アコースティックギターをライブやレコーディングで使う際、「PA直結で良い音が出ない」「機材が多すぎて持ち運びが大変」「エフェクターを揃えると高額になる」といった悩みを抱えていませんか。
本記事では、これらの問題を一台で解決すると話題のTECH21 ACOUSTIC FLY RIGについて、実際の使用感からスペック、メリット・デメリット、ユーザー評価まで徹底的に解説します。
購入を検討している方が後悔しない選択ができるよう、良い点も悪い点も正直にお伝えします。
TECH21 ACOUSTIC FLY RIGとは
TECH21 ACOUSTIC FLY RIGは、アメリカのTech 21社が開発したアコースティックギター用マルチエフェクター/プリアンプです。
1989年に登場し業界標準となったSansAmpの技術を核に、アコースティックギタリストが必要とする機能をコンパクトな筐体に凝縮しています。
本製品の最大の特徴は「これ一台とギターがあれば、どんな現場でも対応できる」という設計思想です。
プリアンプ、コンプレッサー、ブースト、リバーブ、ディレイ/コーラス、チューナー、DI機能がすべて搭載されており、小規模なカフェライブからフェスティバルのステージまで幅広いシーンで活躍します。
重量わずか約600g、長さ約32cmというコンパクトさでギグバッグのポケットに収まるサイズ感も魅力です。
「フライデート(飛行機移動を伴うライブ)」でも荷物を最小限に抑えられることから、Fly Rigという名前が付けられています。
製品の特長と差別化ポイント
100%アナログのSansAmpプリアンプ
ACOUSTIC FLY RIGの心臓部となるのが、Tech 21の代名詞であるSansAmpプリアンプセクションです。
完全アナログ回路によるチューブアンプエミュレーション技術を採用しており、デジタル特有の冷たさがない、温かみのあるサウンドを生み出します。
このプリアンプには内蔵スピーカー/キャビネットシミュレーションが組み込まれており、プリアンプからパワーアンプ、スピーカーまでの信号チェーン全体をエミュレートします。
これにより、PA直結でも単なるDIとは一線を画す、立体感のあるサウンドが得られます。
強力なトーンシェイピング機能
EQセクションは3バンド構成(Low/Mid/High)に加え、ミッドの周波数帯域を可変できるセミパラメトリック方式を採用しています。
さらに、70Hz〜350Hzの範囲で調整可能なノッチフィルターと、1.5kHz〜16kHzをカバーするローパスフィルターを搭載。
ピエゾピックアップ特有の硬質なサウンドや、低域のハウリングといった問題を効果的に解決できます。
FETベースのアナログコンプレッサー
コンプレッサーセクションは、オールドスクールなFET回路を採用しています。
デジタルコンプレッサーと比較して、より温かみがあり透明感のある圧縮感が特徴です。
過度にサウンドを潰すことなく、ダイナミクスを自然にコントロールできるため、アコースティックギターの繊細な表現を損ないません。
独立したリバーブとディレイ/コーラス
多くの競合製品がリバーブとディレイの択一式であるのに対し、ACOUSTIC FLY RIGはリバーブを独立させています。
これにより、リバーブをかけながらディレイを使用することが可能です。
ディレイはテープエコー風のウォームなサウンドで、タップテンポにも対応。
コーラスは12弦ギターのようなシマー感のあるサウンドを生み出します。
プロ仕様の入出力
XLRバランス出力(グランドリフト付き)を搭載しているため、ミキサーやPAシステムへの接続が容易です。
1/4インチ出力はアンプへの接続やヘッドフォン出力としても使用でき、自宅練習からステージまであらゆるシーンに対応します。
スペック・仕様
本体仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| サイズ | 318mm(L)× 64mm(W)× 32mm(H) |
| 重量 | 587g(約20.7oz) |
| 筐体素材 | オールメタル(アルミニウム) |
| 製造国 | アメリカ(Made in USA) |
| フットスイッチ | 5個(メタル製、サイレントスイッチング) |
電源仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 付属電源 | 9V DC ユニバーサルアダプター(Model #DC9) |
| 対応電圧 | 100V〜240V 自動切替 |
| 消費電流 | 150mA〜200mA |
| 対応電圧範囲 | 9V〜12V DC |
| バッテリー駆動 | 非対応 |
| ファンタム電源 | 非対応 |
入出力端子
| 端子 | 仕様 |
|---|---|
| 入力 | 1/4インチ(6.35mm)、入力インピーダンス 1MΩ |
| 出力1 | 1/4インチ(6.35mm)ローインピーダンス |
| 出力2 | XLRバランス出力(グランドリフトスイッチ付き) |
| ヘッドフォン | 1/4インチ出力と兼用(切替ボタン付き) |
各セクション機能
| セクション | 機能・コントロール |
|---|---|
| COMP | FETアナログコンプレッサー、Level/Compノブ、Phase Flipスイッチ |
| BOOST | 最大+12dBブースト、ワイドミッドレンジブースト |
| SANSAMP | 3バンドEQ、セミパラメトリックMid、Notchフィルター(70-350Hz)、LPF(1.5-16kHz) |
| REVERB | Small Room/Large Hall切替、レベルコントロール |
| DLA/CHR | ディレイ(Time/Repeats)またはコーラス(切替式)、タップテンポ |
| TUNER | クロマチックチューナー、ミュート機能 |
おすすめな点
ギグバッグに収まるオールインワン設計
プリアンプ、コンプレッサー、ブースト、リバーブ、ディレイ/コーラス、チューナー、DIという7つの機能を一台に集約しながら、重量わずか約600g、長さ約32cmというコンパクトさを実現しています。
これらの機能を個別のペダルで揃えようとすると、重量も価格も数倍に膨れ上がります。
飛行機移動を伴うライブや、機材を最小限に抑えたいギタリストにとって、この携帯性は大きなアドバンテージです。
どんな環境でも安定したサウンドを実現
ライブ会場のPAシステムは千差万別で、優秀なエンジニアがいる保証もありません。
ACOUSTIC FLY RIGがあれば、自分で音作りを完結させた状態でミキサーに送ることができます。
ノッチフィルターやローパスフィルター、位相反転スイッチといったフィードバック対策機能も充実しているため、初めての会場でも安心してパフォーマンスに集中できます。
XLR出力でプロ仕様の接続性
グランドリフト付きのXLRバランス出力を搭載しているため、別途DIボックスを用意する必要がありません。
長いケーブルを使用しても信号劣化が少なく、ノイズに強い接続が可能です。
レコーディングスタジオでオーディオインターフェースに直接接続する場合にも重宝します。
アコースティック以外にも対応
製品名に「Acoustic」と付いていますが、クリーントーンを求めるエレキギターやベースにも効果的に使用できます。
ジャズ、カントリー、ブルースなど、クリーンで温かみのあるサウンドを必要とするジャンルで幅広く活用できる汎用性の高さが魅力です。
ヘッドフォン出力で自宅練習にも最適
1/4インチ出力をヘッドフォンモードに切り替えることで、深夜でも周囲を気にせず練習できます。
リバーブやディレイをかけた状態で練習できるため、実際のライブ環境に近いサウンドで演奏感覚を養えます。
注意点
電源アダプター必須でバッテリー駆動不可
ACOUSTIC FLY RIGは付属の9V DCアダプターでの駆動のみに対応しており、バッテリーやファンタム電源では動作しません。
屋外でのストリートライブなど、電源確保が難しい環境では使用できない点に注意が必要です。
ただし、9V DC出力に対応したモバイルバッテリーを使用すれば、この制限を回避することは可能です。
コーラスとディレイは同時使用不可
EFXセクションのディレイとコーラスは切り替え式のため、両方を同時に使用することはできません。
コーラスをかけながらディレイも欲しいという場合は、別途ペダルを追加する必要があります。
ただし、リバーブは独立しているため、リバーブ+ディレイまたはリバーブ+コーラスの組み合わせは可能です。
小さなノブとボタンの操作性
コンパクトな筐体に多くの機能を詰め込んでいるため、ノブやボタンが小さく、暗いステージでは視認性に難があります。
特にリバーブの切り替えやヘッドフォンモードの小さなプッシュボタンは、フットスイッチ操作時に誤って押してしまうリスクがあります。
事前にセッティングを決めて臨むか、配置を体で覚えておく必要があります。
フットスイッチの間隔が狭い
5つのフットスイッチがコンパクトな筐体に配置されているため、間隔が狭くなっています。
大きめの靴を履いている場合、隣のスイッチを同時に踏んでしまう可能性があります。
細かいフットワークが求められる点は、購入前に認識しておくべきでしょう。
ノブの感度が高い
各ノブは少しの調整で大きく音が変化する高感度設計です。
特にコンプレッサーのノブは感度が非常に高く、上げすぎると効果が強くなりすぎる傾向があります。
微調整が必要なため、最初は時間をかけて自分好みのセッティングを見つける必要があります。
日本国内での流通が限定的
日本では正規販売ルートが限られており、並行輸入品として販売されているケースが多いです。
価格も店舗によって36,500円〜61,110円と幅があり、保証やサポート体制も販売店によって異なります。
購入前に付属品(特に電源アダプター)の有無と保証内容を確認することをおすすめします。
評判・口コミ
ユーザーが評価するおすすめな点
音質に関する評価として、SansAmpプリアンプによる温かみのあるサウンドが高く評価されています。
「200ドルのギターも2000ドルのギターも、より大きく、フルに、温かく鳴らしてくれる」という声が多く、ギターの価格帯を問わず効果を実感できるようです。
ピエゾピックアップ特有の硬質なサウンドが改善されるという報告も多数見られます。
携帯性と利便性については、「ギグバッグに入れて持ち運べる」「飛行機移動でもこれ一台で済む」といった声が目立ちます。
複数のペダルを一台に集約できたことで、セットアップ時間の短縮とトラブルリスクの低減を実感しているユーザーが多いです。
コストパフォーマンスに関しては、「個別にペダルを揃えるより圧倒的に経済的」「この機能でこの価格は適正」という評価が一般的です。
特に、XLR出力やヘッドフォン出力まで備えている点が、追加機材不要で済むと好評です。
操作のシンプルさも評価ポイントです。
「5〜10分で使い方を把握できた」「直感的に操作できる」という声が多く、複雑なデジタルマルチエフェクターと比較して学習コストが低い点が支持されています。
購入前に確認すべき注意点
コンプレッサーの効き具合については意見が分かれています。
「控えめな設定でも効果が強い」「最小設定でないと効きすぎる」という声がある一方、「温かみがあって自然」と評価するユーザーもいます。
ギターとの相性や好みによって印象が異なるため、可能であれば試奏をおすすめします。
プリアンプセクションの評価も賛否両論です。
「ギターによってはSansAmpをオフにした方が良い音になる」という報告があり、すべてのギターで効果的とは限らない点は認識しておくべきでしょう。
内蔵プリアンプ付きのギターとの併用では、設定の追い込みが必要になる場合があります。
操作ミスのリスクとして、小さなプッシュボタンがフットスイッチ操作時に誤って押されやすいという指摘があります。
特にヘッドフォンボタンを誤って押すと音量が急変するため、ライブ中の事故につながる可能性があります。
ボタンの配置を事前に把握し、慎重な操作を心がける必要があります。
ブースト機能の特性について、「ミッドブーストが加わるのが気に入らない」という意見も見られます。
純粋な音量アップではなく、ミッドレンジを強調する設計のため、好みが分かれるポイントです。
ソロ時の抜けを重視した設計と理解しておくと良いでしょう。
コーラスの調整幅に関しては、「プリセット固定で調整できない」という点を不満に感じるユーザーもいます。
派手なモジュレーション効果を求める場合は、別途ペダルの追加を検討する必要があります。
競合製品との比較
Fishman ToneDEQとの比較
Fishman ToneDEQは同価格帯の競合製品として最もよく比較されます。
ToneDEQは4バンドEQを搭載しEQ性能に優れる一方、ACOUSTIC FLY RIGはセミパラメトリックMidとフィルター類でより細かいトーンシェイピングが可能です。
また、ToneDEQはリバーブとディレイが択一式ですが、ACOUSTIC FLY RIGはリバーブが独立しているため、両方を同時に使用できる優位性があります。
サイズ面ではACOUSTIC FLY RIGの方がコンパクトで、ペダルボードへの組み込みやすさで勝ります。
Trace Elliot Transit Aとの比較
Trace Elliot Transit Aは機能構成が非常に似ており、直接的な競合製品です。
どちらも3バンドEQ、ブースト、コーラス/ディレイ/リバーブ、チューナーを搭載しています。
Transit Aはキャリーバッグが付属する点がメリットですが、ACOUSTIC FLY RIGはSansAmpの実績とブランド力、そしてより詳細なフィルター機能で差別化されています。
LR Baggs Venue DIとの比較
LR Baggs Venue DIは5バンドEQとクリーンブーストに特化したプリアンプ/DIで、エフェクト機能は搭載していません。
純粋なプリアンプ性能を追求するならVenue DIが選択肢になりますが、エフェクトも含めたオールインワンソリューションを求めるならACOUSTIC FLY RIGが適しています。
価格情報
日本国内価格(2026年2月時点)
| 販売店 | 価格(税込) |
|---|---|
| Amazon.co.jp | 約36,500円(最安値目安) |
| サウンドハウス | 45,100円 |
| chuya-online | 49,500円 |
価格帯は36,500円〜61,110円と幅があります。
並行輸入品が多いため、購入前に付属品(特に電源アダプター)の有無と保証内容を必ず確認してください。
海外参考価格
米国でのストリートプライスは249〜299ドル程度です。
為替レートによっては個人輸入も選択肢になりますが、保証や初期不良対応を考慮すると国内購入が無難です。
まとめ
TECH21 ACOUSTIC FLY RIGは、アコースティックギタリストが求める機能を一台に凝縮した優れたオールインワンソリューションです。
以下に本製品の評価をまとめます。
- 総合評価:アコースティックギター用プリアンプ/マルチエフェクターとして非常に完成度が高く、ライブからレコーディング、自宅練習まで幅広く対応できる実用的な製品
- 音質:SansAmpプリアンプによる温かみのあるアナログサウンドが魅力。ピエゾピックアップの硬さを効果的に補正できる
- 携帯性:約600g、約32cmのコンパクト設計でギグバッグに収納可能。フライデートに最適
- 機能性:プリアンプ、コンプ、ブースト、リバーブ、ディレイ/コーラス、チューナー、DIを一台に集約
- 操作性:直感的に使える反面、ノブが小さく暗所での視認性に難あり
- 拡張性:XLR出力とヘッドフォン出力を備え、追加機材なしで様々な環境に対応
- 注意点:バッテリー駆動不可、コーラスとディレイの同時使用不可、フットスイッチの間隔が狭い
- コストパフォーマンス:個別ペダルを揃えるより経済的。36,500円〜の価格帯は機能を考えれば妥当
- おすすめユーザー:機材をシンプルにまとめたいアコースティックギタリスト、PA直結で良い音を出したい方、飛行機移動の多いミュージシャン
- 購入時の注意:日本国内では並行輸入品が多いため、電源アダプターの付属有無と保証内容を事前確認すること

