「Rushのような攻撃的でありながら芯のあるベーストーンを出したい」
「ライブでもスタジオでも即戦力になるプリアンプを探している」
——そんな悩みを持つベーシストにとって、TECH21 Sansamp YYZは有力な選択肢となる製品です。
カナダが誇るプログレッシブロックバンドRushのベーシスト、Geddy Leeのシグネチャーモデルとして開発されたこのペダルは、彼の巨大なラックシステムのサウンドをコンパクトな筐体に凝縮しています。
本記事では、実際のユーザーの声や使用感をもとに、サウンドの特徴から操作性、メリット・デメリットまでを徹底的に解説します。
購入を検討している方が本当に知りたい情報を、包み隠さずお伝えします。
TECH21 Sansamp YYZの特徴・概要
Geddy Leeの巨大ラックシステムをペダルサイズに凝縮
TECH21 Sansamp YYZは、Geddy Leeが1996年以降のツアーで使用してきた複雑なラックシステムのエッセンスを、標準的なエフェクターサイズのペダルに収めた製品です。
もともとGeddy Leeは2017年頃からシグネチャーラックユニット「GED-2112」を使用していましたが、YYZはその技術をさらに凝縮し、持ち運びやすさと即戦力性を両立させています。
製品名の「YYZ」は、トロント・ピアソン国際空港の空港コードであり、同時にRushの代表的なインストゥルメンタル楽曲のタイトルでもあります。
1981年のアルバム「Moving Pictures」に収録されたこの楽曲は、Rushファンにとって象徴的な存在であり、製品名にもその精神が込められています。
クリーンとドライブを自在にブレンドできるパラレル信号構造
YYZの最大の特徴は、2つの並列した信号経路を持つ構造にあります。
「Deep」と呼ばれるクリーンチャンネルと、「Drive」と呼ばれるオーバードライブチャンネルが独立して存在し、Mixコントロールによって両者のバランスを自由に調整できます。
この設計により、クリーンな低音域を損なうことなく、中高音域にグリットやオーバードライブを加えることが可能です。
現代のメタルやプログレッシブロックで求められる「低音はタイト、中高音は歪み」というバイアンプ的なサウンドを、1台のペダルで実現できるのです。
Deepチャンネルは基本的にコントロールを持たないピュアなDI信号を提供し、Driveチャンネル側で積極的な音作りを行う設計となっています。
ライブからレコーディングまで対応する汎用性
TECH21 Sansamp YYZは、その使用シーンを選びません。
ライブパフォーマンスでは、パワーアンプとスピーカーを直接駆動したり、既存のアンプセットアップを補強したり、PAミキサーに直接接続したりと、様々な運用が可能です。
レコーディングにおいては、オールアナログ設計による自然なトーンが威力を発揮します。
DAWへの直接録音でも、アンプを通した録音でも、Geddy Lee特有の「温かみがありながらエッジの効いた」サウンドを得ることができます。
多くのユーザーが「常時オン」のペダルとして使用しており、基本的なトーンシェイピングツールとしての信頼性の高さがうかがえます。
TECH21 Sansamp YYZのスペック・仕様
基本スペックと電源仕様
TECH21 Sansamp YYZの基本的な仕様は以下の通りです。
信号処理は完全アナログ方式を採用しており、デジタル処理に伴うレイテンシーが一切発生しません。
これはライブパフォーマンスにおいて特に重要なポイントとなります。
電源は9Vアルカリ電池(別売り)または外部DCパワーサプライ(Tech 21 model DC2、DC4、DC9など)に対応しています。
消費電流は21mAと比較的低く、標準的なペダルボード用パワーサプライで問題なく駆動できます。
筐体は堅牢なオールメタル構造を採用しており、ツアーやライブでのハードな使用にも耐えうる設計となっています。
コントロール・入出力端子の詳細
YYZに搭載されているコントロールは、Drive、Master、3バンドアクティブEQ(Low、Mid、High)、そしてMixノブです。
Driveコントロールはチューブアンプの出力段をプッシュした際のようなゲインとオーバードライブ量を調整します。
3バンドEQは非常に効きが強く、特にMidコントロールは音作りの要となる部分です。
加えて、Tightスイッチが搭載されています。
これをオンにすると、ドライブサウンドから余分な低音をカットし、上位中音域と高音域にスナップを加えます。
クリーンセッティングでは音の輪郭を明確にし、ディストーションセッティングではよりタイトで切れ味のあるサウンドを生み出します。
入出力端子は1/4インチのインプットとアウトプットのみというシンプルな構成です。
XLRバランスアウトは搭載されていない点は、用途によっては注意が必要です。
通常版とShape Shifterバージョンの違い
現在、TECH21 Sansamp YYZには複数のバージョンが存在します。
オリジナルのYYZは現在廃盤となっており、後継モデルとして「YYZ Shape Shifter」が現行版として販売されています。
また、限定版として「MP40」(Moving Picturesのアートワークを施したモデル)も存在しましたが、こちらは入手困難な状況です。
Shape Shifterバージョンの最大の特徴は、名前の由来となった「Shape Shifter」スイッチの追加です。
通常のBoostフットスイッチは12dBのプレゼンスブーストを提供し、高音域のディストーションを増加させます。
Shape Shifterスイッチをオンにすると、さらに6dBの「Schmegilka」と呼ばれる独自のブーストが加わります。
Geddy Lee本人によれば、これは「言葉では定義できない素晴らしさ」を生み出すものだそうです。
価格帯は、通常のYYZが約289カナダドル、Shape Shifterが約349カナダドル、限定版MP40が約389カナダドルとなっています。
米国市場では249ドル前後、英国市場では265ポンド前後で販売されており、ハイエンド/ブティック価格帯に位置づけられます。
TECH21 Sansamp YYZのおすすめポイント
チューブアンプライクな温かみのあるオーバードライブサウンド
TECH21 Sansamp YYZの最大の魅力は、その卓越したチューブアンプシミュレーション品質にあります。
多くのユーザーが「温かく、スムーズ、クリーミー」と表現するそのサウンドは、デジタルシミュレーターでは得られない自然なレスポンスを持っています。
特筆すべきは、オーバードライブ時の音の質感です。
一般的なベース用ファズやディストーションペダルとは一線を画す、真空管アンプ特有の「押し出し感」と「空気感」を再現しています。
Geddy Leeの設定をそのまま適用すると、彼のシグネチャーサウンドが即座に得られ、その再現度の高さに驚くユーザーも少なくありません。
実際の使用感として、安価なエントリーモデルのベースでも、YYZを通すことで高級機のような存在感のあるサウンドを得られるという報告が多数あります。
トーンの底上げ効果は非常に大きく、機材のアップグレードを検討しているベーシストにとっては、ベース本体を買い替える前に試す価値のある選択肢と言えるでしょう。
直感的な操作で多彩なトーンメイクが可能
YYZは、単なるGeddy Leeシグネチャーペダルにとどまらない汎用性を持っています。
付属のマニュアルには、Geddy Leeの個人設定だけでなく、Jack Bruce(Cream)、Tool、Les Claypool、Chris Squire風のトーンなど、複数のプリセット例が記載されています。
各コントロールの効きは非常に敏感で、微調整によって音色が大きく変化します。
これは裏を返せば、望みのトーンを追い込む際の自由度が高いということでもあります。
特にMidコントロールは「秘密のソース」と呼ばれるほど重要で、ここの設定次第でサウンドキャラクターが劇的に変わります。
Rickenbacker風のトーンを再現できる点も見逃せません。
実機のRickenbackerは数十万円の投資が必要ですが、YYZの設定とJazz Bassのブリッジピックアップを調整することで、近いニュアンスを得ることが可能です。
コストパフォーマンスの観点からも優れた選択肢と言えます。
コンパクトながらプロクオリティのDI機能を搭載
ライブパフォーマンスにおいて、YYZの柔軟性は大きなアドバンテージとなります。
PAシステムへの直接接続が可能なため、アンプなしでのステージ運用も現実的な選択肢となります。
実際、Geddy Lee自身が1996年以降アンプとキャビネットを持ち込まないツアースタイルを採用しており、その先見性が現代のDI中心のサウンドメイキングにつながっています。
オールアナログ設計によるゼロレイテンシーは、リアルタイムパフォーマンスにおいて決定的な優位性をもたらします。
デジタルモデリングペダルで時折問題となる微小な遅延が一切なく、演奏の自然なフィーリングを損なうことがありません。
また、DIボックスとしてだけでなく、既存のアンプのフロントに接続してブースターとして使用することも可能です。
トランジスタアンプをチューブアンプのような温かみのあるサウンドに変貌させる能力は、多くのユーザーから高く評価されています。
TECH21 Sansamp YYZの注意点・デメリット
XLR出力非搭載による接続の制約
TECH21 Sansamp YYZの最も大きな制約は、XLRバランス出力を搭載していない点です。
プロフェッショナルなライブサウンド環境やレコーディングスタジオでは、XLR接続が標準となっている場合が多く、1/4インチアウトプットのみという仕様は不便を感じる場面があるかもしれません。
より包括的なI/O構成を求めるユーザーには、上位モデルのGED-2112ラックユニットや、同社のBass Driver DIシリーズが選択肢となります。
Bass Driver DIはより多くの入出力オプションを備えており、汎用性という点では優位性があります。
ただし、YYZはGeddy Lee特有のトーン再現という点では唯一無二の存在であり、この点とのトレードオフを理解した上での選択が必要です。
価格帯と費用対効果の検討ポイント
YYZは、ベース用エフェクターとしては高価格帯に位置する製品です。
約250〜400ドルという価格は、エントリーレベルのベース本体が購入できる金額であり、初心者にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。
しかしながら、35年以上のベース演奏経験を持つユーザーが「これまでで最高のトーン」と評価するなど、その音質に見合った価値を認める声は非常に多いです。
特に、複数のエフェクターを組み合わせて同様のサウンドを構築することを考えると、YYZ1台で完結できる効率性は魅力的です。
長期的な視点で見れば、決して高すぎる投資ではないと言えるでしょう。
一部報告されている信頼性に関する懸念
Shape Shifterバージョンにおいて、一部のユーザーから信頼性に関する問題が報告されています。
具体的には、Mixノブを「Deep」側に回した際に信号が途切れるという不具合です。
この問題はライブ演奏中に発生する可能性があり、プロフェッショナルな現場では致命的となりかねません。
ただし、これは全てのユニットに共通する問題ではなく、個体差や使用環境による可能性もあります。
TECH21は一般的に堅牢な製品づくりで知られており、同社の他製品(GT-2など)は長年のハードな使用にも耐えてきた実績があります。
万が一問題が発生した場合は、メーカーサポートへの連絡を推奨します。
購入前には、可能であれば店頭での試奏や、返品・交換ポリシーの確認をおすすめします。
特にオンライン購入の場合は、販売店の保証内容を事前に確認しておくと安心です。
TECH21 Sansamp YYZの評判・口コミ
ユーザーが評価するおすすめな点
多くのユーザーから最も高く評価されているのは、やはりそのサウンドクオリティです。
「プラグインして即座にGeddy Leeのトーンが得られた時は笑ってしまった」「チューブエミュレーションの質がこれまで経験した中で最高」といった声が多数寄せられています。
「常時オン」ペダルとして使用しているユーザーが非常に多い点も特徴的です。
ロックカバーバンドで全ステージを通して使用する、スタジオワークで基本トーンとして常に通す、といった使い方が一般的です。
これは、YYZがサウンドを「変える」のではなく「強化する」タイプのペダルであることを示しています。
汎用性の高さも好評です。
Rushファン向けの製品というイメージがありますが、実際にはポップスからデスメタルまで幅広いジャンルで活躍できます。
Jack BruceやLes Claypoolのようなトーンを求めるユーザーからも支持を得ており、「一芸に秀でた製品」ではなく「多芸な万能選手」という評価が定着しています。
コストパフォーマンスについても、価格の高さを認めつつも「投資に見合う価値がある」「複数のペダルを買い漁った末にたどり着いた答え」という声が多いです。
特に、安価なベースの音質を劇的に向上させる効果は、多くのユーザーを驚かせています。
購入前に確認すべき注意点
一方で、購入前に把握しておくべき点もいくつか指摘されています。
XLR出力がないことについては、「DIペダルとしては物足りない」「より包括的な機能を持つBass Driver DIの方が汎用性が高い」という意見があります。
ノブの敏感さについては、好意的に捉えるユーザーと、やや使いにくいと感じるユーザーに分かれます。
微調整で音色が大きく変わるため、慣れるまでは戸惑う可能性があります。
一度設定を決めたら動かさない、という使い方をするユーザーも多いようです。
Shape Shifterバージョンの信頼性問題については、「トーンは最高だが信頼性に疑問が残る」「泣く泣く手放すことにした」という残念な報告も見られます。
ライブでの使用を前提とするプロフェッショナルには、この点は重要な検討事項となるでしょう。
Rushファン以外からの評価と活用事例
興味深いのは、必ずしもRushファンではないユーザーからも高い評価を得ている点です。
「Geddy Leeの音楽は聴かないが、このペダルのサウンドは素晴らしい」「Tool風のトーンを求めて購入したが期待以上だった」といった声が示すように、YYZは特定のアーティストのファンアイテムを超えた普遍的な価値を持っています。
具体的な活用事例としては、Traynor SB112コンボアンプと組み合わせてオーバードライブチューブアンプのようなサウンドを実現する、Ampeg Heritage 410キャビネットとYorkville XS800ヘッドと組み合わせて大音量環境でのグリットを得る、といった使い方が報告されています。
また、MXR Green RussianやDarkglass製品など他のベース用オーバードライブ/ディストーションペダルとの比較において、YYZは「チューブディストーションを思わせる独特の質感がある」「他のペダルとは明らかに異なる種類の歪み」と評価されています。
競合製品との差別化ポイントとして、この「チューブライクな温かみ」は重要な要素です。
まとめ:TECH21 Sansamp YYZ
総合評価とおすすめできるユーザー像
TECH21 Sansamp YYZは、Geddy Leeのシグネチャートーンを忠実に再現しつつ、幅広い音楽ジャンルに対応できる汎用性を備えた優れたベース用プリアンプ/DIペダルです。
オールアナログ設計による自然なレスポンス、パラレル信号構造による柔軟なトーンメイキング、そしてプロフェッショナルクオリティのサウンドは、価格に見合った価値を提供しています。
このペダルは、以下のようなベーシストに特におすすめです。
RushやGeddy Leeのサウンドに憧れているプレイヤー、チューブアンプライクな温かみのあるオーバードライブを求めている方、ライブでもスタジオでも使える万能なプリアンプを探している方、そして現在の機材のサウンドを一段階上のレベルに引き上げたいと考えている方です。
一方で、XLR出力が必須の方、予算が限られている方、または絶対的な信頼性を最優先するプロフェッショナルには、他の選択肢も検討する価値があるかもしれません。
購入判断のための最終チェックポイント
- Geddy Leeのシグネチャートーンを驚異的な精度で再現可能
- クリーンとドライブのパラレル構造により、低音を損なわずにグリットを追加できる
- オールアナログ設計でレイテンシーゼロ、自然なレスポンスを実現
- 3バンドアクティブEQとTightスイッチで幅広いトーンメイキングが可能
- ライブ、スタジオ、練習とあらゆるシーンで活躍する汎用性
- 安価なベースでも高級機のようなサウンドを引き出す底上げ効果
- XLR出力非搭載のため、接続環境によっては制約がある
- 価格はハイエンド帯(249〜389ドル程度)だが、品質に見合った投資
- Shape Shifterバージョンでは一部信頼性の報告があるため、購入時は保証確認を推奨
- 総合評価は5点満点中4.9点と非常に高く、多くのユーザーが「最高のトーン」と絶賛

