「ギターのコンプレッサーっていらないって本当?」「使うと下手になるって聞いたけど…」
エフェクターボードを組む上で、多くのギタリストが一度はコンプレッサーの必要性について悩みます。
かけっぱなしにするプロもいれば、ダイナミクスを重視して全く使わないギタリストもいるため、その効果やデメリットについて混乱している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ギターコンプレッサーが「いらない」と言われる理由から、それでも必要となる具体的な場面、効果的な使い方、そして初心者向けの選び方まで、専門的な視点から網羅的に解説します。
最後まで読めば、あなたの演奏スタイルにとってコンプレッサーが本当に必要なのか、明確な答えが見つかるはずです。
結論:ギターにコンプレッサーは本当にいらない?
ギターにコンプレッサーが必要かどうかは、最終的に「プレイヤーが目指すサウンドや演奏スタイルによる」というのが結論です。
不要な場合もあれば、理想のサウンドメイクに不可欠な場合もあります。
まずはその役割と、なぜ意見が分かれるのかを理解することが重要です。
まずは役割を再確認!コンプレッサーは何をするエフェクター?
コンプレッサーは、一言で言うと「音の大小の幅(ダイナミクス)を圧縮し、音の粒を揃える」エフェクターです。
具体的には、設定した音量(スレッショルド)を超えた大きな音を抑え、逆に小さな音を持ち上げる効果があります。
これにより、全体の音量が均一化され、演奏が安定して聞こえるようになります。
また、音が小さくなって消えるまでの時間(サスティン)を擬似的に伸ばす効果も得られます。
【賛否両論まとめ】プロでも意見が分かれるコンプレッサーの必要性
プロギタリストの間でも、コンプレッサーの使用については意見が大きく分かれます。
「必要派」は、音の粒を揃えて安定したサウンドを得るため、特にカッティングやアルペジオで効果を発揮すると考え、常時かけっぱなしにする人も少なくありません。
レコーディングでは、ミックス時に他の楽器と馴染ませるために必須のツールとされています。
一方で「不要派」は、ピッキングの強弱による表現(ダイナミクス)が失われることを最大のデメリットと考えます。
演奏のニュアンスが平坦になり、個性がなくなってしまうことを懸念するため、特にダイナミクスが重視されるジャズやブルース系のギタリストに多い傾向があります。
あなたはいらない派?必要派?30秒でわかる簡単診断チャート
あなたがコンプレッサーを必要としているか、簡単なチャートで診断してみましょう。
当てはまる項目の数を数えてみてください。
| 質問 | はい | いいえ | 
|---|---|---|
| ファンクのような歯切れの良いカッティングを多用しますか? | 〇 | |
| アルペジオの各弦の音量を均一にしたいですか? | 〇 | |
| ギターソロで音を長く伸ばしたいですか? | 〇 | |
| ライブやレコーディングで安定した音を出したいですか? | 〇 | |
| ピッキングの強弱による表現を何よりも重視しますか? | 〇 | |
| アコースティックギターの生鳴りを活かしたいですか? | 〇 | |
| 演奏時のノイズを少しでも減らしたいですか? | 〇 | |
| ジャズやクラシックなど繊細な表現が中心ですか? | 〇 | 
【診断結果】
- 「はい」が多かったあなた: コンプレッサーはあなたのサウンドメイクを強力にサポートしてくれる可能性が高いです。
 - 「いいえ」が多かったあなた: コンプレッサーは不要か、もしくは限定的な使い方になるかもしれません。
 
【デメリット】ギターコンプレッサーが「いらない」と言われる5つの理由

コンプレッサーが「いらない」と言われる背景には、明確なデメリットが存在します。
これらを理解することが、適切な使用法を見極める第一歩となります。
理由①:演奏のニュアンス(ダイナミクス)が失われるから
最大の理由は、演奏における表現の幅が狭まることです。
コンプレッサーは音量のムラをなくすため、意図的に弱く弾いた繊細なタッチや、強く弾いた情熱的なアタック感が均一化されてしまいます。
これにより、演奏が機械的で平坦な印象になり、ギタリストの個性が失われる可能性があります。
理由②:音が平坦になり、立体感がなくなるから
音のピーク(一番大きな部分)が抑えられることで、サウンド全体の立体感や奥行きが損なわれることがあります。
特にクリーンサウンドやアコースティックギターでは、音の自然な響きや空間的な広がりが弱く感じられるかもしれません。
音に広がりを持たせたい場合には、コンプレッサーの設定を慎重に行うか、使用を避ける判断も必要です。
理由③:「コンプを使うと下手になる」は本当?練習への悪影響とは
「コンプレッサーを使うと下手になる」という意見は、ある意味で事実です。
コンプレッサーはピッキングの強弱のばらつきを自動で補正してくれるため、これに頼りすぎると、本来ギタリストが習得すべき右手のタッチコントロールがおろそかになりがちです。
練習時から常にコンプレッサーをONにしていると、自分の演奏の粗が見えにくくなり、技術的な成長を妨げる可能性があります。
理由④:ノイズが増えて音が汚くなることがあるから
コンプレッサーは小さな音を持ち上げる特性があるため、ギター本体のハムノイズやケーブル、他のエフェクターが発する「サー」といったノイズまで一緒に増幅してしまいます。
特に歪みエフェクターと組み合わせたり、設定を強くしすぎたりすると、ノイズが顕著になり、サウンド全体のクリアさを損なう原因となります。
理由⑤:アコースティックギターや特定のジャンルでは逆効果になるから
アコースティックギターの魅力は、その繊細で自然な響きとダイナミクスにあります。
コンプレッサーをかけると、その魅力が失われ、不自然な音色になることが多いです。
また、ジャズやクラシック、ブルースといった、音の強弱そのものが音楽表現の核となるジャンルでは、コンプレッサーの使用は一般的に避けられます。
【メリット】それでもコンプレッサーが必要になるのはどんな時?

デメリットがある一方で、コンプレッサーは特定の目的において絶大な効果を発揮します。
多くのプロが愛用するのには、それだけの理由があるのです。
目的①:カッティングやアルペジオの音の粒をプロレベルに揃えたい
ファンクのカッティングやポップスのアルペジオなど、リズミカルで均一な音量が求められる演奏では、コンプレッサーが非常に有効です。
各弦の音量やピッキングの僅かなムラを整え、一音一音がクリアでまとまりのあるプロフェッショナルなサウンドを生み出します。
これにより、バンドアンサンブルの中でギターの存在感が際立ちます。
目的②:ギターソロで豊かなサスティン(音の伸び)が欲しい
ギターソロでロングトーンを弾く際、音がすぐに減衰してしまうことがあります。
コンプレッサーは、小さくなっていく音を持ち上げることで、音の伸び(サスティン)を稼ぐことができます。
これにより、滑らかで歌うようなリードフレーズを奏でることが可能になり、演奏の表現力が格段に向上します。
目的③:レコーディングやライブで安定した音質を届けたい
レコーディングやライブPAの現場では、音量の安定が非常に重要です。
コンプレッサーを使えば、ギターの音量が急に大きくなったり小さくなったりするのを防ぎ、ミックスの中で常に適切な音量で聞こえるようになります。
市販されている音源のほとんどでギターにコンプレッサーがかけられているのは、この安定性を確保するためです。
目的④:「かけっぱなし」で常に安定した弾き心地を手に入れたい
常にコンプレッサーをONにしておく「かけっぱなし」という使い方もあります。
バレない程度に薄くかけておくことで、演奏中の音量のばらつきを自然に補正し、常に安定した弾き心地を得られます。
これにより、ギタリストは音量のコントロールに神経を使うことなく、演奏そのものに集中できるようになります。
【使い方】コンプレッサーを味方につける基本設定と接続順

コンプレッサーの効果を最大限に引き出すには、基本的なツマミの役割と適切な接続順を理解することが不可欠です。
これだけは覚えたい!4つの主要ツマミ(Threshold, Ratio, Attack, Release)の効果
多くのコンプレッサーには、以下の4つの主要なパラメーターがあります。
ギター用ペダルでは一部が省略・固定されていることもあります。
| ツマミ | 役割 | 
|---|---|
| Threshold (スレッショルド) | コンプレッサーが作動し始める音量の基準点。この音量を超えると圧縮が始まります。 | 
| Ratio (レシオ) | 音を圧縮する比率。「4:1」なら、基準を超えた音量を4分の1に圧縮します。 | 
| Attack (アタック) | 音が出てから圧縮が始まるまでの時間。速いとアタック感がなくなり、遅いとアタック感を残せます。 | 
| Release (リリース) | 音が基準値を下回ってから圧縮が解除されるまでの時間。 | 
歪みの前?後?コンプレッサーを置くべき最適な位置(接続順)を解説
エフェクターボード内でのコンプレッサーの位置は、出したいサウンドによって変わりますが、一般的には「歪みエフェクターの前」に接続します。
これは、ギターからのクリーンな信号を先に整えることで、後段の歪みエフェクターのノリを良くし、ノイズの増幅を最小限に抑えるためです。
一方で、歪みの後に接続すると、歪みで作られたサウンド全体の音量を整えるリミッターのような使い方ができます。
決まったルールはないので、両方を試してみるのがおすすめです。
【シーン別】カッティング・ソロ・メタルなど具体的なセッティング例
以下は、あくまで一般的な設定の目安です。
お持ちの機材に合わせて微調整してください。
| シーン | Attack | Release | Threshold/Sustain | Ratio | 目的 | 
|---|---|---|---|---|---|
| カッティング | 速め | 速め | やや深め | 3:1~4:1 | 歯切れ良さと粒立ちを両立させる | 
| ギターソロ | やや遅め | 中程度 | やや浅め | 2:1~3:1 | アタック感を残しつつサスティンを稼ぐ | 
| メタルリフ | 速め | 速め | 深め | 4:1以上 | 低音をタイトに抑え、アタックを際立たせる | 
| 常時かけっぱなし | お好み | お好み | 浅め | 2:1程度 | かかっているか分からない程度に薄くかける | 
【初心者向け】失敗しないコンプレッサーの選び方とおすすめモデル

初めてコンプレッサーを選ぶ際は、多機能なものよりも、基本的な役割を理解しやすいモデルから始めるのが良いでしょう。
初心者が最初に選ぶべきコンプレッサーの3つの特徴
- シンプルな操作性: 最初はツマミが2~3個のシンプルなモデルがおすすめです。
直感的に音の変化を掴むことができます。 - 原音MIX(BLEND)機能: コンプレッサーをかけた音(ウェット)と元の音(ドライ)を混ぜる機能です。
これにより、自然なニュアンスを残しつつ音を整えることができます。 - ノイズの少なさ: 安価すぎるモデルはノイズが多い傾向があります。
レビューなどを参考に、なるべくノイズが少ないと評判のモデルを選びましょう。 
【タイプ別】定番からスタジオ品質までおすすめコンプレッサー3選
- ① ROSS / MXR Dyna Comp系 (OTA式):
「パコッ」という独特のアタック感が特徴の定番タイプ。
カッティングやカントリーに最適で、多くのギタリストに愛用されています。
まずはこのタイプから試すのが王道です。 - ② UREI 1176系 (FET式):
スタジオの名機「1176」を元にしたタイプ。
非常に速いアタックと力強い圧縮感が特徴で、ロックやメタルのタイトなサウンド作りに向いています。
Origin Effectsの「Cali76」などが有名です。 - ③ Teletronix LA-2A系 (オプティカル式):
光素子を使った滑らかで自然なかかり方が特徴。
「コンプ臭さ」が少なく、音にハリとツヤを与えたい場合に最適です。
アコースティックギターにもよく合います。 
購入前にチェック!試奏で確認すべきポイントとは
楽器店で試奏する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- バイパス音との比較: エフェクトをOFFにした時の音(バイパス音)とONにした時の音質変化を確認します。
極端に音が細くなったり(音痩せ)、こもったりしないかチェックしてください。 - ノイズレベル: ゲインを上げたアンプに繋ぎ、ギターを弾かない状態でノイズがどれくらい出るか確認します。
 - ツマミの効き: 各ツマミを実際に回してみて、音色がスムーズに変化するか、自分の好みの範囲に設定できるかを確認しましょう。
 
ギターコンプレッサーに関するよくある質問(Q&A)
ここでは、コンプレッサーに関してよく寄せられる質問にお答えします。
コンプレッサーを使うと音痩せしませんか?対策はありますか?
コンプレッサーによっては、音の特定の帯域が失われ「音痩せ」と感じることがあります。
対策としては、高品質なバッファーを内蔵したモデルや、原音MIX機能(BLEND)が付いたモデルを選ぶことが有効です。
また、設定を「薄くかける」ことを意識するだけでも、音痩せ感はかなり軽減されます。
安いペダルと高いペダルの違いは何ですか?
一般的に、価格の差は使用されているパーツの品質、回路設計の精巧さ、そしてノイズの少なさに現れます。
高価なペダルは、よりノイズが少なく、圧縮による音質劣化が少なく、自然で音楽的なサウンドが得られる傾向にあります。
しかし、安価なペダルでも独特のキャラクターがあり、それが好まれる場合もあります。
歪みエフェクターに内蔵されているコンプ効果とは違うのですか?
オーバードライブやディストーションなどの歪みエフェクターには、音を歪ませる過程で波形の頭が潰れる「自然なコンプレッション効果」があります。
これは、コンプレッサーペダルが意図的に音量をコントロールするのとは原理が異なります。
歪ませたサウンドにさらにコンプレッサーをかけることで、よりサスティンを伸ばしたり、アタックを調整したりと、一歩進んだ音作りが可能になります。
まとめ:ギター コンプレッサーは「いらない」のかを最終結論
ギターコンプレッサーは、決して全てのギタリストに必要なエフェクターではありません。
しかし、その役割と使い方を正しく理解すれば、あなたのサウンドを格段に向上させる強力な武器になり得ます。
「いらない」と決めつける前に、まずはこの記事を参考に、自分の目指す音楽にとってコンプレッサーがどのような役割を果たすのかを考えてみてください。
- ギターコンプレッサーは音の粒を揃え、音量を均一化するエフェクターである
 - デメリットは演奏のダイナミクス損失、音の平坦化、ノイズの増加などが挙げられる
 - 「下手になる」と言われるのは、ピッキング技術の向上を妨げる可能性があるためである
 - メリットは音の安定化、サスティンの向上、プロレベルのサウンドメイクが可能になる点である
 - 特にカッティング、アルペジオ、ギターソロでその効果を大きく発揮する
 - 接続順は一般的にエフェクターボードの最初、歪みエフェクターの前に置かれる
 - 効果的な設定の基本は、かかっているか分からない程度に「薄くかける」ことである
 - 初心者向けの選び方は、シンプルな操作性や原音MIX機能の有無が重要なポイントとなる
 - 必要かどうかは最終的に個々の演奏スタイルや目指すサウンドによって決まる
 - 「いらない」と断定する前に、その効果を正しく理解し、一度試してみる価値は十分にある
 

