中古市場で根強い人気を誇る90年代のギブソンギター。
しかし、その品質については「80年代の低迷期から品質が向上した」という声がある一方で、「品質低下が著しく、個体差が激しい」といった評価も存在し、情報が錯綜しています。
レスポール・スタンダードをはじめとする90年代モデルの本当の評価や、ヒストリックコレクションとの違い、そして「ハズレ」個体の見分け方など、気になる点は多いでしょう。
この記事では、そうした90年代ギブソンに関する様々な疑問に答えるべく、品質低下説の真相から、木材や製造背景、正確な年代特定法、そして具体的な購入時のチェックポイントまで、網羅的に解説していきます。

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90年代ギブソンの品質は本当に低い?その真相に迫る

ギブソン 90年代の品質低下説の真相
90年代ギブソンの品質については、「低い」という評価と「むしろ良い」という評価が混在しており、これが多くのギターファンの混乱を招く原因となっています。
この評価の二面性を理解するためには、まずギブソンの歴史的背景を知る必要があります。
一般的にギブソンの品質が大きく低下したとされるのは、1970年代から80年代半ばにかけての「ノーリン期」です。
この時期は生産効率を優先するあまり、伝統的な仕様が変更され、ギターファンからの評価を大きく下げてしまいました。
しかし、1986年に経営陣が交代し、ヘンリー・ジャスコヴィッツ氏を中心とする新体制が発足します。
新体制は、ノーリン期に失われた信頼を取り戻すべく、「ヴィンテージ回帰」をスローガンに品質の向上と伝統的な仕様の復活に努めました。
この流れの中で生産されたのが90年代のギブソンであり、特に90年代前半のモデルは、ノーリン期からの品質回復を果たした「良い時期」の製品として評価されることが多いのです。
一方で、「90年代も品質が低い」という説も根強く存在します。
その背景には、経営再建が軌道に乗り始めた90年代半ば以降、増大する需要に応えるための大量生産化とコストカットの波が押し寄せたことが挙げられます。
これにより、製造工程の管理にばらつきが生じ、結果として「当たり」と「ハズレ」と呼ばれる大きな個体差が生まれる一因となったと考えられています。
つまり、「90年代」と一括りにするのではなく、「品質が回復に向かった過渡期であり、年代やモデルによって品質にばらつきがあった時代」と捉えるのが最も実態に近いと言えるでしょう。
80年代・2000年代ギブソンとの品質比較:90年代の位置づけ
90年代ギブソンの品質をより深く理解するために、その前後の年代である80年代と2000年代と比較することで、その時代ならではの特徴と立ち位置が明確になります。
90年代は、ギブソンの歴史において大きな転換点となった「過渡期」と位置づけることができます。
80年代(ノーリン期末期~新体制初期)との比較
前述の通り、80年代半ばまでのギブソンは「ノーリン期」の真っ只中にあり、品質的には厳しい評価を受けていました。
しかし、80年代初頭にはヴィンテージ・リイシューの先駆けとなる「レスポール・ヘリテージ80」が登場するなど、後のヴィンテージ回帰に向けた萌芽も見られます。
1986年の新体制発足後、ノーリン期の仕様からの脱却が本格的に始まり、90年代にかけてその成果が製品に現れてきます。
2000年代(CNC化とグローバル化の時代)との比較
2000年代に入ると、CNCルーター(コンピューター制御の木材加工機)の導入がさらに本格化し、製品の精度が飛躍的に向上しました。
これにより、個体差が少なくなり、安定した品質のギターを大量に供給できるようになったのです。
一方で、手作業による「味」や「ゆらぎ」が減ったと感じるギタリストも少なくありません。
90年代のギターは、2000年代以降のモデルに比べると、まだ職人の手作業に頼る部分が多く残っていました。
この手作業の多さが、良くも悪くも90年代ギブソンならではの「個体差」や「キャラクター」を生み出す要因となっていたのです。
年代 | 主な特徴 | 品質評価 |
80年代 | ノーリン期の影響が残る。3ピースネック、パンケーキボディ等。後半からヴィンテージ回帰の兆し。 | 全体的に低いが、再評価の動きもある。 |
90年代 | 新体制による品質回復期。ヴィンテージスペックの復活。手作業の要素が多く個体差が大きい。 | 向上傾向にあるが、ばらつきが大きい。年代やモデルによる評価の差が激しい。 |
2000年代 | CNCルーターの本格導入。安定した品質と高い精度。 | 全体的に安定し、高品質。一方で「画一的」との声も。 |
このように比較すると、90年代のギブソンは、80年代の低迷から脱却し、2000年代の均一化された品質へと至る中間に位置する、ユニークで魅力的な存在と言えるでしょう。
90年代ギブソンに使われた木材と製造背景が品質に与えた影響
90年代ギブソンの品質を語る上で、使用された木材と当時の製造背景は非常に重要な要素です。
この時期のギターが持つ個性や評価のばらつきは、これらの要因に大きく起因しています。
まず製造背景として、1986年の経営陣交代がもたらした影響は計り知れません。
新しい経営陣は、ブランドイメージを再構築するために、高品質な木材を確保し、伝統的な製法に立ち返ることを目指しました。
この方針転換により、特に90年代前半には、現在では希少とされる良質な木材が惜しみなく使われたモデルが存在します。
例えば、ボディバックに使われるマホガニーは、軽量で響きの良いものが選ばれ、中には1ピースで贅沢に使用された個体も見られます。
また、レスポール・スタンダードのトップ材に使われるメイプルも、美しい杢目を持つものが多く、特に94年前後のモデルは良質な材が使われていることで知られています。
しかし、90年代半ばから後半にかけて状況は少しずつ変化していきます。
ギターブームの到来により需要が急増し、生産本数を増やす必要に迫られました。
これにより、以前ほど厳格な木材の選定が難しくなった側面は否定できません。
また、木材供給の世界的な変化も影響しました。
良質なマホガニーなどの木材は徐々に希少性が高まり、コストも上昇していったのです。
こうした背景から、同じ90年代のモデルであっても、前半に作られたものと後半に作られたものでは、使用されている木材の質に差が生まれることがありました。
これが、90年代ギブソンの「個体差が大きい」と言われる所以の一つです。
総じて、90年代のギブソンは、品質向上を目指す経営陣の熱意と、まだ良質な木材が手に入った時代背景が重なったことで、素晴らしいポテンシャルを秘めたギターが生まれた時代でした。
その一方で、大量生産化の波が品質のばらつきを生んだという側面も持ち合わせており、一本一本の個性を丁寧に見極めることが重要になります。
レスポールの90年代モデルの特徴と評価
90年代には、現在もギブソンの主力であるレスポールの様々なモデルがラインナップされていました。
ここでは、主要なモデルの特徴と当時の評価について解説します。
レスポール・スタンダード
90年代のレスポール・スタンダードは、まさにその時代のギブソンを象徴するモデルです。
ピックアップには、50年代のPAFを再現した「490R & 498T」や、よりヴィンテージ志向の「57 Classic」などが搭載され、年代によって仕様が異なります。
特に1994年はギブソン創立100周年にあたり、この年に生産されたモデルは記念モデルとしてだけでなく、使用された木材の質が高いことでも評価されています。
一方で、この時期のスタンダードには、ボディ内部をくり抜いて軽量化を図る「ウェイトリリーフ」が施されている個体が多いのも特徴です。
これがサウンドにどう影響するかは賛否両論あり、評価の分かれるポイントとなっています。
レスポール・クラシック
1990年に登場したレスポール・クラシックは、ヴィンテージ・リイシューの流れを汲む人気モデルです。
最大の特徴は、1960年製のレスポールを意識した「スリムテーパー」と呼ばれる薄めのネックシェイプにあります。
これにより、現代的なプレイスタイルにもマッチする高い演奏性を実現していました。
ピックアップには高出力なセラミックマグネットを使用した「496R & 500T」が搭載されており、スタンダードよりもパワフルでモダンなサウンドキャラクターを持っています。
ヴィンテージライクなルックスと優れた演奏性から、多くのギタリストに支持されました。
レスポール・カスタム
レスポール・カスタムは、その名の通り上位機種として、高級感あふれるルックスとサウンドを誇ります。
エボニー指板やボディの多層バインディング、ヘッドのスプリット・ダイヤモンド・インレイなどがその象徴です。
90年代のカスタムは、スタンダードと同様に「490R & 498T」ピックアップを搭載していることが多く、タイトで硬質なサウンドが特徴とされています。
その豪華な仕様から、ステージ映えを意識するギタリストや、ロック系のジャンルで特に高い人気を博しました。
これらのモデルは、それぞれが明確なコンセプトを持って製造されており、90年代ギブソンの多様性を象徴しています。
ギブソン レスポール スタンダード 90年代徹底レビュー
90年代のギブソンを代表するモデル、レスポール・スタンダード。
その魅力と注意点を、より深く掘り下げてレビューします。
この時期のスタンダードを選ぶことは、まさに宝探しのような楽しさと奥深さがあります。
サウンドの要:ピックアップの変遷
90年代のスタンダードに搭載されたピックアップは、主に2種類に大別されます。
一つは、アルニコマグネットを使用した「490R(ネック側)」と「498T(ブリッジ側)」のコンビネーションです。
これはモダンでパワフルなサウンドが特徴で、ロックやハードロックに適しています。
もう一つは、ヴィンテージPAFのサウンドを追求した「57 Classic」です。
こちらは、よりウォームで枯れたニュアンスを持ち、ブルースやクラシックロックを演奏するギタリストに好まれました。
一般的に、90年代前半は「57 Classic」、後半は「490R & 498T」が搭載される傾向にありますが、過渡期には混在しているため、購入時には必ず確認が必要です。
議論を呼ぶ「ウェイトリリーフ」
90年代のレスポール・スタンダードの内部構造で特筆すべきは、「ウェイトリリーフ」の存在です。
これは、ボディのマホガニー材に複数の穴を開けることで、ギター全体の重量を軽くするための加工で、「スイスチーズ」とも呼ばれます。
この加工のメリットは、長時間の演奏でも疲れにくいという演奏性の向上です。
一方で、デメリットとして、ソリッドボディのレスポールに比べてサウンドがやや軽快になり、サステイン(音の伸び)が短くなると感じる人もいます。
ヴィンテージのレスポールと同じサウンドを求めるユーザーからは敬遠される傾向にありますが、これもまた90年代スタンダードならではの個性と捉えることもできます。
最高の当たり年?「1994年製」の魅力
90年代の中でも、1994年製のレスポール・スタンダードは「当たり年」として特別視されることがあります。
この年はギブソン創立100周年という記念すべき年であり、ヘッドのロゴが通常と異なる特別な仕様になっているのが外見上の特徴です。
しかし、評価が高い理由はそれだけではありません。
この時期のモデルは、ボディトップのメイプル材に美しい杢目(フレイム)が出たものが多く、バックのマホガニー材も良質なものが使われていたと言われています。
もちろん個体差はありますが、1994年製のスタンダードは、中古市場でも特に人気が高く、探しているファンが多い年代です。
90年代ギブソンの品質を見極め、最高の1本を選ぶ方法

90年代ギブソン ヒストリックコレクションの品質と実態
90年代ギブソンの品質を語る上で、レギュラーラインとは一線を画す最高峰のシリーズ、「ヒストリックコレクション」の存在は欠かせません。
1993年に始まったこのシリーズは、ギブソンの黄金期である50年代〜60年代のモデルを、当時の仕様に限りなく近づけて復刻することを目的としていました。
レギュラーラインとの決定的な違い
ヒストリックコレクションがレギュラーラインと最も異なる点は、その「こだわり」のレベルです。
まず、使用される木材は、専門のスタッフによって厳選された最高級のグレードのものが使われます。
特にボディトップのフィギュアド・メイプルは、ヴィンテージを彷彿とさせる見事な杢目を持つものが選ばれました。
製造工程においても、特別な配慮がなされています。
その代表例が、「ディープ・ジョイント(ロング・テノン)」と呼ばれるネックの接合方法です。
これは、ネック材がフロントピックアップのキャビティ深くまで差し込まれる構造で、弦振動をボディに効率よく伝え、豊かなサステインと鳴りを生み出すとされています。
レギュラーラインでは採用されていない、このシリーズならではの重要な仕様です。
評価の高い年式:1994年と1999年
ヒストリックコレクションの中でも、特に評価が高いとされる年式が存在します。
一つは、シリーズが始まって間もない1994年製のモデルです。
「’94ショック」とまで言われるほど、この年のモデル、特に1959レスポールのリイシュー(復刻モデル)は、木材の質、作りの丁寧さにおいて傑出していたと評価されています。
もう一つは、1999年製です。
この年にはカスタムショップの体制がより強化され、ヴィンテージの再現度がさらに向上しました。
トップ材のカーブ形状やカラーリングなど、細部にわたる研究成果が反映され、非常に完成度の高いリイシューモデルが生産された年として知られています。
ただし、ヒストリックコレクションは非常に高価であり、レギュラーラインとは価格帯が大きく異なります。
究極のヴィンテージ・リイシューを求めるユーザーにとっては最高の選択肢となりますが、その価値を正しく理解した上で検討する必要があるでしょう。
ギブソン 90年代 カスタムショップ vs レギュラーラインの品質比較
90年代のギブソンを選ぶ際に、しばしば比較対象となるのが「カスタムショップ製品」と「レギュラーライン製品」です。
両者には明確な違いがあり、価格だけでなく品質やコンセプトも異なります。
この違いを理解することは、自分に合った一本を見つけるための重要な手がかりとなります。
違い①:木材の選定基準
最も大きな違いは、ギターの心臓部ともいえる「木材」のグレードです。
カスタムショップでは、膨大なストックの中から、音響特性や見た目の美しさにおいて特に優れた木材だけを厳選して使用します。
例えば、レスポールのトップ材であるメイプルは、見る角度によって表情を変える深い杢目を持つ「マスターグレード」と呼ばれるクラスのものが選ばれることもあります。
一方、レギュラーラインでも品質の高い木材が使われていますが、カスタムショップほどの厳格な基準ではなく、より安定供給を重視した選定が行われます。
違い②:工員のスキルと作り込みの精度
カスタムショップは、ギブソンの中でも特に熟練した技術を持つクラフトマンが集められた特別な工房です。
そこでは、レギュラーラインのような流れ作業ではなく、一本一本のギターに対して、より多くの時間と手間をかけて製作が行われます。
フレットの丁寧な仕上げや、ネックとボディの精密な接合、塗装の美しさなど、細部にわたる「作り込みの精度」がレギュラーラインとは一線を画します。
この丁寧な仕事が、演奏性の高さや楽器としての鳴りの良さに直結するのです。
違い③:仕様とコンセプト
カスタムショップ製品は、前述のヒストリックコレクションのように特定のヴィンテージギターを忠実に再現したり、著名なアーティストのシグネチャーモデルを製作したりと、特別なコンセプトに基づいて作られることがほとんどです。
ディープ・ジョイントや特別なピックアップなど、そのモデルでしか採用されない独自の仕様が盛り込まれています。
これに対して、レギュラーラインは、その時代の「標準的な」ギブソン製品として、より多くのユーザーに向けた汎用性の高い仕様となっています。
比較項目 | カスタムショップ | レギュラーライン |
木材 | 厳選された最高級グレード | 品質の高い標準グレード |
工員 | 熟練のクラフトマン | 専門の製造スタッフ |
工程 | 手間をかけた少量生産 | 効率化された大量生産 |
仕様 | 特別なコンセプト(ヴィンテージ再現等) | 時代の標準仕様 |
価格 | 高価 | 比較的手頃 |
このように、カスタムショップ製品は「作品」、レギュラーライン製品は「製品」といったニュアンスの違いがあります。
どちらが優れているというわけではなく、求める品質や予算に応じて選ぶべき対象が異なると言えるでしょう。
Gibson 90年代モデルのシリアルナンバーと正確な年代特定法
90年代のギブソンギターの素性を知る上で、シリアルナンバーの読み方を理解することは不可欠です。
シリアルナンバーからは、そのギターがいつ、どこで製造されたのかという正確な情報を得ることができます。
ただし、90年代はモデルによってシリアルナンバーの体系が異なるため、注意が必要です。
レギュラーラインのシリアルナンバー
最も一般的なのが、8桁の数字で構成されるシリアルナンバーです。
これは「YDDDYRRR」という形式で読み解くことができます。
- Y: 製造年の下1桁(90年代の場合は1桁目と5桁目で年を判断)
- DDD: その年の何日目に製造されたか(通し日数)
- RRR: その日の製造番号
例えば、「91204876」というシリアルナンバーの場合、1桁目の「9」と5桁目の「4」から「1994年」と判断できます。
「120」はその年の120日目、「876」はその日の製造番号を表します。
ギブソン100周年(1994年)の特殊なシリアル
1994年に製造されたモデルには、上記とは異なる特殊なシリアルナンバーが使われていることがあります。
これは「94XXXXXX」のように、先頭が「94」で始まる8桁の数字です。
このシリアルを持つモデルは、創立100周年を記念して作られたものであり、中古市場でも人気があります。
レスポール・クラシックのシリアルナンバー
1990年に登場したレスポール・クラシックは、独自のシリアル体系を持っています。
これは4桁から6桁の数字で構成され、最初の1桁が製造年の下1桁を示します。
- 例:
2 XXXX
→ 1992年製 - 例:
9 XXXXX
→ 1999年製
スタンダードなどとは全く異なる形式のため、クラシックモデルを見るときは特に注意が必要です。
モデルタイプ | シリアル形式 | 読み方の例 |
レギュラーライン | YDDDYRRR | 91204876 → 1994年 |
1994年記念モデル | 94XXXXXX | 94001234 → 1994年 |
レスポール・クラシック | Y XXX(X) | 2 1234 → 1992年 |
これらの知識があれば、中古楽器店でギターを見るときや、オンラインで情報を探すときに、より正確にそのギターの素性を把握することができるようになります。
90年代ギブソン「ハズレ」は本当?見分け方と個体差
「90年代のギブソンにはハズレが多い」という言葉を耳にすることがありますが、これは「個体差が大きい」という事実が誇張されて伝わったものと考えるのが妥当です。
ここでは、その個体差が生まれる理由と、購入時に「当たり」個体を見抜くための具体的なチェックポイントを解説します。
なぜ個体差(ハズレ)が生まれるのか
90年代は、CNCのようなコンピューター制御の工作機械がまだ完全には普及しておらず、製造工程の多くを職人の手作業に頼っていました。
ネックの削り出しやボディとの接合、フレットの打ち込みといった重要な工程が、職人の技術やその日のコンディションに左右される部分が大きかったのです。
また、前述の通り、90年代半ば以降は大量生産化が進み、品質管理にばらつきが出始めたことも、個体差を広げる一因となりました。
これらの要素が組み合わさることで、同じモデル、同じ年に作られたギターであっても、鳴りや弾き心地が大きく異なる個体が生まれてしまったのです。
購入前に確認すべき重要チェックポイント
中古で90年代のギブソンを選ぶ際は、必ず試奏し、以下のポイントを自分の目と手で確認することが重要です。
① ネックの状態
ギターの演奏性に最も影響するのがネックの状態です。
順反りや逆反りはトラスロッドで調整可能な場合が多いですが、「ねじれ」や、ネック起き(ハイ起き)と呼ばれるボディとの接合部が盛り上がってしまう症状は、修理が困難な場合があります。
ヘッド側からブリッジ側をのぞき込むようにして、ネックがまっすぐであるかを確認しましょう。
② フレットとナットの消耗度
フレットは消耗品です。
長年弾きこまれたギターはフレットがすり減っていることが多く、ひどい場合は音詰まりやピッチの不安定さを引き起こします。
フレットの残りが十分にあるか、部分的に極端なへこみがないかを確認してください。
ナットの溝が広がりすぎていると、開放弦でビビり音が出ることがあります。
③ トラスロッドの効き
ネックの反りを調整するトラスロッドが正常に機能するかは非常に重要です。
購入前に、店員さんに依頼してトラスロッドを左右に回してもらい、スムーズに回り、ネックに適切なテンションがかかるかを確認させてもらうのが理想です。
固くて回らない、または空回りする場合は、将来的なネック調整ができなくなるため避けるべきです。
④ 電気系統のチェック
ボリュームやトーンのポット(つまみ)を回したときに「ガリ」というノイズが出ないか、ピックアップセレクターを切り替えたときに音が途切れたりしないかを確認します。
これらは比較的安価に修理可能ですが、購入時のチェックは必須です。
これらのポイントを丁寧に確認することで、「ハズレ」とされる個体を避け、長く付き合える良質な一本と出会う確率を格段に高めることができます。
90年代ギブソン購入ガイド:チェックポイントと狙い目モデル
これまでの情報を踏まえ、実際に90年代のギブソンを購入する際の最終的なガイドラインと、具体的な狙い目モデルを提案します。
あなたのプレイスタイルや予算に合った最高のパートナーを見つけるための参考にしてください。
購入時の心構えと最終チェックリスト
まず最も重要なことは、スペックや評判だけで判断せず、必ず自分の手で弾いてみることです。
ギターは木材という自然素材から作られているため、同じモデルでも一本一本の個性は異なります。
- 重量とバランスはしっくりくるか?: 実際にストラップをかけて立って弾いてみましょう。ヘッド落ちしないか、重すぎて疲れないかを確認します。
- ネックの握り心地は自分に合っているか?: 同じモデルでも、微妙な削り方の違いで握り心地は変わります。
- 生鳴りは豊かか?: アンプに繋がず弾いたときの音量や響きを確認します。ボディ全体が振動している感覚がある個体は「当たり」の可能性が高いです。
- 改造点の有無を確認する: ピックアップやペグ(糸巻き)、ブリッジなどがオリジナルのものから交換されていないかを確認しましょう。改造が良い方向に作用していることもありますが、価値観は人それぞれです。
予算とスタイルで選ぶ!狙い目モデル
① 最初の1本にも最適:レスポール・クラシック(90年代前半)
スリムなネックで弾きやすく、ヴィンテージライクなルックスが魅力です。
中古市場での価格も比較的手頃なものが多く、コストパフォーマンスに優れています。
特に90年代前半の個体は、良質な木材が使われている可能性が高いとされています。
② 王道を求めるなら:レスポール・スタンダード(特に94年製)
まさにギブソンの王道サウンドを求めるなら、スタンダードは外せません。
中でも前述の通り、100周年記念にあたる1994年製のモデルは、特別な仕様と品質の高さから狙い目です。
ウェイトリリーフの有無によるサウンドの違いも楽しめる奥深さがあります。
③ 隠れた名機を探す:レスポール・スタジオ / スペシャル
バインディングなどの装飾を排したシンプルなモデルですが、サウンドの核となる部分は上位機種と変わりません。
特に90年代のスタジオやスペシャルは、しっかりと作られており、現代の同価格帯のギターよりも良い材が使われていることも少なくありません。
より少ない予算で「本物のギブソンサウンド」を手に入れたい方におすすめです。
④ 究極を求めるなら:ヒストリックコレクション
予算に上限がなく、最高のクオリティとヴィンテージへのこだわりを求めるなら、ヒストリックコレクションが最終目標となります。
特に評価の高い94年製や99年製のモデルは、まさに一生モノのギターとなるでしょう。
まとめ:90年代ギブソンの品質を理解し、最高の相棒を見つけよう
- 90年代ギブソンは品質が向上した時期だが、個体差が大きい
- 品質低下説はノーリン期からの回復期と大量生産化の二面性から生じる
- 80年代に比べ品質は向上し、2000年代に比べ手作業の要素が強い
- 90年代前半は良質な木材が使われたモデルが存在する
- レスポール・スタンダードにはウェイトリリーフ加工が施された個体がある
- レスポール・クラシックは薄いネックで演奏性が高い人気モデルである
- ヒストリックコレクションは厳選された木材と特別な製法で作られる最高峰ラインである
- カスタムショップ製品は木材、作り込み、仕様の全てでレギュラーラインと一線を画す
- シリアルナンバーの形式はレギュラー、クラシック、記念モデルで異なるため注意が必要
- 購入時はネック、フレット、トラスロッドの状態を必ず確認する

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