「ワウペダルが欲しいけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」「標準のCry Babyでは物足りないが、シグネチャーモデルは予算オーバーだ」——ギタリストなら一度はこうした壁にぶつかるものです。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qは、まさにその悩みに応えるために生まれた”調整できるCry Baby”です。
6段階のVoiceセレクター、Variable Qコントロール、最大+16dBのブースト機能を備え、1台であらゆるワウサウンドをカバーすると謳われてきました。
しかし、本当に「最初で最後のワウペダル」になり得るのでしょうか。
本記事では、実際の音色・操作感・耐久性から、見落としがちなデメリットまで、購入判断に必要なすべてを正直にお伝えします。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qの特徴・概要
クラシックCry Babyを”進化”させた多機能ワウペダル
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qは、世界で最も売れたワウペダルであるCry Babyの基本設計を受け継ぎつつ、音色調整機能を大幅に拡張したモデルです。
標準的なCry Baby GCB95が「踏めばあの音が出る」というシンプルな設計であるのに対し、535Qは「自分好みのワウサウンドを追い込める」ことをコンセプトとしています。
その心臓部に搭載されているのがFaselインダクターです。
ヴィンテージワウペダルに使われていたこのパーツにより、人の声のように温かく有機的な響きが生まれます。
標準Cry Babyにありがちな高域のキンキンとした刺さりが抑えられ、ミッドレンジに厚みのある”ボーカルライク”なトーンが535Qの最大の個性です。
ワウペダルの進化を語るうえで避けて通れない存在であり、後発の多機能ワウペダルの多くが535Qの設計思想——周波数レンジ選択・Q幅調整・ブースト——を踏襲していることからも、本機がジャンルの基準を作ったペダルであることが分かります。
6ポジションVoiceセレクターとVariable Qが生む圧倒的な音作りの自由度
535Qの音色調整の中核を担うのが、筐体右側面に配置された6ポジションのVoiceセレクターです。
このロータリースイッチを回すことで、ワウのスイープ(周波数の掃引範囲)の中心周波数を段階的に切り替えられます。
ポジション1は最も高域寄りで鋭く切れ込むサウンド、ポジション6に向かうにつれて低域寄りのダークでサブトルなサウンドへと変化します。
多くのプレイヤーが「最もバランスが良い」と感じるのは中間のポジション3〜4で、ここでは太く”スロート感”のあるミッドレンジのワウが得られます。
さらにVariable Qノブを組み合わせることで、フィルターの帯域幅を連続的にコントロールできます。
Qを上げれば(時計回り)バンドパスが狭くなり、ピーキーで強烈な”ワウワウ感”が強調されます。
逆にQを下げれば帯域が広がり、穏やかで自然なスイープに。
この2つのコントロールの掛け合わせにより、理論上は数十通りの音色バリエーションが1台から引き出せる設計です。
ブースト機能搭載でソロにも即対応できるオールインワン設計
535Qが「ただの多機能ワウ」にとどまらない理由が、内蔵のブースト機能です。
筐体右側面の赤いフットスイッチでON/OFFを切り替え、左側面のボリュームノブでブースト量を0〜+16dBの範囲で調整できます。
この機能が特に威力を発揮するのはソロパートです。
ワウを踏みながらブーストをONにすれば、アンプのフロントエンドにホットな信号を送り込み、ナチュラルなオーバードライブとワウのコンビネーションで存在感のあるリードトーンが得られます。
別途ブーストペダルを用意する必要がないため、ペダルボードの省スペース化にも貢献します。
ただし、このブーストはあくまでワウON時にのみ使用可能で、独立したクリーンブーストとしては機能しない点は理解しておく必要があります。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qのスペック・仕様
基本スペック一覧(電源・消費電流・寸法・重量)
535Qの電源は9Vセンターマイナスの一般的なDCアダプター、または9V電池の2系統に対応しています。
消費電流はわずか2.5mAと極めて低く、電池駆動でも長時間の使用が可能です。
筐体はダイキャスト金属製で、Dunlop伝統の堅牢なワウペダル筐体をそのまま受け継いでいます。
サイズは標準的なCry Babyと同一のフットプリントで、既存のペダルボードにそのまま収まる互換性を持っています。
底面にはプラスチック製のバッテリードアがあり、工具不要で電池交換が行えます。
なお、過去には18V駆動バージョンも存在しましたが、現行モデルは9V仕様が標準となっています。
18V版ではQノブとブーストコントロールが底面に配置されていたのに対し、現行9V版では側面に配置されており、ペダルをひっくり返さずに調整できる点が改善されています。
主要コントロールの詳細(Voiceセレクター/Variable Q/ブースト)
535Qのコントロールは大きく分けて4系統です。
まず、筐体上面のロッカーペダル(トレッドル)はワウのスイープを足でコントロールする基本操作部で、踏み込みの奥でフットスイッチを押すことでエフェクトのON/OFFを切り替えます。
右側面の大きなクロームノブが6ポジションVoiceセレクターで、ワウの中心周波数帯域を選択します。
左側面にはVariable Qノブ(バンドパスの幅を調整)とブーストのボリュームノブが並び、右側面下部にブーストON/OFFの赤いフットスイッチが配置されています。
Voiceセレクターの各ポジションは、おおむね以下のようなキャラクターです。
ポジション1〜2はトレブリーで攻撃的なサウンド、ポジション3〜4はミッドレンジが豊かで最も”ワウらしい”ボーカルトーン、ポジション5〜6はダークで太く、ファンク的な用途やベースにも向いたローミッド中心のサウンドです。
バイパス方式・内部パーツの仕様(ハードワイヤーバイパス/Faselインダクター)
535Qのバイパス方式はハードワイヤーバイパスです。
これはトゥルーバイパスとは厳密には異なりますが、OFF時に信号が回路を通過しない設計であり、音痩せ(トーンサック)は最小限に抑えられています。
実際に使用しているプレイヤーからも「バイパス時のオリジナルトーンの保持は良好」との評価が一般的です。
内部にはFaselインダクター(赤色タイプ)が搭載されており、これが535Q特有のウォームでミュージカルなワウサウンドの源泉となっています。
ポットとロッカーペダルを繋ぐギアにはナイロン(プラスチック)素材が使用されており、この点は耐久性に関する議論の対象となっています(詳しくは後述の注意点で解説します)。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qのおすすめポイント
Faselインダクターによるボーカルライクで有機的なサウンド
535Qを手にしてまず感じるのは、標準Cry Babyとは明らかに異なるスイープの質感です。
Faselインダクターの恩恵により、ペダルを踏み込んだ際のフィルターの動きが滑らかで、急激なドロップオフ(音の不自然な途切れ)が抑えられています。
結果として、まるで人の声が「ワウ」と発音しているかのような、有機的で音楽的なサウンドが得られます。
この特性はクリーンからクランチ、ハイゲインまで一貫しており、特にミッドゲインのオーバードライブと組み合わせた際の”スロート感”——喉の奥から絞り出すような太い中域の鳴り——は、多くのプレイヤーが535Qを選ぶ決定的な理由になっています。
Big Muffなどのファズペダルとの相性も良好で、分厚いファズサウンドの上にワウのスイープが乗る独特の質感は、一度体験すると他のワウでは物足りなくなるという声も少なくありません。
ギター・アンプ・ジャンルを選ばない汎用性の高さ
535Qの最大の武器は、1台であらゆるワウサウンドに対応できる汎用性です。
ハムバッカー搭載のギターでは、Voiceセレクターをトレブリー寄り(ポジション1〜2)に設定することで、太いピックアップ出力でも埋もれない切れ味のあるワウサウンドが得られます。
逆にシングルコイルのギターでは、ベース寄り(ポジション4〜6)に設定することで、華奢になりがちな低域を補いながら温かみのあるスイープを楽しめます。
ジャンルの守備範囲も広大です。
Hendrix的なサイケデリックワウ、Dimebag Darrell的なアグレッシブなハイゲインワウ、Bob Marley的なレゲエのリズムワウ、Joe Satriani的なエクスプレッシブなリードワウ——付属のマニュアルにはこうしたアーティスト別の推奨セッティングも記載されており、初心者でも目的の音に素早くたどり着ける工夫がなされています。
プロの現場にも耐える堅牢な筐体と高いコストパフォーマンス
Dunlop/MXRブランドの製品に共通する特徴ですが、535Qのビルドクオリティは非常に高水準です。
ダイキャスト金属の筐体は「戦車のように頑丈」と形容されることが多く、3年以上の日常的な使用に耐えたという報告は数えきれないほどあります。
中には8年以上使い続けて「まだ問題なく動作している」というケースもあり、長期的な信頼性は折り紙付きです。
それでいて、価格帯はシグネチャーモデルやブティック系ワウペダルと比較して大幅に手頃です。
Exotic系のハイエンドワウと基本的に同じ調整機能(中心周波数選択、Q幅調整、ブースト)を備えながら、価格は半分以下に収まります。
「業界のGOATペダル」「コスパ最強のワウ」といった表現で語られることが多いのも納得の内容です。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qの注意点・デメリット
内部プラスチックギアの耐久性とON/OFF時のポップノイズ
535Qにおいて最も広く知られた弱点が、ロッカーペダルとポットを繋ぐナイロン製(プラスチック製)のセグメントギアです。
筐体自体は金属で非常に頑丈ですが、この内部ギアは長期間の激しい使用で摩耗・破損するリスクがあります。
交換パーツ自体は数百円程度で入手可能なため、「予備を事前に購入しておく」というのがベテランユーザーの間では定番のアドバイスになっています。
もう一つ注意すべきはON/OFF切替時のポップノイズです。
ハードワイヤーバイパス方式の特性上、エフェクトを踏み込んでONにした瞬間に「ポン」という小さなノイズが発生することがあります。
自宅練習やバンドリハーサルではほぼ気にならないレベルですが、レコーディングや静かなパートでのライブ演奏では気になる場面もあり得ます。
スタジオ用途では、すでにワウをONにした状態からパンチインする運用で回避しているプレイヤーもいます。
小型ノブの視認性・操作性とLEDインジケーター非搭載問題
535Qの側面に配置されたVariable QノブとブーストボリュームノブはいずれもかなりSmallサイズで、しかもダーク(暗い色調)です。
明るい環境であれば問題ありませんが、暗いステージ上で手探りで微調整するのはほぼ不可能と考えた方がよいでしょう。
そのため、ライブでは事前にセッティングを決めておき、演奏中に変更しないという運用が現実的です。
さらに、以前のバージョンにはエフェクトON時のグリーンLEDとブーストON時のレッドLEDが搭載されていましたが、現行バージョンではこれらが省略されています。
薄暗いステージ上で「いまワウがONなのかOFFなのか」を足元で視認できないのは実用上の不便であり、これを惜しむ声は少なくありません。
ブースト使用時のヒスノイズとクリーントーンでの歪み傾向
ブースト機能は535Qの大きなセールスポイントですが、ブースト量を上げすぎるとヒスノイズ(シーッという高域のノイズ)が目立つようになるという報告があります。
特にハイゲインアンプとの組み合わせでは顕著になりやすいため、ブーストは控えめの設定にとどめ、必要最小限のプッシュに使うのが実用的です。
また、535Qはクリーントーンでの使用時に、入力レベルが大きいと意図しない歪みが生じる傾向があるとの指摘もあります。
ハムバッカーなど出力の高いピックアップで弾いた場合に顕著で、クランチ〜ハイゲインの設定では逆にこの特性が味になりますが、完全にクリーンなファンキーワウを求める場合にはやや注意が必要です。
この点が気になるプレイヤーは、ギターのボリュームを少し絞るか、ワウの前段にバッファーを挟むことで対処できます。
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qの評判・口コミ
ユーザーが評価するおすすめな点(音色の幅・耐久性・コスパへの満足度)
535Qに対する評価で最も頻繁に登場するキーワードは「汎用性」です。
「ほぼすべてのワウトーンをこの1台で再現できる」「スイスアーミーナイフのようなペダル」という表現は、初心者からキャリア数十年のベテランまで共通して使われています。
特にVoiceセレクターとVariable Qの組み合わせによる音作りの自由度は、標準Cry BabyやVox Wahからのステップアップ組に強い満足感を与えているようです。
耐久性に対する信頼も厚く、「これが最初で最後のワウペダル」「他のワウを探す必要がなくなった」という声は非常に多く見られます。
ある長期ユーザーは「盗まれたから買い直した。
嫌で手放したのではなく、同じものをまた買うほど気に入っている」と語っており、単なる一時的な満足ではなく、年単位で使い続けた末の評価である点が印象的です。
コストパフォーマンスについても「シグネチャーモデルは高くて手が出ないが、535Qならほぼ同等の調整幅がある」「Exotic系ワウの半額以下でこの機能は驚異的」と、価格に対する満足度の高さが目立ちます。
ブースト機能に対しても「ソロ時に足元でサッとONにできるのが実戦的」「別途ブーストペダルを買わなくて済む」と好意的な声が多く、特にライブ演奏をするプレイヤーからの支持が厚い印象です。
購入前に確認すべき注意点(操作の慣れ・セッティングの複雑さ・電源周りの不満)
一方で、購入直後に「コントロールが多くて戸惑った」と感じるユーザーは一定数います。
標準Cry Babyのように「踏めばすぐワウ」というシンプルさを期待すると、6ポジション+Qノブ+ブーストという複数の調整要素に最初は圧倒されるかもしれません。
ただし、付属マニュアルにアーティスト別の推奨セッティングが掲載されているため、これを手がかりにすれば比較的スムーズにスタートできたとの声もあります。
電源周りの不満も散見されます。
9Vアダプターの端子が出力ジャックの裏側に配置されているため、ペダルボードへの組み込み時にケーブルの取り回しが煩雑になりがちです。
また、バッテリー駆動時にペダルを素早く踏み込むと一瞬音が途切れるという報告もあり、安定性を重視するなら外部電源の使用が推奨されています。
フットスイッチの感触についても、出荷時の調整が低すぎて「ON/OFFが反応しにくい」と感じた個体があるとの報告がありますが、スイッチの高さは自分で調整可能であり、一度合わせてしまえば以後は問題なく使えるとのことです。
長期使用者が語るリアルな満足度と「買い替えない理由」
535Qを数年以上使い込んだプレイヤーの声には、一貫した傾向があります。
それは「設定を見つけたらそこに固定して、あとはひたすら弾く」という使い方に落ち着くということです。
購入初期は色々なセッティングを試す楽しさがありますが、最終的には自分だけの”スイートスポット”を発見し、そこから動かさなくなる。
それでも標準Cry Babyには戻れないのは、一度自分の好みに合わせた音を知ってしまうと、固定のトーンでは物足りなくなるからです。
「3年以上毎日使っているが、まだ壊れる気配がない」「8年以上現役」「盗まれても同じものを買い直した」——こうした証言が示すのは、535Qが一時的な流行やスペック競争に左右されない、実用本位のペダルであるということです。
ただし全員が535Qに永住するわけではありません。
「Voxのクラシックワウの方がシンプルで好みだった」「ブティック系ワウに乗り換えてからワウの使用頻度が上がった」というケースもあり、ワウペダルには個人の好みが強く反映されるジャンルであることは念頭に置くべきでしょう。
535Qは「最大公約数的に優れたワウ」ですが、それが万人にとってのベストとは限りません。
まとめ:Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Q
総合評価——”スイスアーミーナイフ的ワウ”の実力
Jim Dunlop CRYBABY MULTI-WAH 535Qは、クラシックCry Babyのサウンドを核に据えながら、現代のギタリストが求める調整幅と機能性を過不足なく実装した、ワウペダルのスタンダードと呼ぶにふさわしい製品です。
完璧なペダルではありませんが、価格・音質・汎用性・耐久性のバランスにおいて、これを超えるコストパフォーマンスのワウペダルを見つけるのは容易ではありません。
こんな人におすすめ/こんな人には向かない
535Qは、「1台のワウペダルで幅広いジャンルとギターに対応したい」「標準Cry BabyやVox Wahからステップアップしたい」「ブティック系ワウの価格には手が出ないが、調整機能は欲しい」というプレイヤーにとって最有力候補です。
一方で、「とにかくシンプルに踏むだけで使いたい」「完全にクリーンなファンキーワウが最優先」「トゥルーバイパスが絶対条件」という場合は、他の選択肢も検討した方がよいでしょう。
購入前に押さえておきたい最終チェックポイント
- Faselインダクター搭載による温かくボーカルライクなサウンドが最大の魅力
- 6ポジションVoiceセレクター+Variable Qで数十通りの音色バリエーションに対応
- 最大+16dBのブースト機能がソロ時の武器になる
- ハードワイヤーバイパスにより、OFF時の音痩せは最小限
- 金属筐体の耐久性は折り紙付きで、数年〜8年以上の長期使用実績あり
- 内部ナイロン製ギアは経年劣化の可能性があり、予備パーツの確保を推奨
- ON/OFF時・Voiceセレクター切替時にポップノイズが出る場合がある
- 側面ノブが小さく暗いため、ライブ中の微調整には不向き。セッティングは事前に決めておくのが現実的
- ブーストを上げすぎるとヒスノイズが増加するため、控えめな設定がおすすめ
- 電池駆動時の不安定さが報告されているため、外部電源アダプターの使用を推奨
- 総合的に、価格・音質・汎用性・耐久性の全方位で高い水準を満たす”万能ワウ”の決定版

