「定番のPhase 90とは違う、もっと深くて個性的なフェイザーが欲しい」
「ペダルボードのスペースは限られているけど、サウンドには妥協したくない」——そんな悩みを持つギタリストやベーシストは少なくないはずです。
MXR M279 Deep Phaseは、まさにその要望に応えるために生まれたペダルといえます。
Phase 90の系譜に連なりながらも、まったく異なるキャラクターを持つヴィンテージ・フェイザー回路を採用し、4ステージと8ステージの切替、フィードバック・コントロールの搭載という独自の設計で、従来のMXRフェイザーにはなかった”深さ”と”厚み”を実現しました。
本記事では、実際のユーザーが感じた使用感やメリット・デメリット、Phase 95やSmall Stoneとの違い、そして購入前に押さえておくべき注意点まで、余すところなく解説します。
Jim Dunlop MXR M279 Deep Phaseの特徴・概要
Phase 90の系譜を継ぐ”もうひとつの”ヴィンテージ・フェイザー
MXR M279 Deep Phaseは、MXRが長年培ってきたフェイザー技術の蓄積から生まれた、Phase 90とは明確に異なるキャラクターを持つペダルです。
MXR自身が「アイコニックなヴィンテージ回路に基づく」と説明しているこの製品は、Phase 90のスムーズで均一なスウィープとは対照的に、より深くスクープされたミッドレンジと、はっきりとした”シュワッ”という発音が特徴です。
そのサウンドの傾向から、EHX Small StoneやMXR Phase 100との類似性を指摘する声も多く、従来のMXRフェイザー・ラインナップにはなかった”もうひとつのヴィンテージ・トーン”を提供するモデルとして位置づけられています。
Phase 90が「ロック・フェイザーの王道」だとすれば、Deep Phaseは「よりオーガニックで、うねりの深いフェイザー体験」を志向する一台です。
既存のPhase 90やPhase 95では物足りなさを感じていたプレイヤーにとって、新鮮な選択肢となるでしょう。
2ノブ+1スイッチが生み出す意外な守備範囲の広さ
Deep Phaseのコントロールは極めてシンプルです。
「Speed」ノブでエフェクトのスウィープ速度を調整し、「FDBK(フィードバック)」ノブでフェイズ・ピークの強度と鋭さを変化させます。
そして筐体上部の「Mode II」スイッチにより、4ステージと8ステージのフェイズ・シフトを切り替えることができます。
たった2つのノブと1つのスイッチという構成でありながら、得られるサウンドの幅は驚くほど広いと評価されています。
Speedノブを最低速付近に設定すれば、繊細なレズリー・スピーカー的な揺らぎやユニヴァイブ的なサウンドが得られ、最高速にすればSF映画のレーザーガンを思わせる極端なエフェクトまでカバーします。
FDBKノブの加減で、透明感のある淡いフェイズから、強烈に主張するレゾナント・サウンドまで自在にコントロールできる点も見逃せません。
アタック・センシティブ設計がもたらす表現力
Deep Phaseの隠れた魅力として、アタック・センシティブな応答特性が挙げられます。
これはピッキングの強弱に対してフェイザーのスウィープが動的に反応する設計で、強くピッキングした瞬間はスウィープが速くなり、その後自然にスローダウンします。
この特性により、単にスピードを一定に保つだけの機械的な揺れではなく、演奏のダイナミクスと一体化した、声のような表現力が生まれます。
アルペジオやカッティングでこの特性を活かすと、ノートごとに微妙にニュアンスが変化する有機的なサウンドスケープが広がります。
一方で、慣れるまでは「意図しないスウィープの加速」に戸惑う場合もあるため、導入直後は各セッティングをじっくり試す時間を確保することをおすすめします。
Jim Dunlop MXR M279 Deep Phaseのスペック・仕様
基本スペック一覧(回路方式・消費電流・バイパス・入出力)
Deep Phaseの主要スペックは以下の通りです。
エフェクトタイプはアナログ・フェイザーで、入出力はモノラル仕様(6.3mmフォンジャック)です。
バイパス方式はトゥルーバイパスを採用しており、エフェクトOFF時には信号経路から完全にバイパスされるため、原音への影響はありません。
消費電流は18mAと極めて省電力であり、マルチ電源ユニットで多数のペダルと共存させる場合でも電力配分を圧迫しません。
回路設計はアナログ方式で、MXRが「アイコニックなヴィンテージ回路」と表現する独自のフェイズ・シフター回路を搭載しています。
デジタル処理を介さないため、温かみがありナチュラルなフェイズ・サウンドが特長です。
4ステージと8ステージ——Mode IIスイッチの仕組み
筐体上部に配置された「Mode II」スイッチは、フェイズ・シフトのステージ数を4と8で切り替える機能です。
4ステージモードでは2つのノッチ(位相のピーク)が生成され、クラシックで穏やかなフェイズ・サウンドが得られます。
Mode IIをONにして8ステージに切り替えると、ノッチの数が4つに倍増し、より複雑で躍動的なフェイズ・テクスチャーが生まれます。
4ステージは繊細でラッシュな質感、8ステージはアニメーテッドで大胆なエフェクト感、という棲み分けが可能で、1台のペダルで2種類のフェイザー・キャラクターを使い分けられる設計です。
サイズ・筐体・電源に関する仕様上の注意
筐体はMXRミニサイズのメタルハウジングを採用しており、フルサイズのMXRペダルと比較して大幅に省スペースです。
ツアーやライブで限られたペダルボード・スペースを有効活用したいプレイヤーにとって、この小型化は大きなメリットとなります。
電源は9V DC(センターマイナス)の外部アダプター駆動専用です。
9Vバッテリーには対応していないため、必ず別売りの電源アダプターまたはパワーサプライが必要になります。
Dunlop ECB003やMXR Iso-Brick等の純正電源が推奨されています。
購入時にアダプターが付属しない点は、初めてMXRミニペダルを購入するユーザーにとって見落としやすいポイントです。
Jim Dunlop MXR M279 Deep Phaseのおすすめポイント
ヴィンテージライクな深み・厚み・リッチさを小型筐体で実現
Deep Phaseの最大の魅力は、その名の通り「深さ」にあります。
多くのユーザーが「Phase 90よりも深く、厚みがあり、リッチな音」と表現しており、一般的なフェイザーペダルにありがちな薄く表面的な揺れとは一線を画すサウンドが得られます。
スクープされたミッドレンジが生む独特の”シュワッ”という発音は、70年代のヴィンテージ・フェイザーを彷彿とさせる有機的な質感です。
この深みのあるサウンドが、MXRミニ筐体というコンパクトなフォームファクターに収まっている点は特筆に値します。
フルサイズのヴィンテージ・フェイザーと同等以上のサウンド・クオリティを、ペダルボードのわずかなスペースで実現できるのは、現代のギタリストにとって非常に実用的なメリットです。
ベースやシンセにも対応する低域の安定感と音量レベル整合
Deep Phaseはギター専用ペダルと思われがちですが、低域の処理能力の高さからベースやシンセサイザーとの組み合わせでも優れたパフォーマンスを発揮します。
多くのフェイザーペダルでは低域が痩せてしまう問題が起きがちですが、Deep Phaseは低周波数帯をしっかりと保持する設計のため、ベースギターのファットなローエンドを犠牲にすることなくフェイズ・エフェクトをかけることができます。
さらに、ヴィンテージ・フェイザーの多くが抱えていた「エフェクトON時の音量ドロップ」という問題が、Deep Phaseでは完全に解消されています。
スイッチを踏んだ瞬間に音量が下がるストレスから解放されるため、ライブ・パフォーマンスでも安心して使用できます。
この改善は、ヴィンテージ回路の音色を愛しつつも実用性を重視するプレイヤーにとって、大きなアドバンテージといえるでしょう。
コストパフォーマンスの高さ——この価格帯で得られるアナログ・フェイザーの実力
Deep Phaseの市場価格は平均87ドル前後(日本国内では概ね1万円台前半)で、アナログ・フェイザーとしては非常に手の届きやすい価格帯に位置しています。
セール時には50ドルを切る価格で販売された実績もあり、コストパフォーマンスの高さは多くのユーザーから評価されています。
この価格帯で、トゥルーバイパス、4ステージ/8ステージの切替、フィードバック・コントロール、アタック・センシティブ設計、そしてMXRならではの堅牢なメタル筐体が手に入ることを考えると、初めてのフェイザーペダルとしても、既存のコレクションへの追加としても、投資対効果に優れた選択肢だといえます。
Jim Dunlop MXR M279 Deep Phaseの注意点・デメリット
8ステージモードのLFO挙動に対する賛否
Deep Phaseに関して最も多く指摘されている注意点は、8ステージモード(Mode II)でのLFO(低周波発振器)の挙動です。
一般的なフェイザーのLFOがスムーズに上下する正弦波的な動きをするのに対し、Deep Phaseの8ステージモードでは、スウィープの折り返し地点で不自然な”バンプ”や”スクイグル(ぐにゃぐにゃした動き)”が発生すると感じるユーザーが一定数存在します。
特にSpeedノブを10時以降に上げた高速域で顕著になるこの現象は、単音のリードプレイでは気にならない場合が多いものの、コードを長く伸ばすような演奏では滑らかさが失われると感じるケースが報告されています。
この独特のLFO波形を「個性的で面白い」と受け取るか「不自然で使いにくい」と感じるかは、プレイヤーの好みや使用目的によって大きく分かれるポイントです。
購入前に可能であれば実機で試奏するか、サウンドデモを入念に確認することを強くおすすめします。
FDBKノブの扱いと”使えるセッティング”の見極め方
FDBKノブはDeep Phaseの音作りの核となるコントロールですが、設定次第ではサウンドが暗く濁ってしまうことがあります。
多くの経験豊富なユーザーが「フィードバックは12時より下で使うのがベスト」とアドバイスしており、ノブを上げすぎると音楽的な美しさが失われ、過度にレゾナントで扱いにくいサウンドになりがちです。
また、Speedノブを最高速付近に設定すると、レーザーガンやSF効果音のような極端なサウンドになり、通常の楽曲内での使用が難しくなります。
2ノブという一見シンプルな構成でありながら、「使えるスイートスポット」を見つけるには少し時間を要するペダルであるという認識を持っておくと、導入後の戸惑いを減らせるでしょう。
Phase 90を期待すると戸惑う?——キャラクターの違いを理解する重要性
Deep Phaseという名称とMXRのブランドから、Phase 90の上位互換やバリエーションとして捉えて購入するユーザーも少なくありませんが、両者のサウンド・キャラクターは根本的に異なります。
Phase 90が均一で滑らかなスウィープを持つ”ロック・フェイザーの王道”であるのに対し、Deep Phaseはスクープされたミッドレンジとより強い共鳴感を持つ、まったく別系統のフェイザーです。
最初の印象で「まるでフランジャーのように聴こえる」と感じて違和感を覚えるユーザーもいますが、数週間弾き込むうちにその独自の魅力に気づいたという声も多く寄せられています。
Phase 90の代替品ではなく、Phase 90とは異なるフェイザー体験を提供するペダルとして理解して購入することが、満足度を大きく左右するポイントです。
Jim Dunlop MXR M279 Deep Phaseの評判・口コミ
ユーザーが評価するおすすめな点
サウンド面での評価は総じて高く、「これまで使った中で最も深く、厚みのあるフェイザー」「ギターだけでなくシンセを通しても巨大なサウンドが得られる」といった声が寄せられています。
特に4ステージモードの低速セッティングは「非常にラッシュ(豊か)で、これだけでボードに残す価値がある」と高く評価されており、クラシックロックからアンビエントまで幅広いジャンルでの活用が報告されています。
ベーシストからの支持も厚く、「ベース・オクターバーとの組み合わせで新次元のソロサウンドが得られた」「低域がしっかり出るフェイザーはなかなかない」という評価が見られます。
演奏歴35年以上のベテランからは「驚くべきペダル。
期待以上のすべてが詰まっている」と星5評価を受けるなど、経験豊富なプレイヤーほどその実力を認める傾向があります。
コストパフォーマンスについても「この価格でこの音質は破格」「MXRの堅牢な筐体と信頼性がこの値段で手に入るのは素晴らしい」という声が多く、特にセール価格で購入したユーザーからの満足度は非常に高い状況です。
購入前に確認すべき注意点
一方で、購入前に確認しておくべきポイントとして繰り返し挙がるのが、8ステージモードのLFO挙動です。
「通常のフェイザーのように滑らかに上下しない」「スウィープの折り返しで奇妙なバンプがある」という声は複数のユーザーから報告されており、この点が原因で手放したという報告も存在します。
低速で使う分には問題ないとするユーザーが多い一方、高速フェイズを多用するスタイルのプレイヤーにとっては致命的な不満点となりうるため、事前にサウンドデモを確認しておくことが重要です。
9V電源アダプターが付属しない点やバッテリー駆動に非対応である点も、購入直後に「すぐに音が出せない」という事態を招く可能性があるため注意が必要です。
また、Phase 95にはあるLEDのテンポ同期点滅機能がDeep Phaseには搭載されておらず、ステージ上でスピード設定を視覚的に確認したいプレイヤーにとっては不便に感じられるかもしれません。
ミニ筐体の操作性に関しては、「足でのON/OFF操作がフルサイズより難しい」「ケーブルを挿すと本体が不安定になる」という声もあるため、ペダルボードへの固定方法やケーブルの取り回しを事前に検討しておくと安心です。
Phase 95・Small Stoneとの比較で見えるDeep Phaseの立ち位置
MXRの小型フェイザーとして競合するPhase 95と比較した場合、Deep Phaseは「より暗く、より共鳴感が強く、原音の変化が大きい」という評価が一般的です。
Phase 95がPhase 45とPhase 90のスクリプト/ブロック回路を1台に集約した”万能型”であるのに対し、Deep Phaseは「Phase 90では出せない別系統のフェイザートーンに特化した”個性派”」という位置づけが的確でしょう。
EHX Small Stoneとの比較では、「似た系統の深さを持つが、Small Stone特有のSF的なレーザートーンとは異なる」とする意見が多く、Deep Phaseの方がよりウォームでミッドレンジの存在感がある印象です。
すでにPhase 95とSmall Stoneの両方を所有しているユーザーからは「Deep Phaseは良い音だが、必須というわけではない」という冷静な評価も見られ、手持ちのフェイザー・ラインナップとの棲み分けを考慮した上で導入を検討する必要があるといえます。
まとめ:Jim Dunlop MXR M279 Deep Phase
Deep Phaseをおすすめできる人・できない人
Deep Phaseは、Phase 90とは異なる深みのあるフェイザー体験を求めるプレイヤーにとって最適な選択肢です。
特に4ステージモードの低〜中速域で得られるラッシュなヴィンテージ・トーンは、クラシックロック、ブルース、アンビエントなど幅広いジャンルで活躍します。
一方、Phase 90の代替品を探しているプレイヤーや、8ステージモードの高速フェイズを頻繁に使用するスタイルのプレイヤーには、事前の試奏を強く推奨します。
総合評価と購入判断のポイント
- Phase 90とは明確に異なる系統のヴィンテージ・フェイザー回路を採用しており、深くスクープされたミッドレンジと強い共鳴感が唯一無二の個性を生んでいる
- 2ノブ+1スイッチのシンプルなコントロールながら、ユニヴァイブ的な揺らぎからSF的な効果音まで幅広いサウンドをカバーする守備範囲の広さを持つ
- 4ステージ/8ステージの切替により、1台で穏やかなフェイズと躍動的なフェイズの2キャラクターを使い分けられる実用性がある
- 低域の保持力に優れ、ベースやシンセでもファットなローエンドを損なわずにフェイズ・エフェクトを適用できる
- ヴィンテージ回路に多かったエフェクトON時の音量ドロップが解消されており、ライブでのストレスフリーな運用が可能
- 8ステージモードの高速域ではLFOの折り返しに独特のバンプが生じるため、コードの持続音で違和感を覚えるユーザーが一定数存在する
- FDBKノブは12時以下のセッティングが音楽的に扱いやすく、上げすぎると暗く濁りやすい傾向がある
- 9Vバッテリー駆動非対応かつ電源アダプター別売のため、購入時に電源環境の準備が必要
- 市場価格は約87ドル前後(約1万円台前半)とアナログ・フェイザーとしては良心的な価格帯で、MXRの堅牢なビルドクオリティを考慮するとコストパフォーマンスは高い
- Phase 90の代替ではなく”Phase 90にはないフェイザー体験”を加えるペダルとして位置づけることで、その真価を最大限に引き出せる一台である

