「ギターのディレイって本当に必要?」と疑問に思ったことはありませんか。
エフェクターボードの定番とも言えるディレイですが、一方で「ギターの練習にディレイはいらない」という声も多く聞かれます。
高価な機材も多いため、本当に必要なのか、リバーブとはどっちを選べば良いのか、悩んでしまうのも無理はありません。
この記事では、なぜ「ギター ディレイ いらない」と言われるのか、その理由とデメリットをプロの視点から徹底的に解説します。
さらに、ディレイが本当に必要になる場面や効果的なセッティング、エフェクターを使わないギタリストの音作りまで、あなたの疑問をすべて解消します。
ギターにディレイは本当にいらない?プロの意見から見る結論
【結論】ほとんどの練習では不要、でも目的があれば強力な武器になる
結論から言うと、ギターの練習において、ほとんどの場合ディレイは不要です。
むしろ、練習の段階で安易にディレイを使うと、上達を妨げる可能性さえあります。
しかし、これはディレイが全く役に立たないという意味ではありません。
特定の目的を持って使用すれば、ディレイはサウンドの表現力を格段に引き上げる強力な武器になります。
大切なのは、「なんとなく」で常にかけっぱなしにするのではなく、その効果を理解した上で意図的に使うことです。
なぜ「ディレイはいらない」と言われるのか?最大の理由を解説
「ディレイはいらない」と言われる最大の理由は、演奏のアラをごまかしてしまうからです。
ディレイは、弾いた音を遅延させて繰り返すエフェクトのため、音の伸び(サステイン)が искусственноに長くなります。
これにより、ピッキングのタイミングのズレや音の粒立ちの悪さといった、本来であれば修正すべき点が曖昧になってしまうのです。
特に基礎練習の段階では、自分の出した音を正確に聴き取ることが上達の鍵となります。
ディレイがかかっていると、その正確なモニタリングが困難になるため、多くの指導者が練習時の使用を推奨していません。
「上手く聞こえるから」は危険信号?練習で安易に使うデメリット
ディレイをかけると、音が空間的に広がり、響きが豊かになるため、演奏が上手くなったように聞こえがちです。
これはカラオケでエコーをかけると歌が上手く聞こえるのと同じ原理です。
しかし、この「上手く聞こえる感覚」が、実は上達を妨げる危険な落とし穴なのです。
ディレイの響きに頼ってしまうと、音をしっかり伸ばすピッキングや、正確なリズム感が養われにくくなります。
結果として、ディレイをオフにした途端に演奏が単調で味気ないものに聞こえてしまい、エフェクターなしでは満足に弾けない状態に陥る可能性があります。
ディレイが「いらない」と言われる具体的なシチュエーション

基礎練習やフレーズ練習ではオフにすべき理由
スケール練習やアルペジオ、カッティングといった基礎的な練習やフレーズ練習では、ディレイは必ずオフにしましょう。
これらの練習の目的は、一音一音のピッキングの強弱(ニュアンス)、リズムの正確さ、そして音の粒立ちを揃える技術を養うことにあります。
ディレイがかかっていると、エフェクト音によって原音がマスキングされ、自分の演奏の細かな部分が聞き取りにくくなります。
クリアな音で練習することで、自分の弱点を正確に把握し、効率的に技術を向上させることができるのです。
バンドアンサンブルで音がぼやける・抜けない原因になるケース
バンドで演奏する際に、ディレイの設定を誤ると、サウンド全体の中でギターの音が埋もれてしまう原因になります。
特に、ディレイタイム(音が返ってくるまでの時間)やフィードバック(繰り返しの回数)が多すぎると、音が飽和状態になり、輪郭がぼやけてしまいます。
他の楽器の音と混ざり合い、「抜けない音」になってしまうのです。
ライブハウスやスタジオの響き(自然なリバーブ)とディレイが過剰に重なると、さらに音像が不明瞭になるため、アンサンブルの中での使用には細心の注意が必要です。
ギター本来の音やアンプの特性を最大限に活かしたい時
優れたギターやアンプは、それ自体が非常に豊かな表現力を持っています。
ピッキングの強弱によってクリーンからクランチへと変化する様や、ギター本体のボリュームノブを操作したときの音色の変化は、まさにその真骨頂です。
エフェクターを使わず、ギターとアンプを直接接続する「アンプ直」のスタイルを好むギタリストは、このダイレクトな反応とサウンドを何よりも大切にします。
このような場合、ディレイをはじめとする空間系エフェクターは、ギターやアンプが持つ本来のポテンシャルをマスキングしてしまうため、「いらない」と判断されるのです。
逆にディレイが「必要」になる効果的な場面とは?

コピーしたい曲や特定のフレーズの再現に必須な場合
ディレイがサウンドの核となっている楽曲は数多く存在します。
例えば、U2のギタリスト、ジ・エッジのプレイは「付点8分ディレイ」なくしては成り立ちません。
また、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが奏でる浮遊感のあるギターソロも、ディレイが重要な役割を担っています。
このように、特定のアーティストや楽曲のサウンドを忠実に再現したい場合には、ディレイは「必要不可欠」なエフェクターとなります。
ギターソロで音に厚みやサステイン(伸び)を出したい時
ギターソロをよりドラマティックに、そして印象的に聞かせたい場面でディレイは絶大な効果を発揮します。
ディレイを薄くかけることで、音に奥行きと厚みが加わり、単音のフレーズでもサウンドが薄くなるのを防ぎます。
また、音の伸び(サステイン)を補強する効果もあるため、ロングトーンを活かした泣きのフレーズなどをよりエモーショナルに響かせることが可能です。
3ピースバンドなど音数が少ない編成で空間を埋めたい時
ギター、ベース、ドラムというシンプルな3ピースのバンド編成では、ギターがバッキングからソロに移る際などに、音の隙間が目立ちやすくなります。
このような場合にディレイを活用すると、音の残響が空間を埋め、サウンドの密度を保つことができます。
ショートディレイをかけることで、あたかももう一人ギタリストがいるかのような厚みを出す(ダブリング効果)ことも可能です。
音数が少ない編成において、ディレイはサウンドに広がりと厚みをもたらす重要な役割を果たします。
ライブのリハーサルなど本番を想定した音作り
自宅での練習とは異なり、ライブ本番を想定したリハーサルではディレイを使った音作りが必要になります。
ライブハウスやコンサートホールの音響特性をシミュレーションし、観客にどのように音が届くかを確認しながらセッティングを詰めていく作業は非常に重要です。
どのタイミングでディレイをオン/オフするのか、曲のテンポに合わせたディレイタイムの設定など、パフォーマンス全体を通してエフェクトを効果的に使うための練習は、本番さながらの環境で行うべきでしょう。
ディレイなしで魅力的な音を作るには?エフェクターを使わないギタリストの流儀

アンプ直結で音作りをするギタリスト達の共通点
エフェクターを多用せず、アンプに直接ギターを接続するスタイルを貫くギタリスト達には、共通した音作りの哲学があります。
彼らはアンプのゲインやEQ(イコライザー)を巧みに操り、アンプ自体が持つ歪みや音色を最大限に引き出します。
機材の特性を深く理解し、最小限のセッティングで最高のサウンドを追求するその姿勢は、多くのギタリストにとって学ぶべき点が多いでしょう。
ギター本体のボリュームとトーンを使いこなす技術
優れたギタリストは、エフェクターのペダルを踏む代わりに、ギター本体のボリュームノブやトーンノブを駆使してサウンドをコントロールします。
例えば、ボリュームノブを少し絞ることで、アンプの歪みを抑えてクリーンに近いサウンドを作り出したり、逆にフルにすることで激しいディストーションサウンドを得たりします。
この手元での微細なコントロールが、演奏に豊かなダイナミクスと表現力を与えるのです。
ピッキングの強弱(ニュアンス)でサウンドを操る方法
究極的には、ギタリストの表現力は指先、つまりピッキングのニュアンスに集約されます。
同じフレーズでも、弦を弾く強さや角度、ピックを当てる位置を変えるだけで、音色は劇的に変化します。
エフェクターに頼らないギタリストは、このピッキングコントロールを極限まで高めることで、サウンドに表情をつけています。
ディレイなどのエフェクトがない分、一音一音の説得力がより際立ちます。
参考になる!エフェクターを使わない有名ギタリスト5選
エフェクターをほとんど使わず、ギターとアンプのみで伝説的なサウンドを築き上げたギタリストは数多く存在します。
彼らのプレイは、ディレイなしでいかに魅力的な音を作れるかを知る上で、最高の教材となるでしょう。
ギタリスト名 | ジャンル | 特徴 |
---|---|---|
アベフトシ | ロック | テレキャスターとマーシャルアンプによる鋭いカッティングが特徴 |
デュアン・オールマン | サザン・ロック | レスポールでの情熱的なスライドギターが代名詞 |
B.B.キング | ブルース | 「ルシール」と呼ばれるギターから紡ぎ出される情感豊かなトーン |
マイク・ブルームフィールド | ブルース・ロック | ピッキングの強弱だけで多彩な表現力を引き出す |
グラント・グリーン | ジャズ | エフェクターに頼らない滑らかで美しい音色が魅力 |
「ディレイはいらないけどリバーブは?」2つの違いとどっちを選ぶべきか

ディレイとリバーブの根本的な違いとは?(やまびこと響き)
ディレイとリバーブは、どちらも音に残響を与える空間系エフェクターですが、その原理は根本的に異なります。
ディレイは、弾いた音を遅らせて「繰り返し再生」するエフェクトで、山で叫んだ時に返ってくる「やまびこ」に例えられます。
一方、リバーブは、お風呂場やホールなどで音が壁に反射して生まれる複雑な「響き(残響)」をシミュレートするエフェクトです。
簡単に言えば、ディレイは「音の繰り返し」、リバーブは「空間の広がり」を作り出します。
どちらか一つだけ買うならどっち?優先順位の考え方
もしディレイかリバーブのどちらか一つだけを選ぶなら、まずはリバーブを検討することをおすすめします。
リバーブはサウンドに自然な奥行きとまとまりを与え、音を馴染ませる効果があるため、多くのジャンルで活用できる汎用性の高いエフェクターです。
アンプに内蔵されていることも多く、比較的扱いやすいのも特徴です。
対してディレイは、より積極的で特徴的なサウンドメイクに使われることが多く、必須となる場面はリバーブに比べて限定的と言えるでしょう。
ギターリバーブはどのくらいかけるのが適切?設定の基本
リバーブをかける際の基本は、「かけすぎない」ことです。
リバーブ量が多すぎると、ディレイと同様に音がぼやけてしまい、アンサンブルの中で埋もれる原因になります。
まずは、かかっているかいないか分からない程度に「うっすら」とかけるのがポイントです。
そこから楽曲の雰囲気に合わせて微調整していくと良いでしょう。
特にクリーンサウンドに浅くかけると、音に艶と立体感が生まれ、リッチなサウンドになります。
ディレイとリバーブを効果的に併用するセッティング例
ディレイとリバーブを併用することで、より深く立体的な空間を演出することが可能です。
エフェクターの接続順としては、「ディレイ → リバーブ」が一般的です。
これは、ディレイによって作られた「やまびこ(繰り返し音)」を含めたサウンド全体を、リバーブの「空間の響き」で包み込むという考え方に基づいています。
この順番にすることで、より自然で奥行きのあるサウンドスケープを作り出すことができます。
それでもディレイを使いたい人へ|効果的なセッティング術

「かけっぱなし」はアリ?ショートディレイ(ダブリング)の活用法
ディレイを常に「かけっぱなし」にする使い方もありますが、その場合は設定が重要です。
ディレイタイムを数十ミリ秒(ms)と非常に短く設定した「ショートディレイ」は、音に厚みを加え、あたかもギターを2本同時に弾いているかのような効果(ダブリング)を生み出します。
リバーブのように音を広げる効果もありながら、音の輪郭は保たれやすいため、常時オンにして音の厚みを稼ぐという使い方は有効です。
曲のテンポに合わせるのが基本?ロングディレイの使い方
ディレイタイムを長めに設定する「ロングディレイ」を使用する場合は、曲のテンポ(BPM)に合わせるのが基本です。
ディレイ音がテンポからずれていると、リズムが乱れてしまい、かえって演奏の邪魔になってしまいます。
多くのデジタルディレイには、テンポに合わせてディレイタイムを自動設定できるタップテンポ機能が搭載されているので、積極的に活用しましょう。
アルペジオやギターソロで使うと、幻想的で広がりのあるサウンドを演出できます。
U2のジ・エッジでお馴染み「付点8分ディレイ」とは?
「付点8分ディレイ」は、ディレイを使った最も有名なテクニックの一つです。
これは、4分音符の4分の3の長さ(付点8分音符)でディレイ音が返ってくるように設定するものです。
ギタリストが8分音符でフレーズを弾くと、ディレイ音がその隙間を埋めるように鳴り、結果として複雑な16分音符のフレーズのように聞こえます。
この効果を最大限に活かすには、原音とディレイ音の音量バランスをほぼ同じに設定するのがポイントです。
ディレイをかけるおすすめの接続順(歪みの前か後か)
ディレイをどのエフェクターの後に接続するかは、サウンドに大きな影響を与えます。
最も一般的なのは、オーバードライブやディストーションといった「歪みエフェクターの後」にディレイを接続する方法です。
この順番だと、「歪んだ音」がクリアに繰り返されるため、ディレイの効果が分かりやすく、扱いやすいサウンドになります。
逆に歪みの前にディレイを置くと、繰り返される音が後段の歪みエフェクターによって潰れてしまい、混沌としたノイジーなサウンドになります。
意図的にその効果を狙う場合を除き、まずは歪みの後に接続することをおすすめします。
「ギター ディレイ いらない」に関するよくある質問(Q&A)
Q. 初心者ですが、ディレイがないと楽しめませんか?
A. いいえ、ディレイがなくてもギターは十分に楽しめます。
むしろ、初心者の段階ではエフェクターを使わず、ギターとアンプだけのクリーンな音で練習することが、上達への一番の近道です。
ピッキングの強弱で音がどう変わるかを体感し、自分の出す音に集中することが大切です。
Q. マルチエフェクターに内蔵されているディレイなら使ってもいい?
A. マルチエフェクターは一台で様々な音が出せる便利な機材ですが、ディレイの扱い方は単体エフェクターと同じです。
基礎練習や技術練習の際には、ディレイをはじめとする空間系エフェクトはオフにする意識を持ちましょう。
音作りを楽しむ際には、マルチエフェクター内の様々なディレイを試してみるのは良い経験になります。
Q. 歪みエフェクターやブースターもいらないって本当ですか?
A. ディレイと、歪みエフェクター(オーバードライブ/ディストーション)やブースターとでは、役割と必要性が異なります。
歪みエフェクターやブースターは、ギターサウンドのキャラクターそのものを作り上げる、音作りの根幹に関わる機材です。
特にアンプだけでは十分な歪みが得られない場合など、多くのシチュエーションで必要とされます。
「空間を彩る」ディレイと、「音色を形成する」歪み系は、分けて考えるのが適切です。
まとめ:ギターのディレイは「いらない」のか考える
- ギターの練習段階において、ほとんどの場合ディレイは不要である
- ディレイは演奏のアラをごまかし、上達を妨げる可能性がある
- 上手く聞こえる感覚に頼ると、エフェクターなしで弾けなくなるリスクがある
- 基礎練習やバンドアンサンブルでは、ディレイをオフにすることが推奨される
- 特定の楽曲コピーやギターソロの演出など、明確な目的があればディレイは強力な武器となる
- ディレイなしでも、アンプやギター本体の操作、ピッキングの工夫で魅力的な音は作れる
- ディレイは「音の繰り返し」、リバーブは「空間の響き」という根本的な違いがある
- どちらか一つを選ぶなら、汎用性の高いリバーブがおすすめである
- ディレイを効果的に使うには、ショートディレイやテンポに合わせたロングディレイなど設定の工夫が重要である
- ディレイの必要性はシチュエーションにより異なり、「なんとなく」で使わないことが最も大切である