Paul Reed Smith(PRS)のギターは、その美しいルックスと卓越したプレイアビリティで、多くのギタリストを魅了し続けています。
しかし、Core、S2、SEといった多彩なシリーズが存在し、特に見た目が似ているモデルも多いため、それぞれの違いを正確に把握するのは難しいと感じるかもしれません。
その中でも、独特の立ち位置を確立しているのが「CEシリーズ」です。
PRSのフラッグシップである「Custom24」とは何が違うのか、同じUSA製で価格帯の近い「S2シリーズ」との差はどこにあるのか、そしてコストパフォーマンスに優れた「SEシリーズ」と比較してどうなのか、疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、「PRS CE 違い」というテーマに焦点を当て、各シリーズのコンセプト、ネックのジョイント方式、使用される木材やパーツ、そしてサウンドキャラクターの違いを、初心者の方にも分かりやすく徹底的に比較・解説していきます。
この記事を最後まで読めば、それぞれのモデルが持つ個性と魅力を深く理解し、あなたのプレイスタイルや予算に最もマッチした、後悔のない一本を見つけるための確かな知識が身につくはずです。
PRS CEの基本的な違いとCustom24との比較

Prsというギターブランドの魅力
PRS(Paul Reed Smith)というブランドがなぜこれほどまでに多くのギタリストから支持されるのか、その魅力は「品質」「美観」「演奏性」という3つの要素が、極めて高い次元で融合している点にあります。
創業者であるポール・リード・スミス氏は、伝統的なギターの持つ素晴らしい要素をリスペクトしつつ、現代の音楽シーンで求められる多様なニーズに応えるための革新を続けてきました。
その結果として生み出されたのが、PRSギター独自の個性です。
例えば、多くのモデルで採用されている25インチというスケール長は、フェンダー(25.5インチ)とギブソン(24.75インチ)のちょうど中間に位置します。
これにより、フェンダー的なハリのあるテンション感と、ギブソン的な弾きやすさや豊かな中音域を両立させ、独特のサウンドとプレイアビリティを実現しました。
また、PRSの代名詞とも言えるのが、見る者を惹きつける芸術的なルックスです。
ボディトップに用いられるフィギュアドメイプルの杢目は「10Top」などのグレードで厳しく管理され、まるで工芸品のような気品を放ちます。
指板を優雅に舞うバードインレイも、PRSのアイデンティティとして広く認知されています。
さらに、最高峰のオーダーメイドラインである「Private Stock」から、高いコストパフォーマンスを誇る「SEシリーズ」まで、幅広い価格帯のラインナップを展開していることも大きな魅力です。
予算や用途に応じて、すべてのプレイヤーがPRSの哲学に触れられる機会を提供しています。
このようにPRSは、単なる楽器メーカーではなく、伝統と革新を両立させ、ギタリストの創造性を最大限に引き出すための「美学」を追求し続けるブランドなのです。
ボルトオンが特徴のPRS CEとは?
PRSのラインナップの中で、ひときわる個性的な存在感を放つのが「CEシリーズ」です。
この「CE」という名称は「Classic Electric」の頭文字から取られており、その名の通り、伝統的なエレキギターの構造に敬意を払いつつ、PRS流の解釈を加えたモデルと言えます。
CEシリーズが持つ最大の特徴は、ネックとボディの接合方法に「ボルトオンジョイント」を採用している点です。
これは、ネックをボディにネジで固定する方式で、フェンダー社のストラトキャスターやテレキャスターで伝統的に用いられてきた構造です。
PRSの主力であるCustomシリーズなどが、ネックとボディを接着剤で接合する「セットネック」方式を採用しているのとは対照的です。
このボルトオン構造に加え、ネック材にメイプルを使用していることもCEシリーズのサウンドを決定づける重要な要素です。
これにより、マホガニーネックを採用するセットネックモデルと比較して、より明るく、アタック感が明瞭で、歯切れの良いサウンドキャラクターが生まれます。
CEシリーズは1988年に初めて登場し、一度は生産完了となりましたが、多くのファンの要望に応える形で2016年に復活を遂げました。
ここで重要なのは、CEシリーズは決してCoreモデルの「廉価版」ではないということです。
ボルトオン構造ならではのサウンドとレスポンスを求めるギタリストのために、明確なコンセプトを持って設計された、全く別の魅力を備えたモデルなのです。
ブライトなトーンを活かしたカッティングや、抜けの良いリードサウンドを求めるプレイヤーにとって、CEシリーズはPRSのラインナップにおける非常に魅力的な選択肢となります。
PRS CE24とCustom24の決定的な違い
PRSの購入を検討する際に、最も多く比較対象となるのが「CE 24」と、ブランドの顔とも言える「Custom 24」でしょう。
この2つのモデルは、一見すると同じダブルカッタウェイのボディシェイプで似ているように見えますが、その構造とサウンドには決定的な違いが存在します。
その違いを理解することが、自分に合った一本を選ぶ上で非常に重要になります。
両者の最も大きな違いは、前述の通りネックのジョイント方式とネック材にあります。
この構造的な違いが、サウンドや弾き心地にどう影響するのか、以下の表で具体的に比較してみましょう。
項目 | PRS CE 24 | PRS Custom 24 (Coreモデル) |
ネックジョイント | ボルトオン・ジョイント | セットネック・ジョイント |
ネック材 | メイプル | マホガニー |
ボディトップ形状 | 浅めのアーチ | 深いヴァイオリン・カーブ |
サウンド傾向 | 明るくクリアで歯切れが良い。 レスポンスが速い。 | 暖かく豊かでサスティンが長い。 中低域に厚みがある。 |
得意なジャンル | ファンク、ポップス、ロック、 テクニカルなプレイ | クラシックロック、ブルース、ハードロック、 メロウなリードプレイ |
価格帯 | 比較的安価 | 高価 |
このように、CE 24はメイプルネックとボルトオンジョイントの組み合わせにより、立ち上がりが速く、きらびやかで抜けの良いサウンドが特徴です。
一方、Custom 24はマホガニーのセットネック構造によって、豊かで粘りのあるサスティンと、暖かみのあるファットなサウンドを生み出します。
どちらが優れているということではなく、完全に好みの問題です。
キレのあるカッティングや、エッジの効いたリフを多用するならCE 24が、甘く歌うようなリードトーンや、重厚なバッキングを求めるならCustom 24が、よりその真価を発揮するでしょう。
このサウンドキャラクターの違いこそが、両モデルを隔てる最も本質的な部分なのです。
現行モデルのPRS / CE 24の仕様
現在ラインナップされている「CE 24」は、1988年の登場以来の伝統的なコンセプトをしっかりと受け継ぎながら、現代のプレイヤーが求める実践的なスペックへとアップデートされています。
まさに、クラシックなフィーリングとモダンなプレイアビリティを両立したモデルと言えるでしょう。
現行モデルの主な仕様を見ていくことで、その魅力がより具体的に理解できます。
ボディ構造
ボディトップには美しい杢目を持つメイプル材を、バックには豊かな中音域が特徴のマホガニー材を使用しています。
これはCustom 24と同様の組み合わせですが、CE 24のボディトップのアーチは比較的浅く削られており、これがレスポンスの良さにも繋がっています。
ネック周り
CE 24のアイデンティティであるネックには、硬質でクリアなトーンを生むメイプル材が採用されています。
ネックシェイプは「Pattern Thin」という、薄めでテクニカルなプレイにも対応しやすい形状です。
指板には定番のローズウッドが使われ、バードインレイが施されており、PRSらしさを視覚的にも楽しめます。
スケールはもちろん25インチ、フレット数はモデル名の通り24フレット仕様です。
ハードウェアとエレクトロニクス
ピックアップには、ポール・リード・スミス氏自身が開発に携わった「85/15」が搭載されています。
このピックアップは、ヴィンテージトーンの明瞭さと、モダンなサウンドのパワー感を両立しており、非常に幅広いジャンルに対応可能です。
さらに、トーンノブのプッシュ/プル操作によってコイルタップができるため、ハムバッカーの太いサウンドから、シングルコイルのようなシャープなサウンドまで、瞬時に切り替えることができます。
ブリッジには、スムーズなアーミングと安定したチューニングを両立するPRSオリジナルのパテント・トレモロが搭載されています。
これらの仕様からわかるように、現行のCE 24は単なる復刻モデルではなく、あらゆる音楽シーンで活躍できるポテンシャルを秘めた、非常に完成度の高いギターなのです。
PRS CEとS2・SEシリーズにおける違いを解説

USA製での比較!PRS S2とCEの仕様の違い
PRSのUSA製モデルの中で、CEシリーズとしばしば比較されるのが「S2シリーズ」です。
どちらもCoreモデルよりは手に取りやすい価格帯に位置するため、どちらを選ぶべきか悩む方は少なくありません。
この2つのシリーズは、同じメリーランド州の工場で製造されながらも、その開発コンセプトと製造アプローチが大きく異なります。
結論から言うと、S2シリーズは「製造工程を効率化することでコストを抑えたCoreモデルの遺伝子を持つギター」であり、CEシリーズは「ボルトオンという明確なサウンドコンセプトを持つ独立したモデル」です。
この違いを、より具体的に見ていきましょう。
項目 | PRS S2 Series | PRS CE Series |
コンセプト | Coreモデルの品質を、効率的な生産で実現 | ボルトオン構造による独自のサウンドを追求 |
ボディトップ形状 | ベベル・カーブ(非対称の削り) | 浅めのアーチ |
ネックジョイント | セットネック(スカーフジョイント) | ボルトオン・ジョイント |
ネック材 | マホガニー | メイプル |
パーツ | 一部SEと共通のパーツを使用 | USA製のパーツが中心 |
価格帯 | CEシリーズより安価な傾向 | S2シリーズより高価な傾向 |
S2シリーズの大きな特徴は、製造プロセスにあります。
例えば、ボディトップのカーブを加工しやすい非対称の「ベベル・カーブ」にしたり、ネックを「スカーフジョイント」という方法で接合したりすることで、木材を効率的に使用し、加工時間を短縮しています。
これにより、USA製ながら高いコストパフォーマンスを実現しているのです。
サウンドはマホガニーのセットネック構造が基本となるため、Coreモデルに通じる暖かくファットなキャラクターを持っています。
一方、CEシリーズは前述の通り、サウンドのコンセプトが最優先されています。
メイプルネックのボルトオン構造でしか得られない、ブライトでレスポンスの速いトーンを実現するために設計されています。
したがって、S2とCEは単なる価格の上下関係ではなく、全く異なる個性を持った選択肢です。
Coreモデルのようなサスティン豊かなサウンドを、より身近に感じたいのであればS2シリーズが、PRSラインナップの中で一味違う、キレのあるサウンドを求めるのであればCEシリーズが、それぞれ最適な選択となるでしょう。
PRS SEシリーズの概要と立ち位置
PRSのギターをより多くの人に届けたいという想いから生まれたのが「SEシリーズ」です。
この「SE」は元々「Student Edition(スチューデント・エディション)」の略で、その名の通り、キャリアをスタートさせたばかりの若いギタリストや、初めてPRSを手にするプレイヤーに向けたエントリーラインとして2001年に登場しました。
生産はインドネシア(一部モデルは中国)の提携工場で行われており、これにより劇的なコストダウンを実現しています。
しかし、現在のSEシリーズは、単なる「入門用」や「廉価版」という枠組みを遥かに超える存在へと進化を遂げています。
PRS本社が近年最も力を注いでいるプロダクトの一つと言っても過言ではなく、設計や品質管理にはUSAのチームが深く関与しています。
PRSのスタッフが幾度となく現地のOEM工場を訪れ、USAモデルで培われた製造ノウハウや品質へのこだわりを直接伝承しているのです。
その結果、SEシリーズは価格を大きく超えた品質とサウンド、プレイアビリティを実現し、PRSの主力ラインナップの一つとして確固たる地位を築きました。
また、SEシリーズの魅力はコストパフォーマンスだけではありません。
7弦ギターやバリトンギター、アーティストのシグネチャーモデルなど、USAラインナップには存在しないSE独自のモデルが数多く展開されています。
カラーバリエーションも非常に豊富で、ルックスにこだわりたいギタリストにとっても魅力的な選択肢が揃っています。
このように、SEシリーズは「PRSの哲学を手頃な価格で体感できる、非常にクオリティの高いギター」であり、初心者からプロフェッショナルまで、幅広い層のプレイヤーから絶大な信頼を得ているのです。
価格で迷うならPRS SEで十分?
「USAモデルは魅力的だけど、価格を考えるとSEシリーズで十分なのでは?」これはPRSの購入を検討する多くの人が抱く、最も現実的な悩みかもしれません。
この問いに対する答えは、「目的によるが、多くの場合でSEは素晴らしい選択肢となり得る。ただし、USAモデルにしかない価値も確かに存在する」ということになります。
まず、SEシリーズがどのような場合に「十分」と言えるのかを考えてみましょう。
SEシリーズで十分なケース
- 予算を最優先したい場合: 当然ながら、USAモデルとの価格差は大きな魅力です。浮いた予算をアンプやエフェクターに回すこともできます。
- 初めてのPRSギターとして: まずはPRSの弾きやすさやサウンドの方向性を体感したいという方には、最適な一本です。
- ライブで気軽に使えるサブ機として: 高価なギターをライブで使うのに気後れしてしまう場合、タフに使えるSEは心強い相棒になります。
- カスタマイズのベースとして: ピックアップやペグなどを交換して、自分だけのオリジナル仕様に育てていく楽しみもあります。
SEシリーズの品質は非常に高く、趣味で演奏を楽しむ分には何ら不満を感じることはないでしょう。
では、どのような場合にCEやS2といったUSAモデルを検討する価値があるのでしょうか。
USAモデルを検討すべきケース
- 最高の弾き心地を求める場合: ネックの仕上げやフレット処理の精度は、やはりUSAモデルに一日の長があります。長時間の演奏でもストレスを感じさせない、吸い付くようなプレイアビリティはUSAモデルならではの魅力です。
- チューニングの安定性: USA製の高品質なペグやナット、ブリッジは、よりシビアなチューニングの安定性を実現します。
- 調整の手間: 一般的にUSAモデルは工場出荷時のセッティング精度が高く、購入後に細かな調整を必要としない個体が多い傾向にあります。
- 所有する満足感: 最高の木材と技術で作られた一本を所有するという喜びは、何物にも代えがたい価値があります。
結論として、SEシリーズは価格を考えれば驚異的なクオリティを持ったギターであり、多くのプレイヤーにとって満足のいく選択肢です。
しかし、楽器とのより深い一体感や、細部にわたる完成度、そして所有する誇りを求めるのであれば、少し背伸びをしてでもCEやS2といったUSAモデルに投資する価値は十分にあると言えるでしょう。
PRS SEを使用するアーティストたち
「SEシリーズはエントリーモデル」というイメージは、プロの現場で活躍するアーティストたちが実際にSEを手にしている事実を知ることで、大きく覆されるはずです。
価格帯に関わらず、そのサウンドと信頼性が本物であることの何よりの証明と言えるでしょう。
PRSは世界中の様々なジャンルのアーティストと関係を築いており、その中にはSEシリーズを愛用する、あるいは自身のシグネチャーモデルをSEシリーズからリリースしているアーティストが数多く存在します。
例えば、オルタナティヴ・メタルの重鎮バンド、DeftonesのStephen Carpenterや、CreedやAlter Bridgeで活躍するMark Tremonti、そして日本でも絶大な人気を誇ったラテン・ロックの巨匠、Carlos Santanaといったトップギタリストたちが、自身のこだわりを詰め込んだシグネチャーモデルをSEシリーズで展開しています。
これは、SEシリーズが彼らの厳しい要求に応えうるポテンシャルを持っていることの証左です。
また、PRSが主宰する若手アーティスト支援プログラム「Pulse Artist」に選ばれた、世界中の才能あふれるギタリストたちもSEシリーズを積極的に使用しています。
日本からも毎年多くのアーティストが選出されており、彼らがライブやレコーディングでSEを手に活躍する姿は、このシリーズの信頼性の高さを物語っています。
プロのアーティストがSEシリーズを選ぶ理由は様々です。
ツアー中のサブギターとして、特定のチューニング専用機として、あるいは単純にそのモデルのサウンドやルックスが気に入っているから、といった理由が考えられます。
重要なのは、価格や生産国といった情報だけにとらわれず、多くのプロフェッショナルが「使える楽器」としてSEシリーズを認めているという事実です。
このことは、これからPRSを手にするユーザーにとって、大きな安心材料となるに違いありません。
まとめ:PRS CEの違いを理解し、あなたに最適な一本を選ぼう
- PRSは品質・美観・演奏性を兼ね備えた現代的ギターブランドである
- CEシリーズはメイプルネックのボルトオンジョイントが最大の特徴である
- CEはCustom24と比べブライトで歯切れの良いサウンドを持つ
- Custom24はマホガニーセットネックでウォームなサウンドが特徴である
- S2シリーズは製造工程の効率化でコストを抑えたUSA製モデルである
- CEとS2は同じUSA製でも設計思想やサウンドが異なる
- SEシリーズは高い品質を誇るコストパフォーマンスに優れたラインである
- SEは入門用やサブ機として十分だが、メイン機にはUSAモデルも魅力的である
- 各シリーズは廉価版ではなく、それぞれに明確なコンセプトが存在する
- 最終的には仕様の違いを理解し、試奏して選ぶことが最も重要である