、ネックスケールの長さです。
前述の通り、ジャガーはショートスケールを採用しており、弦のテンションが低く柔らかい弾き心地が特徴です。
一方、ジャズマスターはストラトキャスターなどと同じロングスケールで、弦の張りが強く、よりしっかりとした弾き応えと豊かなサスティンが得られます。
この違いが、それぞれのモデルのサウンドキャラクターと演奏性を大きく方向付けています。
決定的な違い②:サウンドキャラクターを決める専用ピックアップの構造
搭載されているピックアップも、サウンドを決定づける重要な違いです。
ジャガーのピックアップは高音域が際立つシャープなサウンドを志向して設計されています。
対してジャズマスターのピックアップは、より大きく平たい形状をしており、太くメロウでウォームな、ジャズにも対応できるサウンドを生み出すように作られました。
決定的な違い③:コントロールとスイッチ類の構成
コントロール部分にも違いが見られます。
ジャガーは各ピックアップのON/OFFスイッチとローカットスイッチによって、より細かなサウンドメイクが可能です。
一方、ジャズマスターのピックアップセレクターは一般的な3wayトグルスイッチであり、ジャガーに比べると直感的でシンプルな操作性となっています。
結局どっちを選べばいい?音楽ジャンル別のおすすめはこれ
どちらのモデルを選ぶかは、あなたの演奏スタイルや求めるサウンドによって決まります。
歯切れの良いカッティングや、エッジの効いたロックサウンドを求めるならジャガーが適しています。
オルタナティブ・ロックやサーフミュージック、ガレージロックなどが好きな方におすすめです。
一方で、太く甘いトーンでブルースやジャズを演奏したい、あるいはパワフルなロックサウンドを求めるならジャズマスターが良い選択肢となるでしょう。
ジャガーが「人気ない」「弾きにくい」と言われる理由と知っておくべき欠点

欠点①:なぜ起こる?最大の悩み「弦落ち」問題とその具体的な対策方法
ジャガーの欠点として最もよく挙げられるのが「弦落ち」です。
これは、ショートスケールによるテンションの緩さと、ブリッジの構造上、激しい演奏をすると弦がブリッジのサドル(溝)から外れてしまう現象を指します。
対策としては、弦のゲージを太いものに変えてテンションを稼ぐ、ブリッジを弦落ちしにくいムスタングタイプやチューン・O・マチックタイプのものに交換する、といった方法が有効です。
欠点②:サスティンが短いと言われるのは本当か
ジャガーは、その構造上、ストラトキャスターやレスポールといった他のギターに比べてサスティン(音の伸び)が短い傾向にあります。
これは、シャープでアタック感の強いサウンドと引き換えになっている特性とも言えます。
ロングトーンを多用するプレイスタイルには不向きな場合がありますが、歯切れの良いリフや素早いパッセージを弾く際には、むしろこのサスティンの短さがメリットになることもあります。
欠点③:初心者には難しい?複雑なコントロールの使いこなし
多彩なスイッチ類はジャガーの魅力ですが、ギター初心者にとっては操作が複雑で、どのスイッチがどんな効果を持つのかを理解するまでに時間がかかるかもしれません。
最初は戸惑うかもしれませんが、それぞれのスイッチの役割を一つずつ覚えてしまえば、他のギターでは不可能な幅広いサウンド表現が可能になります。
これらは欠点か、それとも個性か?ジャガーの唯一無二の魅力
ここまで見てきた「弦落ち」「サスティンの短さ」「複雑な操作性」といった点は、見方を変えればジャガーだけが持つ強烈な「個性」です。
これらの特性を理解し、受け入れた上で自分なりに工夫して使いこなすことこそ、ジャガーを弾く醍醐味と言えるでしょう。
万能で扱いやすいギターではありませんが、だからこそ多くの個性派ギタリストに愛され続けているのです。
フェンダー・ジャガーを愛用する有名なギタリストたち
カート・コバーン(Nirvana):グランジシーンの象徴となった改造ジャガー
1990年代の音楽シーンを席巻したニルヴァーナのフロントマン、カート・コバーンはジャガーを象徴するギタリストの一人です。
彼が愛用した1965年製のジャガーは、ピックアップをパワフルなハムバッカーに交換するなど、様々な改造が施されていました。
ジャガーの持つ鋭いアタック感とハムバッカーのパワーが融合し、グランジというジャンルを定義づけるほどの強烈なサウンドを生み出しました。
ジョニー・マー(The Smiths):唯一無二のアルペジオを奏でる名手
イギリスの伝説的バンド、ザ・スミスのギタリストであるジョニー・マーもジャガーの愛用者として有名です。
彼のプレイスタイルは、きらびやかで複雑なアルペジオが特徴で、ジャガーの持つシャープでクリアなトーンがそのサウンドに見事にマッチしています。
彼独自のアイデアが詰め込まれたシグネイチャーモデルもフェンダーから発売されており、現代のジャガーの仕様にも大きな影響を与えました。
国内外の愛用アーティストと彼らが奏でるサウンドを紹介
その他にも、海外ではレッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズなどがジャガーを使用しています。
国内では、LUNA SEAのSUGIZO氏が愛用していたことでも知られており、ジャンルを問わず多くのギタリストがその個性的なサウンドに魅了されています。
あなたに合う一本は?フェンダー・ジャガーのおすすめモデルと賢い選び方

ジャガーの選び方:生産国(USA、メキシコ、日本)ごとの特徴と価格帯
フェンダー・ジャガーは、主にアメリカ、メキシコ、日本の工場で生産されており、それぞれに特徴と価格帯があります。
USA製は最も高価ですが、最高品質の木材とパーツを使用しており、プロフェッショナルなクオリティを誇ります。
メキシコ製は、USA製に次ぐ品質ながら比較的手頃な価格帯で、コストパフォーマンスに優れています。
日本製は、丁寧な作りと仕上げに定評があり、日本人の体格に合わせたモデルなどもラインナップされています。
安いジャガーは使える?Squier(スクワイヤ)製モデルの評価と実力
より手頃な価格でジャガーを手に入れたい場合は、フェンダーの廉価ブランドであるSquier(スクワイヤ)も選択肢になります。
近年のSquier製品は品質が向上しており、初心者の一本目としてはもちろん、カスタマイズのベースとしても十分に使えるクオリティを持っています。
まずは安いモデルから始めてみたいという方には非常におすすめです。
中古ジャガーを探す際のチェックポイントと注意点
ジャガーは中古市場でも人気があり、生産完了したモデルやヴィンテージ品を探す楽しみもあります。
中古で購入する際は、ネックの反りやフレットの減り具合といった基本的な状態の確認はもちろんですが、ジャガー特有の電装系(スイッチ類)が正常に機能するかを特に注意してチェックすることが重要です。
また、ブリッジなどがオリジナルから交換されている場合もあるため、パーツの状態もしっかり確認しましょう。
【2025年最新版】初心者から上級者までおすすめの現行モデルを紹介
現在販売されているモデルの中では、メキシコ製の「Player II Jaguar」が比較的手頃な価格とモダンな仕様で初心者にもおすすめです。
日本製では、ヴィンテージの仕様を再現した「Traditional」シリーズや、現代的な演奏性を加えた「Hybrid II」シリーズが人気です。
USA製の「American Vintage II」シリーズは、特定の年代の仕様を忠実に再現しており、本格的なヴィンテージサウンドを求める上級者も満足させる一本となるでしょう。
まとめ:Fenderギター ジャガーの持つ特徴と魅力
ジャガーの「特徴」と「欠点」を最後にもう一度おさらい
フェンダー・ジャガーは、ショートスケールによる弾きやすさと、専用ピックアップがもたらすシャープで歯切れの良いサウンドが最大の特徴です。
その一方で、弦落ちしやすい、サスティンが短い、操作が複雑といった欠点も併せ持っています。
しかし、これらの点はジャガーならではの個性であり、他のギターでは決して味わえない魅力の源泉ともなっています。
王道とは違う、唯一無二の個性を求めるあなたへ
もしあなたが、ストラトキャスターやテレキャスターといった王道のギターにはない、強烈な個性と唯一無二のサウンドを求めているのであれば、フェンダー・ジャガーは最高の選択肢となり得ます。
そのじゃじゃ馬のような特性を理解し、乗りこなすことで、あなただけの特別なサウンドを手に入れることができるでしょう。
- フェンダー・ジャガーは1962年に最上位機種として登場した
- ショートスケール採用による弾きやすさが特徴である
- サウンドは専用ピックアップによりシャープで歯切れが良い
- ローカットスイッチで多彩なサウンドメイクが可能
- ジャズマスターとはスケールやピックアップが根本的に異なる
- 欠点として「弦落ち」やサスティンの短さが挙げられる
- 欠点も個性のうちであり、多くの個性派ギタリストに愛用される
- カート・コバーンやジョニー・マーが代表的な使用者である
- 購入時は生産国(米、墨、日)や中古の状態を考慮する
- 王道とは一線を画す、唯一無二の個性を求めるギタリストにおすすめ