一度見たら忘れられない、強烈なインパクトを放つ「グレッチの四角いギター」。
テレビでフットボールアワーの後藤さんが弾いている姿を見て、「あのギターは何だろう?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多くのギタリストを魅了するグレッチの四角いギター、通称「Gretsch Bo Diddley」モデルについて、その正体から歴史、特徴、そして気になる中古での購入方法まで、あらゆる角度から徹底的に解説します。
この記事を読めば、あなたが抱える四角いギターに関するすべての疑問が解消され、その奥深い魅力を知ることができるでしょう。
グレッチの四角いギターの正体は「G6138 ボ・ディドリー」モデル
一度見たら忘れない!特徴的な長方形ボディのギター
多くの人が「グレッチの四角いギター」として認識しているモデルの正式名称は、グレッチ社が製造する「G6138 Bo Diddley」です。
その名の通り、まるで箱のような長方形のボディは、他のどんなギターにもない唯一無二の存在感を放ち、ステージ上でも一際目を引きます。
このシンプルながらも強烈なシルエットが、このギターの最大の特徴と言えるでしょう。
ロックの創始者「ボ・ディドリー」のシグネイチャーモデル
このギターは、チャック・ベリーやリトル・リチャードと並び称されるロックンロールの創始者の一人、ボ・ディドリー氏(Bo Diddley, 1928-2008)のシグネイチャーモデルです。
彼が自身のトレードマークとして長年愛用した四角いギターを基に、グレッチ社が製造・販売しています。
モデル名にアーティストの名前が冠されていることからも、彼がいかにこのギターの象徴的存在であったかがわかります。
フットボールアワー後藤さんの愛用ギターとしても有名
日本では、お笑いコンビ「フットボールアワー」の後藤輝基さんが愛用しているギターとして広く知られています。
テレビのバラエティ番組、特に「ゴッドタン」のマジ歌選手権などでこのギターを演奏する姿がおなじみとなり、若い世代にも「後藤さんの四角いギター」として認知されるようになりました。
後藤さんのこだわりが詰まったカスタムモデルも存在し、多くのギターファンの注目を集めています。
なぜ四角い形?ボ・ディドリー・ギターが生まれた歴史的背景

考案者ボ・ディドリーはどんなアーティストだったのか?
ボ・ディドリー氏は、独特のリズム「ボ・ディドリー・ビート(ジャングル・ビート)」を生み出し、後のロックミュージックに絶大な影響を与えた偉大なアーティストです。
ローリング・ストーンズやU2など、数多くのビッグネームが彼の影響を公言しています。
彼の音楽はメロディよりもリズムを重視するスタイルが特徴で、その革新的なアプローチが音楽の歴史を大きく変えました。
起源は「シガーボックス・ギター」と「ディドリー・ボウ」
ボ・ディドリー氏が四角いギターを構想した背景には、アメリカ南部に伝わるDIY楽器の文化があります。
その一つが、葉巻の木箱(シガーボックス)をボディにして作られた「シガーボックス・ギター」です。
また、木箱にネックと弦を一本だけ張った「ディドリー・ボウ」という楽器も存在し、少年時代のボ・ディドリー氏も自作して演奏していたと言われています。
彼にとって、ギターが四角いことはごく自然な発想だったのです。
「ボ・ディドリー・ビート」を刻むための独特なプレイスタイル
ボ・ディドリー氏の演奏は、コードをかき鳴らし、特徴的なリズムを前面に押し出すスタイルが中心でした。
複雑なギターソロを弾くことは少なく、ギターを打楽器のように扱い、バンド全体のグルーヴを生み出す役割を担っていたのです。
そのため、ハイポジションの演奏性よりも、構えやすさやリズムの刻みやすさが重視され、このユニークな形状に至ったと考えられています。
Gretsch G6138 ボ・ディドリーの仕様とサウンドを徹底解説

スペック一覧|他のグレッチギターとの違いは?
「G6138 ボ・ディドリー」は、グレッチの他のモデル、特にボ・ディドリー氏が以前愛用していた「G6131 ファイアーバード」と共通点を持ちつつも、独自の仕様を持っています。
主なスペックとファイアーバードとの違いを以下の表にまとめました。
仕様項目 | G6138 ボ・ディドリー | G6131 ファイアーバードとの違い |
ボディ形状 | 長方形 | ジェット・スタイル(シングルカッタウェイ) |
ボディ構造 | メイプルトップ、チェンバードマホガニーバック | 共通 |
ネック材 | マホガニー | 共通 |
指板材 | エボニー | ローズウッド(モデルによる) |
スケール長 | 25.5インチ (648mm) | 24.6インチ (625mm) |
ピックアップ | フィルタートロン x2 | ダイナソニック(初期モデル) |
ブリッジ | アジャストマチック | 共通 |
テールピース | Gカットアウト | 共通(ビグスビー搭載モデルもあり) |
スケール長が一般的なフェンダーギターと同じ25.5インチである点が、他のグレッチギターとは異なる大きな特徴です。
軽量でよく響くチェンバードボディ構造
四角く大きなボディから重そうな印象を受けますが、ボディ内部は大幅にくり抜かれた「チェンバード構造」になっています。
これにより、見た目に反して非常に軽量で、取り回しが良いのが特徴です。
また、この空洞構造が豊かな生鳴りとエアー感のあるサウンドを生み出し、アンプを通した音にも独特の深みを与えています。
搭載ピックアップ「フィルタートロン」が作るサウンドとは
ピックアップには、グレッチを象徴するオリジナルハムバッカー「フィルタートロン」が搭載されています。
フィルタートロンは、一般的なハムバッカーよりも出力がやや低めで、高音域がクリアに響く「トゥワンギー」と呼ばれる独特のサウンドが特徴です。
クリーンでは煌びやかなトーン、歪ませればエッジの効いたロックサウンドを出力し、カッティングからパワフルなコードストロークまで幅広く対応します。
正直、弾きやすい?ハイポジションの演奏性について
演奏性、特にハイポジションの弾きやすさについては、率直に言って万人向けではありません。
ボディにカッタウェイ(えぐれ)がないため、物理的に高いフレットへのアクセスは困難です。
しかし、前述の通り、このギターは元々リズムプレイを主体とするボ・ディドリー氏のためにデザインされました。
ローコードでのバッキングやリフを中心に演奏するスタイルであれば、そのユニークなルックスはデメリットを補って余りある魅力となるでしょう。
フット後藤(フットボールアワー)の四角いギターへの並々ならぬ愛

後藤さんがボ・ディドリーを複数本所有する理由
フット後藤さんは、このボ・ディドリーモデルを4本も所有するほどの熱狂的な愛好家です。
彼がこのギターに惹かれたのは、浅井健一さんなどの影響からグレッチに興味を持つ中で、他の人があまり持っていないユニークなモデルを探していたことがきっかけでした。
純粋にそのルックスの格好良さに惚れ込み、自分流にカスタムして使うというスタイルを確立しています。
【マジ歌】で話題!LED搭載カスタムギター「ルーシー」の秘密
特に有名なのが、テレビ番組「ゴッドタン」のマジ歌選手権で披露された、ボディ外周にLEDが埋め込まれたカスタムギター、通称「ルーシー」です。
このカスタムはTC楽器によって製作され、個別に制御可能な極小のチップLEDをボディに埋め込むという高度な技術が用いられています。
遠隔操作で多彩な光の演出が可能となっており、そのド派手なパフォーマンスは大きな話題を呼びました。
カラーリングからパーツまで徹底的に施された本人仕様のカスタム内容
後藤さんのカスタムはLEDだけにとどまりません。
正規品の赤色から、本人が「スケベ椅子ゴールド」と呼ぶこだわりのゴールドカラーにリフィニッシュされています。
さらに、アームユニットのビグスビーを搭載し、オリジナルのピックガードを製作。ヘッドの「GRETSCH」ロゴは自身の名前にちなんで「GOTOH」に変更するなど、細部に至るまで徹底的なこだわりが反映されています。
グレッチの四角いギターはどこで買える?中古価格と入手方法
新品の価格相場はどのくらい?
Gretsch G6138 Bo Diddleyは、グレッチの中でも上位グレードにあたるプロフェッショナル・コレクションに属するため、新品の実売価格は30万円台後半から40万円台が相場となっています。
決して安価ではありませんが、その唯一無二の存在感と歴史的価値を考えれば、納得の価格と言えるかもしれません。
中古で探す場合の価格と注意点
中古市場では、状態にもよりますが10万円台から20万円台で見つけることが可能です。
インプットした情報の中には、約8万8千円で販売されていた例もありました。
中古で購入する際の注意点としては、ネックの状態や電装系の不具合がないかを確認することはもちろん、パーツがオリジナルから変更されていないか、大きな修復歴がないかなどをチェックすることが重要です。
購入できる楽器店やオンラインストアは?
新品は全国のグレッチ正規取扱店で購入できます。
中古品を探す場合は、大手楽器店のオンラインストアや、ギター専門の検索サイト「デジマート」「J-Guitar」などを利用するのが効率的です。
また、都市部の大型中古楽器店では、稀に実物が入荷していることもあります。
グレッチギターの中で安いモデルはある?
「グレッチのサウンドやルックスは好きだけど、価格が…」という方には、廉価版シリーズである「エレクトロマチック」や「ストリームライナー」がおすすめです。
10万円以下で購入できるモデルも多く、ボ・ディドリーモデルそのものはありませんが、ジェットタイプやホロウボディなど、グレッチらしい雰囲気を手頃な価格で楽しむことができます。
ボ・ディドリーだけじゃない?グレッチの変形ギターと関連モデル
ビリー・ギボンズとのコラボモデル「G6199 Billy-Bo」とは
ボ・ディドリーモデルから派生したユニークなモデルとして、ZZトップのギタリスト、ビリー・F・ギボンズとのコラボレーションで生まれた「G6199 Billy-Bo Jupiter Thunderbird」が存在します。
このモデルは、ボ・ディドリーがデザインした別の変形ギター「Jupiter Thunderbird」をベースに、ビリー・ギボンズのアイデアを加えて現代に蘇らせたものです。
より曲線的で未来的なデザインが特徴となっています。
斉藤和義も使用?ポッキーギターとの関係性
日本のアーティストでは、斉藤和義さんが使用した江崎グリコ「ポッキー」のキャンペーンで製作された「ポッキーギター」が有名です。
このギターも赤い長方形のボディを持っており、ボ・ディドリーへのリスペクトが込められているであろうことは想像に難くありません。
ロックの歴史に造詣が深い斉藤和義さんならではの遊び心あふれる一本と言えるでしょう。
グレッチのその他ユニークな形状のギター紹介
グレッチには、ボ・ディドリーモデル以外にも数多くの魅力的なギターが存在します。
ソリッドボディの定番「デュオ・ジェット」、華やかなルックスの「ホワイト・ファルコン」、カントリージェントルマンの愛称で知られる「G6122」、浅井健一さんの使用で有名な「テネシアン」など、それぞれに個性的な歴史とサウンドを持っています。
まとめ:グレッチ 四角いギターの魅力を再発見
- グレッチの四角いギターの正体は「G6138 ボ・ディドリー」モデルである
- ロックの創始者の一人、ボ・ディドリー氏のシグネイチャーモデル
- そのルーツは葉巻の箱で作った「シガーボックス・ギター」にある
- 日本ではフットボールアワー後藤さんの愛器として広く知られている
- 見た目より軽量なチェンバードボディ構造を採用している
- ピックアップはグレッチを象徴する「フィルタートロン」を2基搭載
- ハイポジションの演奏性は独特だがリズムプレイには最適
- 後藤さんのLED搭載ギターなど大胆なカスタムのベースとしても人気
- 中古市場では10万円台から探すことも可能
- 派生モデルとしてビリー・ギボンズとのコラボ「Billy-Bo」も存在する