ギターサウンドの世界を一変させたKEMPERから、ついに待望のペダルサイズモデル「PROFILER Player」が登場しました。
「音質は上位機種と変わらないのか?」「機能制限はどこまで許容できるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いはずです。
機材のダウンサイジングが進む現代において、プロクオリティのアンプサウンドをどこへでも持ち運べることには計り知れない価値があります。
この記事では、KEMPER PROFILER PLAYERのスペックや機能の詳細、そして実際の使用感に基づいたメリット・デメリットをレビュー解説します。
KEMPER PROFILER PLAYERとは?特徴と基本スペックを解説
KEMPER PROFILER PLAYERは、世界中のギタリストに愛用されている「KEMPER PROFILER」のサウンドエンジンを、コンパクトなペダル筐体に凝縮したモデルです。
これまでのヘッドタイプやラックタイプ、フロアタイプの「Stage」に続く、最も小さく、最も手軽なKEMPERと言えます。
まずは、この製品がどのようなコンセプトで作られているのか、その特徴と基本スペックについて詳しく解説します。
世界最高峰のアンプトーンをペダルサイズに凝縮した「再生専用機」
KEMPER PROFILER PLAYERの最大の特徴は、独自の「プロファイリング・テクノロジー」によって取り込まれたアンプサウンドを、そのまま再生できる点にあります。
このモデルは、自らアンプの音を取り込む「プロファイリング機能」は搭載していませんが、既存の膨大なリグ(音色データ)を読み込んで使用することに特化しています。
つまり、世界中のスタジオで作成された数千、数万という伝説的なアンプのサウンドを、この小さな箱一つで再現できるのです。
「再生専用」と割り切ることで、圧倒的な小型化とコストダウンを実現しながらも、出てくる音そのものは上位機種と全く同じクオリティを維持しています。
基本スペック一覧:サイズ、重量、入出力端子の仕様
ペダルボードへの組み込みを想定した、非常にコンパクトな設計になっています。
具体的なサイズ感としては、一般的なコンパクトエフェクター2〜3個分程度のスペースがあれば設置可能です。
主なスペックは以下の通りです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 外形寸法 | 145mm (W) x 166mm (D) x 68mm (H) |
| 重量 | 1.11kg |
| アンプ部 | 上位機種と同じアンプセクション |
| エフェクト | 4ブロック(プリ×2、ポスト×2)※初期状態 |
| 入力 | ギターインプット |
| 出力 | XLRメインアウト、モニターアウト(L/R)、ヘッドホン |
| 制御 | フットスイッチ×3、コントロールノブ×5 |
| 電源 | 9-12VDC 24W |
標準的なディストーションペダル2台分程度のスペースしか必要としないため、ギターバッグのポケットに入れて持ち運ぶことも容易です。
Bluetooth・WiFi対応とアプリ「Rig Manager」の役割
KEMPER PROFILER PLAYERは、本体に液晶ディスプレイを持たない代わりに、スマートフォンやタブレット、PCとの連携機能が強化されています。
専用アプリ「Rig Manager」を使用することで、BluetoothまたはWiFi経由でワイヤレス接続し、音色の編集や管理を直感的に行うことができます。
本体のノブだけでは調整できない細かいパラメータ設定や、エフェクトの入れ替えなどは、このアプリ上で行うのが基本スタイルです。
また、Bluetoothオーディオ機能も搭載しているため、スマートフォンの音楽を再生しながらギターを練習するといった使い方も可能です。
【音質レビュー】上位機種(Head/Stage)との違いはあるのか?
ダウンサイジングされたモデルで最も気になるのが「音質」ですが、結論から言えば、アンプサウンドの質は上位機種と完全に同一です。
プロの現場で使われているHeadやRack、Stageと同じサウンドエンジンを搭載しているため、妥協のないトーンが得られます。
ここでは、音質面での詳細なレビューと、新機能による進化について解説します。
アンプサウンドは上位機種と完全に同一クオリティ
KEMPER PROFILER PLAYERのアンプセクションは、有名な「Big Brothers(上位機種)」のアンプセクションと同じサウンドを出力します。
ピッキングのニュアンスに対する追従性、真空管アンプ特有のダイナミクス、空気感に至るまで、KEMPERが評価されてきた要素はすべて継承されています。
実際にブラインドテストを行っても、Playerと上位機種の音を聞き分けることは不可能に近いでしょう。
自宅練習から大規模なライブステージまで、環境を選ばずに「いつもの最高のアンプトーン」を鳴らすことができます。
新機能「リキッド・プロファイル」によるリアルな挙動と操作感
KEMPER PROFILER PLAYERは、最新のOSで実装された「リキッド・プロファイル」テクノロジーに完全対応しています。
これまでのプロファイリングは、特定の設定のアンプの音を「静止画」のように切り取る技術でした。
そのため、プロファイリング後にKEMPER側でゲインやEQを大きく動かすと、実機のアンプとは異なる挙動になることがありました。
リキッド・プロファイルでは、アンプごとの回路特性やトーンコントロールの挙動までをデータ化し、ゲインやEQを操作した際の変化を実機同様に再現します。
これにより、単に音が似ているだけでなく、アンプを操作している感覚そのものまでリアルになっています。
キャビネットIRのロードと「KEMPER Kone」対応について
近年のデジタル機材では必須とも言える、外部IR(インパルス・レスポンス)の読み込みにも対応しています。
好みのキャビネットIRを使用することで、さらに自分好みのサウンドメイクが可能です。
また、KEMPER社独自のスピーカーテクノロジー「KEMPER Kone」を搭載した「KEMPER Power Kabinet」に接続する場合、専用のスピーカー・インプリント機能を利用できます。
これにより、キャビネット側で様々なスピーカーの特性をシミュレートし、アンプ・イン・ザ・ルーム(実際にアンプが部屋で鳴っている感覚)なサウンドを得ることができます。
KEMPER PROFILER PLAYERのメリット・おすすめな点
KEMPER PROFILER PLAYERを導入することで得られる最大のメリットは、その機動力と柔軟性です。
既存のペダルボードシステムに組み込みやすい設計や、ライブでの実用性を考慮した出力機能など、ギタリストにとって嬉しいポイントが数多くあります。
具体的なおすすめポイントを3つ挙げます。
ギターバッグに収まる圧倒的な携帯性とペダルボードへの親和性
最大のメリットは、何と言ってもその携帯性です。
これまで、KEMPERのサウンドを持ち運ぶには、重いヘッドアンプやラックケース、あるいは大きめのフロアボードが必要でした。
しかし、Playerならギターバッグのポケットに収まるサイズで、重量もわずか1.1kg程度です。
また、一般的なコンパクトエフェクターと並べてペダルボードに組み込むことができるため、お気に入りの歪みペダルや空間系ペダルと組み合わせて、自分だけの最強システムを構築できます。
ライブで威力を発揮する独立3出力(FOH・モニター・ヘッドホン)の使い分け
小型筐体でありながら、出力端子が非常に充実している点も見逃せません。
XLR端子(FOH/スタジオ・アウト)、モニター・アウト(L/Rステレオ)、ヘッドホン・アウトの3系統が独立しており、それぞれ異なる設定で出力可能です。
例えば、ライブ時には以下のような使い分けができます。
- メインアウト(XLR): キャビネットシミュレーターをONにしてPA(客席)へ送る。
- モニターアウト: キャビネットシミュレーターをOFFにして、ステージ上のギターアンプのリターンに接続する。
これにより、PAへは完成されたラインサウンドを送りつつ、自分はステージ上のアンプから迫力ある生音をモニターするという、プロフェッショナルなルーティングが可能です。
USBオーディオインターフェース機能搭載で宅録・リアンプも即戦力
KEMPER PROFILER PLAYERは、USB経由でのオーディオインターフェース機能(4イン/4アウト)も備えています。
PCとUSBケーブル一本で接続するだけで、DAWソフトへの高音質なレコーディングが可能です。
さらに、録音したドライ音(加工前のギター音)をPlayerに送り直し、再度アンプサウンドを通して録音する「リアンプ」作業も容易に行えます。
自宅での制作環境においても、強力な武器となるでしょう。
購入前に知っておくべき注意点とデメリット
非常に魅力的な製品ですが、購入していざ使ってみると「思っていた機能がない」と戸惑うことのないよう、注意点やデメリットもしっかり把握しておく必要があります。
小型化と低価格化を実現するために、いくつかの機能が削ぎ落とされています。
主な注意点を5つ解説します。
プロファイリング機能は非搭載(あくまでプレイヤーである点)
製品名に「PLAYER」とある通り、この機種は音を再生することに特化しており、自分でアンプの音を取り込む「プロファイリング」はできません。
自分の持っているアンプをデータ化して持ち運びたい場合は、上位機種のHead、Rack、Stageのいずれかが必要です。
ただし、リグマネージャーやリグ・エクスチェンジを通じて、世界中の膨大なリグデータにアクセスできるため、音色に困ることはまずないでしょう。
センドリターン端子(エフェクトループ)がないことによる拡張性の限界
KEMPER PROFILER PLAYERには、外部エフェクターを接続するためのセンドリターン端子(エフェクトループ)が搭載されていません。
そのため、本体のアンプセクションの前段に歪みペダルを繋ぐことはできますが、アンプセクションの後段(空間系エフェクトの前など)に外部エフェクターを挿入することはできません。
お気に入りの空間系ペダルを使いたい場合は、Playerの最終出力の後に繋ぐ形になります。
本体にディスプレイがなく細かい設定にはスマホ/PCが必須
本体には液晶ディスプレイがなく、LEDの色と点灯状態でステータスを確認する仕様です。
現在選択しているリグの名前や、エフェクトの細かいパラメータを本体だけで確認・変更するのは困難です。
音作りやリグの管理を行う際は、PCやスマートフォンなどの外部デバイスとアプリ「Rig Manager」がほぼ必須となります。
ライブ中のトラブルなどでスマホが使えない状況になると、詳細な設定変更ができなくなるリスクがある点は留意しておきましょう。
MIDI端子がUSBタイプのみであることの弊害と対策
外部MIDIコントローラーを使用して操作したい場合、MIDI端子の形状に注意が必要です。
KEMPER PROFILER PLAYERには、従来の5ピンDIN端子やTRS MIDI端子は搭載されておらず、USB端子(Type-A/Type-B)のみでのMIDI接続となります。
そのため、一般的なMIDIコントローラーを接続するには、USB MIDIに対応している機器を選ぶか、USBホスト機能を持つ中継機が必要になる場合があります。
電源アダプターと駆動電圧に関する注意点
付属の専用電源アダプターでの駆動が基本となります。
仕様としては9-12VDCですが、消費電力が24Wと大きいため、一般的なギター用パワーサプライの9V端子(通常500mA程度)では駆動できません。
ペダルボードに組み込む際は、Player専用のアダプターを使用するか、大容量電流に対応した特殊なパワーサプライを用意する必要があります。
【重要】有料アップグレード「LVL II & LVL III」で機能はどう化ける?
KEMPER PROFILER PLAYERには、購入後に有償で機能を拡張できるアップグレードオプションが用意されています。
これにより、初期状態の制限を解除し、上位機種に肉薄する機能を手に入れることができます。
ここでは、各レベルの違いについて解説します。
初期状態(LVL I)とアップグレード後の機能・エフェクト数の違い比較
工場出荷時の状態(LVL I)でも、アンプサウンドの品質は最高レベルですが、使用できるエフェクトの数や種類に制限があります。
具体的には、エフェクトブロックは4つ(プリ2、ポスト2)で、選択できるエフェクトの種類も基本的なものに限られています。
これを有料でLVL II、LVL IIIへとアップデートすることで、段階的に機能が開放されます。
LVL II:エフェクト種類解放とモーフィング機能の追加
LVL IIへのアップグレードを行うと、使用可能なエフェクトの種類が大幅に増えます。
KEMPERが誇る高品質なリバーブやディレイ、ピッチシフターなど、上位機種に搭載されているほぼ全てのエフェクトタイプが選択可能になります。
また、KEMPER独自の「モーフィング機能」も追加され、一つのリグ内で複数のパラメータを滑らかに変化させるような、高度な表現が可能になります。
LVL III:同時使用エフェクトが最大8つに増加しルーパーも搭載
最上位のLVL IIIへアップグレードすると、同時使用できるエフェクトブロックの数が、上位機種と同じ最大8つ(プリ4、ポスト4)に拡張されます。
これにより、コンプ、歪み、EQ、コーラス、ディレイ、リバーブなどを同時に使用する複雑な音作りが可能になります。
さらに、練習やパフォーマンスに便利な「ルーパー機能」なども追加され、機能面ではStageとほぼ遜色のないレベルに進化します。
アップグレード費用とStageを買う場合とのコスパ比較
アップグレードには費用がかかりますが、それでも最初から上位機種の「PROFILER Stage」を購入するよりは安価に収まるケースが多いです。
ただし、Stageには最初からフットスイッチが多数あり、ディスプレイも搭載され、センドリターン端子もあります。
「とにかくコンパクトにフル機能を使いたい」ならPlayer+アップグレード、「足元の操作性と拡張性を重視する」ならStage、という選び方が賢明です。
KEMPER PROFILER PLAYERと他機種の比較・選び方
市場には多くのマルチプロセッサーが存在しますが、KEMPER PROFILER PLAYERはどのような立ち位置にあるのでしょうか。
競合機種や上位機種と比較し、どのようなユーザーに適しているかを整理します。
PROFILER Stage vs Player:操作性と拡張性でどっちを選ぶべき?
KEMPERのフロアタイプである「Stage」と比較した場合、決定的な違いは「ハードウェアの操作性」です。
Stageはフットスイッチが多く、ディスプレイがあり、ライブ中に足元だけで完結する操作性を持っています。
一方、Playerはフットスイッチが3つしかなく、バンクの切り替えなどの操作には工夫が必要です。
ライブでの即興的な操作や、多彩な音色の切り替えを重視するならStage、あらかじめ決めた数色の音色で演奏するスタイルならPlayerが適しています。
IK Multimedia TONEX Pedal vs Player:音質と機能の違い
同じくキャプチャー(プロファイル)系アンプペダルとして人気のある「TONEX Pedal」も比較対象になります。
TONEX Pedalは、アンプサウンドのリアルさにおいてはKEMPERと互角ですが、搭載されているエフェクト(空間系など)は簡易的なものです。
KEMPER PROFILER PLAYERは、アンプだけでなく、スタジオグレードの高品質なエフェクトを多数搭載しており、これ一台で完結する「マルチエフェクター」としての側面も強いです。
純粋にアンプの代わりが欲しいならTONEX、システム全体をコンパクトにしたいならKEMPER Playerがおすすめです。
用途別診断:Playerが向いている人・向いていない人
Playerが向いている人
- KEMPERの最高音質をできるだけ軽く持ち運びたい人。
- すでにボードを組んでいて、アンプ部分だけを置き換えたい人。
- スマホやPCでの音作りに抵抗がない人。
Playerが向いていない人
- 自分で実機アンプのプロファイリングを行いたい人。
- ライブ中に頻繁にパッチを切り替えたり、細かい設定を本体で変更したい人。
- センドリターンを使って外部エフェクターを複雑にルーティングしたい人。
実際のユーザーによる評判・口コミまとめ
発売以来、多くのユーザーが手にしているKEMPER PROFILER PLAYERですが、市場での評判はどうなっているのでしょうか。
実際のレビューや口コミから見えてくる評価をまとめます。
肯定的な評価:ダウンサイジング成功と妥協のない出音
多くのユーザーが高く評価しているのは、やはり「サイズ」と「音」のバランスです。
「Stageを持ち運ぶのが辛かったが、Playerにして劇的に楽になった」「音は本当にそのままで感動した」という声が多く聞かれます。
また、モバイルバッテリーでの駆動に成功したという報告もあり(公式推奨外ですが)、電源環境の自由度に対する期待も高まっています。
自宅練習用としても、場所を取らずに最高のアンプサウンドが鳴らせるため、満足度は非常に高いようです。
厳しい評価:ライブ中の操作性や拡張性の物足りなさ
一方で、ネガティブな意見としては「ディスプレイがないことへの不安」が挙げられます。
「今どのリグを選んでいるか確認しづらい」「ライブ中のトラブル対応が怖い」といった声があります。
また、「エフェクトの同時使用数が初期状態では足りない」という意見もありましたが、これについては有料アップグレードの登場により解決策が提示されました。
MIDI接続の仕様についても、変換が必要な点などで不便を感じるユーザーがいるようです。
まとめ:KEMPER PROFILER PLAYER レビュー解説の総括
KEMPER PROFILER PLAYERは、プロファイリング・テクノロジーが生み出す最高のアンプサウンドを、驚くほどコンパクトな筐体に収めた革新的な製品です。
プロファイリング機能やディスプレイを省くという大胆な割り切りにより、携帯性とコストパフォーマンスを高めています。
制限はあるものの、音質は上位機種と全く同じであり、有料アップグレードによって機能面でもほぼ同等まで進化させることが可能です。
最後に、KEMPER PROFILER PLAYERの特徴をまとめます。
- アンプサウンドの品質は上位機種のHeadやStageと完全に同一である
- プロファイリング機能は非搭載の「再生専用機」である
- 一般的なエフェクター2台分ほどのサイズでギターケースに収納可能
- リキッド・プロファイル対応でアンプの挙動までリアルに再現する
- 本体にディスプレイはなく、詳細設定にはスマホアプリ「Rig Manager」が必須
- FOH、モニター、ヘッドホンの独立3系統出力が可能でライブに強い
- USBオーディオインターフェース機能搭載で宅録やリアンプに対応する
- センドリターン端子は非搭載のため外部エフェクトの接続順には制限がある
- 有料アップグレードによりエフェクト数や同時使用数を拡張できる
- 操作性や拡張性を理解して導入すれば最強の小型アンプシステムになる

