ギターの音作りにおいて、アンプやキャビネットの選択は非常に重要です。
しかし、自宅での練習やレコーディングで大音量のアンプを鳴らすのは難しい、ライブでマイキングの手間を省きたい、そんな悩みを抱えているギタリストは多いのではないでしょうか。
NUX Solid Studio NSS-5は、パワーアンプ、キャビネット、マイクのシミュレーションをコンパクトなペダルサイズに凝縮した製品です。
この記事では、実際の使用感や評判を徹底的に調査し、本製品の特長から注意点まで詳しく解説します。
購入を検討している方が知りたい情報を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
NUX Solid Studio NSS-5とは?製品概要と基本情報
NUX Solid Studio NSS-5は、中国のエフェクターブランドNUXが2018年に発売したIR(インパルスレスポンス)ローダー兼パワーアンプシミュレーターです。
「Verdugoシリーズ」と呼ばれる同社の上位ラインナップに属しており、プロユースにも耐えうる品質を備えています。
本製品の最大の特徴は、キャビネットシミュレーションだけでなく、パワーアンプの真空管シミュレーションまで搭載している点です。
これにより、プリアンプペダルやディストーションペダルの後段に接続するだけで、実際のアンプを通したかのようなリアルなサウンドを得ることができます。
ペダルボードに組み込めるコンパクトサイズながら、8種類のキャビネット、8種類のマイク、3種類のパワーチューブという豊富な組み合わせを実現。
さらにXLRバランス出力を標準装備しているため、ライブハウスのPAに直接接続することも可能です。
NUX Solid Studio NSS-5の特長と差別化ポイント
業界最高クラスの高解像度IRを内蔵
NUX Solid Studio NSS-5は、32bit/88.2kHzという高いサンプリング精度を採用しています。
IR解像度は2048サンプル/46msで、低域を含むすべての周波数帯域をリアルに再現することを目的として設計されています。
この高解像度により、ピッキングのニュアンスや弦の振動がそのまま音に反映され、デジタル特有の硬さや違和感を感じにくい自然なサウンドを実現しています。
パワーアンプシミュレーションの搭載
単なるキャビネットシミュレーターとは一線を画す特徴が、パワーアンプシミュレーションの搭載です。
EL34、6V6、EL84という3種類の代表的なパワーチューブをモデリングしており、真空管アンプ特有の太さや暖かみ、コンプレッション感を再現します。
パワーアンプセクションにはMASTER(出力レベル)、DRIVE(入力レベル)、PRESENCE(高域調整)の3つのコントロールを装備。
これらを調整することで、クリーンからクランチ、さらにはパワーアンプ段でのサチュレーションまで、幅広いサウンドメイクが可能です。
IRキャプチャー機能を搭載
競合製品の多くがIRのロードのみに対応している中、本製品は自分でIRをキャプチャーする機能を備えています。
お気に入りのアンプとキャビネットの組み合わせにマイクをセットし、そのサウンドをIRファイルとして保存することができます。
通常、この機能は高価な機材やソフトウェアでしか実現できないため、この価格帯で提供されているのは大きなアドバンテージです。
XLRバランス出力を標準装備
ライブやレコーディングで重宝するXLRバランス出力を搭載しています。
別途DIボックスを用意する必要がなく、そのままミキサーやオーディオインターフェースに接続できます。
また、ステレオTRS出力も備えており、ヘッドフォンでのモニタリングや、ステレオエフェクトを後段に接続する用途にも対応しています。
スペック・仕様一覧
基本スペック
本製品の主要なスペックを以下にまとめます。
サンプリング周波数88.2kHz、量子化ビット数32bit、内部信号処理32bitという高い処理能力を備えています。
周波数特性は20Hz〜20kHz(±0.5dB)で、可聴域全体をカバー。
ノイズレベルは-100dB(A特性)、ダイナミックレンジは100dBと、スタジオ機材としても十分な性能です。
レイテンシーはバイパス時0.7ms、エフェクト使用時でも1.9msと非常に低く抑えられており、演奏時に遅延を感じることはほとんどありません。
入出力端子
入力端子は1/4インチTSで、入力レベルスイッチにより-10dB/+4dBの切り替えが可能です。
出力は3系統を装備しており、シミュレート済みのステレオ出力(1/4インチTRS、ヘッドフォン兼用)、XLRバランスDI出力、そしてバイパス用のTHRU出力があります。
THRU出力にはLine/Speakerの切り替えスイッチが付いており、接続先に応じた最適なレベルで出力できます。
Micro USB端子も搭載しており、ファームウェアのアップデートやサードパーティIRのロードに使用します。
サイズ・電源
外形寸法は105mm(奥行)×115mm(幅)×58mm(高さ)で、一般的なコンパクトエフェクターより若干大きい程度です。
重量は428gで、ペダルボードへの組み込みも容易です。
電源は9V DCセンターマイナスで、消費電流は240mA以上(500mA推奨)です。
一般的なペダルボード用パワーサプライで駆動可能ですが、電池での駆動には対応していません。
なお、ACアダプターは別売となっています。
シミュレーション内容
キャビネットは8種類を内蔵しています。
Roland Jazz Chorus 120、Fender Deluxe Reverb 1×12、Fender Bassman 4×10、VOX AC30 2×12、Fender Twin Reverb 2×12、Marshall 1960A 4×12、Celestion Greenback 4×12、Celestion Vintage30 4×12という、定番モデルを網羅したラインナップです。
マイクも8種類を用意。
Sennheiser MD421、Shure SM57、Neumann U87、Royer R-122、Royer R-121、AKG C414、AKG C3000、Shure Beta52と、ダイナミックマイクからコンデンサーマイク、リボンマイクまで幅広く揃っています。
マイクポジションはCENTER、MID、EDGEの3種類から選択可能。
これらの組み合わせにより、192通り(8キャビ×8マイク×3ポジション)のバリエーションが内蔵されています。
NUX Solid Studio NSS-5のおすすめポイント
ペダルボード電源で駆動できる利便性
本製品の大きなメリットの一つが、9V DCという一般的なエフェクター用電源で動作する点です。
競合製品の中には12Vや専用アダプターを必要とするものもありますが、NSS-5は既存のペダルボード用パワーサプライから給電できます。
これにより、ペダルボード全体の電源管理がシンプルになり、ライブ時の機材トラブルのリスクも軽減されます。
直感的な操作性
すべての設定がツマミとスイッチで行えるため、PCを接続しなくても音作りが完結します。
ライブ中でも瞬時にキャビネットやマイクを切り替えられるのは、実用面で大きなアドバンテージです。
メニュー階層を潜る必要がないため、機材に詳しくない方でも迷わず操作できます。
プリアンプペダルとの相性の良さ
パワーアンプシミュレーションを搭載しているため、真空管プリアンプペダルやディストーションペダルとの組み合わせで真価を発揮します。
ペダル単体では薄く感じられるサウンドに、アンプを通したような立体感と存在感が加わります。
特にEL34とEL34のシミュレーションは使いやすいと評価されており、様々なジャンルに対応できます。
圧倒的なコストパフォーマンス
同等の機能を持つ競合製品と比較して、半額から3分の1程度の価格で購入できます。
国内では22,000円〜30,000円程度で販売されており、Strymon Iridium(約5万円)やTwo Notes Torpedo CAB M(約4万円)と比べると非常にリーズナブルです。
この価格でXLR出力、パワーアンプシミュレーション、IRキャプチャー機能まで揃っている製品は他にありません。
サードパーティIRへの対応
内蔵IRだけでなく、OwnhammerやCelestionなど、サードパーティ製のIRファイルをロードして使用できます。
好みのサウンドが見つからない場合でも、膨大な選択肢の中から理想のトーンを追求することが可能です。
無料で配布されている高品質なIRも多数存在するため、追加投資なしでもサウンドの幅を広げられます。
購入前に知っておくべき注意点
ヘッドフォン出力が小さい
多くのユーザーが指摘している点として、ヘッドフォン出力の音量が小さいという問題があります。
インピーダンスの高いヘッドフォンを使用する場合、十分な音量が得られない可能性があります。
この場合、小型ミキサーやヘッドフォンアンプを別途用意するか、オーディオインターフェースを経由してモニタリングすることをお勧めします。
なお、この問題は競合製品(Strymon Iridium、Walrus Audio ACS1など)にも共通して見られます。
ACアダプターは別売
製品にACアダプターは付属していません。
購入時には別途用意するか、アダプター付きのセット商品を選ぶ必要があります。
9V DCセンターマイナスという一般的な規格ですので、BOSSのPSA-100など、多くの市販品が使用可能です。
ストックIRの音質に好みが分かれる
内蔵されているIRについては、「やや鼻にかかったような薄い音」と感じるユーザーもいます。
これはディストーションペダルを直接接続する使い方を想定した音作りのためと思われますが、プリアンプペダルと組み合わせる場合には物足りなく感じることがあるかもしれません。
ただし、この点はファームウェアのアップデートやサードパーティIRのロードで解決できます。
大出力アンプとの接続時にノイズが発生する場合がある
100Wクラスのヘッドアンプと接続した際に、ノイズが発生したという報告があります。
30W程度のアンプでは問題なかったとのことですので、大出力アンプでの使用を検討している方は注意が必要です。
ロード機能は非搭載
THRU出力を使用してアンプヘッドのスピーカーアウトから接続する場合、本製品にはダミーロード機能がありません。
必ずスピーカーキャビネットまたは別途ダミーロードを接続した状態で使用してください。
パワーチューブ間で音量差がある
EL34、6V6、EL84の切り替え時に、それぞれ音量が異なります。
実機の特性を再現した結果ですが、ライブ中の切り替えには注意が必要です。
音量を揃えた方が使いやすかったという意見もあります。
評判・口コミまとめ
ユーザーが評価するおすすめな点
サウンド面では、「音の膜が取れたようなクリアな響き」「ピッキングへの反応が良く音の立ち上がりが優秀」という評価が多く見られます。
特にパワーアンプシミュレーションについては、「真空管アンプを通したような自然なサウンド」「オーバードライブとの相性が抜群」と高く評価されています。
操作性に関しては、「PCに接続せずにツマミだけで全設定ができて便利」「メニューが不要で直感的」という声が多数です。
また、「マイクの特性がバリエーション豊かで、好みのセッティングがすぐに見つかる」という意見もあります。
コストパフォーマンスについては、「この価格帯では最強」「3倍の価格の製品より満足度が高い」と絶賛する声が目立ちます。
XLR出力やIRキャプチャー機能まで含めてこの価格は、多くのユーザーにとって驚きだったようです。
ビルドクオリティに関しても、「トラックのように頑丈」「ノブやスイッチの質感が良い」と、筐体の堅牢さを評価する声があります。
購入前に確認すべき注意点
最も多く指摘されているのが、ヘッドフォン出力の音量不足です。
自宅練習用として期待していたユーザーからは、「音量が小さすぎてミキサーが必要になった」という声があります。
ストックIRの音質については、「そのままだとやや薄い」「EQ調整が必要」という意見があります。
ただし、「サードパーティIRをロードしたら一気に化けた」という報告も多く、カスタマイズ前提で考えれば問題にはならないようです。
一部のユーザーからは、パワーアンプセクションをONにするとわずかにリバーブ感が加わるという指摘もあります。
また、低音域のロールオフを感じるユーザーもおり、4×12キャビネットのような重厚な低音を求める場合は、サードパーティIRの使用を検討した方が良いかもしれません。
初期不良については、ごくわずかですが「数日で動作しなくなった」という報告があります。
購入時は保証内容を確認し、可能であれば国内正規代理店(荒井貿易/Aria Guitars)を通じた製品を選ぶことをお勧めします。
競合製品との比較
Mooer Radarとの比較
同価格帯の競合製品として最もよく比較されるのがMooer Radarです。
両製品ともIRローダーとパワーアンプシミュレーションを搭載していますが、いくつかの違いがあります。
NUX Solid Studioの優位点は、XLR DI出力を標準装備している点、内蔵IRの品質が高いと評価されている点、そしてIRキャプチャー機能を搭載している点です。
Mooer Radarは同じサードパーティIRをロードしても音が異なり、やや濁る傾向があるという報告があります。
一方、Mooer Radarは本製品よりもやや安価で、出力ブーストが大きいという特徴があります。
予算重視の場合はRadar、機能と音質を重視する場合はSolid Studioという選択になるでしょう。
Strymon Iridiumとの比較
上位価格帯の製品としてStrymon Iridiumがあります。
価格は本製品の約2〜3倍ですが、「箱から出してすぐに良い音が出る」という点では高く評価されています。
アンプモデルは3種類(Fender Deluxe Reverb系、VOX AC30系、Marshall Plexi系)に限定されていますが、それぞれの完成度は非常に高いです。
NUX Solid Studioはより多くのカスタマイズオプションとサードパーティIRへの対応力で勝りますが、調整に時間をかけたくない方や、特定のアンプサウンドを忠実に再現したい方にはIridiumが向いています。
Two Notes Torpedo CAB Mとの比較
Two Notes Torpedo CAB Mは、さらに高機能なキャビネットシミュレーターです。
価格は本製品の2倍以上ですが、より多くのパラメーターを調整でき、専用ソフトウェアとの連携も充実しています。
コストパフォーマンスを重視するならNUX Solid Studio、機能性と拡張性を最優先するならTorpedo CAB Mという住み分けになります。
こんな人におすすめ
本製品は以下のような方に特におすすめです。
アンプレスでライブやレコーディングを行いたいギタリストには最適な選択肢です。
XLR出力でPAに直結でき、パワーアンプシミュレーションにより真空管アンプのような存在感あるサウンドが得られます。
自宅でヘッドフォン練習をしたい方にも向いていますが、ヘッドフォン出力が小さい点には注意が必要です。
オーディオインターフェースやミキサーを経由する環境があれば問題ありません。
プリアンプペダルやディストーションペダルを既に持っている方は、本製品を追加することでそれらのポテンシャルを最大限に引き出せます。
特に真空管プリアンプペダルとの相性は抜群です。
コストパフォーマンスを重視する方にとって、これほど機能が充実した製品がこの価格で購入できることは大きなメリットです。
上位機種に引けを取らないサウンドクオリティを、半額以下で手に入れることができます。
IRの世界を探求したい方にも最適です。
サードパーティIRのロードはもちろん、自分でIRをキャプチャーする機能まで備えているため、サウンドの可能性は無限に広がります。
まとめ
NUX Solid Studio NSS-5について、重要なポイントを以下にまとめます。
- パワーアンプ、キャビネット、マイクを1台でシミュレートできる多機能ペダル
- 32bit/88.2kHzの高解像度処理で自然なサウンドを実現
- 8キャビ×8マイク×3ポジション×3パワーチューブの豊富な組み合わせ
- XLRバランス出力を標準装備し、DIボックス不要でPAに直結可能
- IRキャプチャー機能により、オリジナルのIRファイルを作成できる
- 9V DC駆動で既存のペダルボード電源から給電可能
- サードパーティIRをロードして音の幅をさらに広げられる
- ヘッドフォン出力が小さいため、別途アンプやミキサーが必要な場合あり
- ACアダプターは別売のため、購入時に注意が必要
- 国内価格22,000円〜30,000円程度で、同等機能の競合製品の半額以下
圧倒的なコストパフォーマンスと豊富な機能を両立した、アンプレスギタリストの強い味方です。
ヘッドフォン出力の小ささやストックIRの好みの分かれる点はありますが、価格を考慮すれば十分に納得できるレベルです。
プリアンプペダルやディストーションペダルをすでに持っている方が、次のステップとしてアンプレス環境を構築するのに最適な一台と言えるでしょう。

