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Jim Dunlop MXR M85 Bass Distortion レビュー解説|低域を殺さない極太歪み

ベースに歪みを加えたいけれど、肝心の低音が痩せてしまう――。

これはディストーションペダルを導入しようとするベーシストが必ずぶつかる壁です。

かつてはクリーン信号とダーティ信号を2台のアンプに分岐させるしか方法がなかったこの問題に、たった1台のコンパクトペダルで答えを出したのがMXR M85 Bass Distortionです。

本記事では、M85の設計思想やスペックの詳細から、実際に使い込んで初めてわかる操作感や音質の特徴、そしてメリット・デメリットまで徹底的に掘り下げます。

購入を迷っている方が「自分に合うかどうか」を判断できるよう、リアルな使用感を余すところなくお伝えします。

目次

製品概要:Fuzzrociousとの共同開発が生んだモダン・ベースディストーション

MXR M85 Bass Distortionは、Jim Dunlop傘下のMXRブランドが、インディー系ペダルメーカーFuzzrocious Pedalsの創設者Ryan Ratajski氏と共同開発したベース専用ディストーションペダルです。

2015年のWinter NAMMで初公開され、以来ベーシストの間で根強い支持を集めてきました。

開発コンセプトの核にあるのは、「有名なディストーション回路をベースのために再設計する」という発想です。

いわゆるRat系と呼ばれるディストーション回路をベースに、ベーシストが求める低域の維持力とクリーン・ブレンド機能を融合させています。

その結果、荒々しいハイゲインサウンドから温かみのある軽い歪みまで、1台で幅広いトーンをカバーできるペダルに仕上がっています。

使用アーティストとしてはLes ClaypoolやRex Brownの名前が挙がることもあり、プロの現場でも実戦投入されている実力派のペダルです。

スペック・仕様

MXR M85 Bass Distortionの主要スペックは以下の通りです。

本機はアナログ回路を採用しており、9V DC電源(アダプター別売)または9V電池で駆動します。

消費電流はわずか11mAと非常に低く、電池駆動でも長時間の使用に耐える設計です。

バイパス方式はトゥルーバイパスを採用しており、エフェクトOFF時に信号が劣化する心配がありません。

コントロール構成はDRY(原音レベル)、WET(エフェクト音レベル)、TONE(高域カットフィルター/エフェクト音のみに作用)、DIST(歪み量)の4ノブに加え、クリッピング方式を切り替えるSIL/LEDミニスイッチを搭載しています。

さらに、筐体内部にはLEDモードの最大ゲインレベルを設定するトリムポットが備わっており、細かい追い込みも可能です。

筐体はMXR標準のコンパクトメタルケースで、堅牢性は十分です。

入出力はINPUTとOUTPUTの各1系統というシンプルな構成になっています。

日本国内での実勢価格はおおむね2万円前後、海外では139〜159ドル程度で販売されています。

特長と差別化ポイント:なぜM85が選ばれるのか

DRY/WET独立コントロールによるクリーン・ブレンド

M85最大の特長は、原音(DRY)とエフェクト音(WET)をそれぞれ独立したノブでコントロールできる点です。

両方のノブを12時の位置に合わせるとちょうどユニティ・ゲイン(同音量)になるよう設計されており、ブレンド比率の調整が非常に直感的に行えます。

これにより、かつて2台のアンプを使わなければ実現できなかった「クリーンな低域を保ちつつ歪みを乗せる」というサウンドメイクが、この1台で完結します。

ヘヴィなディストーションをかけても芯のある低音が残るため、バンドアンサンブルの中でベースが埋もれる心配がありません。

SIL/LED 2種類のクリッピングモード

もう一つの大きな差別化ポイントが、シリコンダイオード(SIL)とLEDダイオード(LED)の2つのクリッピングモードを搭載していることです。

SILモードはシリコンクリッピングによるアグレッシブでバイト感のあるサウンドが特徴で、自然なコンプレッション効果も加わります。

一方のLEDモードはよりオープンでワイドなトーンを持ち、ミッドレンジの厚みとゲインブーストが得られます。

アタック感もLEDモードのほうが速く、力強い印象です。

このモード切替一つで「モダンなハイゲイン」と「クラシックロック寄りの太い歪み」を使い分けられるのは、価格帯を考えると非常に贅沢な仕様といえます。

Rat系回路のベース最適化

本機の回路はいわゆるRat系ディストーションをベースに設計されています。

Fuzzrocious PedalsのRat Tail(現Cat Tail)のサウンドに親しんだプレイヤーなら、馴染みのあるキャラクターを感じるでしょう。

ただし、単純なRatクローンではなく、ベースの周波数帯域に最適化されたチューニングが施されているため、低域のレスポンスと音の分離感において汎用のRatペダルとは一線を画します。

おすすめポイント:M85を選ぶ5つの理由

1. 低域を犠牲にしない圧倒的なディストーション

M85を使って最も感動するのは、どれだけ激しく歪ませても低域がタイトに維持される点です。

DRYとWETのバランスを丁寧に調整すれば、低音が「ぐしゃっ」と潰れてしまうことなく、芯のあるディストーションサウンドが得られます。

ヘヴィロックやメタルで、2本のラウドなギターの間をカットスルーする必要があるベーシストにとって、これは何よりも心強い特性です。

2. 1台で幅広いジャンルに対応できる守備範囲の広さ

「クレイジーなファズからヘヴィなディストーション、ほぼドライブ感のないウォームなグリットまで」と評される通り、M85のサウンドレンジは見た目以上に広いです。

LEDモード・ローゲイン設定なら常時ONの味付け的な使い方も可能で、実際にそのような運用をしているプレイヤーも少なくありません。

DISTノブを絞り、DRYを主体にすればJaco Pastorius的な滑らかなグリットも表現できます。

3. 直感的な操作性

4つのノブとモード切替スイッチというシンプルな構成ながら、TONEがエフェクト音にしか作用しないという設計のおかげで、原音を汚さずにディストーションのキャラクターだけを追い込めます。

複雑なパラメータに悩まされることなく、すぐに求めるサウンドにたどり着ける設計思想は、ライブの現場でも大きなアドバンテージになります。

4. ブティック品質を手の届く価格で

約2万円前後という価格帯で、Fuzzrocious Pedalsの設計思想が注入されたサウンドが手に入る点は、コストパフォーマンスとして非常に優秀です。

ブティック系ペダルのFuzzrocious Ram the Manpartsなどと比較しても、よりリーズナブルでありながら幅広いトーンパレットを提供しているという声が多く聞かれます。

5. 他ペダルとの組み合わせの自由度

アナログオクターバーやリバーブ、モジュレーション系エフェクトとの相性が良好です。

ドライブチェーンの最後尾に配置することでスタッキング時の不自然さを解消できるという実践的なノウハウも共有されており、複雑なペダルボードへの組み込みにも柔軟に対応します。

注意点:購入前に知っておくべきこと

ハイゲイン領域は「本気の歪み」

M85は根本的にハイゲイン志向のペダルです。

DISTノブを大きく回した際のサウンドは極めて激しく、繊細なオーバードライブ的用途にはやや不向きな面があります。

「軽い歪みだけが欲しい」という方は、同シリーズのMXR M89 Bass Overdriveのほうが適している可能性があります。

M85でもローゲイン運用は可能ですが、ゲインレンジの低い領域でも十分にディストーションがかかるため、微妙なドライブ感の調整には慣れが必要です。

クリーンブレンドの特性を理解する

DRYノブによるクリーンブレンドは、一般的にイメージされる「低域を補う」機能とは少し異なります。

実際にはクリーンな高域とアタック感を復元する働きが主であり、低域を直接追加するわけではありません。

また、ブレンド時に「2つの信号が並走している」ような印象を受け、完全に一体化したミックスにはなりにくいと感じるケースもあります。

DRYノブを使わず、WETのみで鳴らしたほうが自然に感じるという意見も一定数あるため、自分の好みに合った使い方を見つける必要があります。

DRYノブの音量バランス

DRYノブを上げすぎると原音が支配的になり、エフェクト音とのバランスが崩れることがあります。

反対に、DRYを絞りすぎるとWET信号だけでは音が薄く感じられる場面も出てきます。

この2つのノブの最適なバランスポイントを見つけるまでにはある程度の試行錯誤が必要です。

LEDモード特有のミッドブースト

LEDモードには独特の上部ミッドレンジのブースト特性があり、これが「太くてマッスキュラーな音」の源泉でもある一方、他の歪みペダルとスタッキングする際に音が飽和しやすくなる原因にもなります。

複数のドライブペダルを組み合わせて使うプレイヤーは、接続順やゲイン配分に注意が必要です。

フットスイッチの踏み心地

機械式のフットスイッチを採用しているため、踏み込み時の「カチッ」というクリック音や感触が気になるユーザーもいます。

ソフトスイッチ(電子式リレー)への改良を望む声も一部で上がっています。

評判・口コミ

ユーザーが評価するおすすめな点

全体的に見て、M85の購入者満足度は高い水準にあります。

主要なショッピングサイトでは5点満点中4.8前後の評価を獲得しており、回答者のほぼ全員が「友人にも勧める」と回答しています。

特に高く評価されているのは、やはり「低域を維持したまま強力なディストーションが得られる」という本機の最大の存在意義です。

ヘヴィロックやメタルのプレイヤーからは「ラウドなギター2本の間でもしっかりカットスルーできる」「このペダルなしではインテンスなフレーズが書けない」といった実戦的なコメントが多く寄せられています。

また、バーサタイリティ(汎用性)を称える声も目立ちます。

SIL/LEDの切替とDRY/WETの調整幅によって、ファジーな轟音からOD的な軽いグリットまでカバーできるため、「この価格帯でこれだけのトーンレンジを持つベース用ディストーションは他にない」という評価が定着しています。

LEDモード・ローゲインでの常時ON運用に満足しているユーザーも多く、「ドライブをほぼゼロにして常時ONにしているだけで、ベースサウンドに驚くほどの深みが加わる」という使い方が紹介されています。

ビルドクオリティについても、MXR伝統のコンパクトで重厚な金属筐体が「頑丈でライブでも安心」と評価されています。

購入前に確認すべき注意点

一方で、購入前に認識しておくべきポイントもあります。

最も多く指摘されるのが「繊細なオーバードライブは苦手」という点です。

M85はディストーションペダルとして設計されており、ゲインレンジの最低域でも一定の歪み感があります。

「ほんの少しだけ温かみを足したい」という用途には、やや過剰に感じる可能性があります。

クリーンブレンドの効き方に違和感を覚えるユーザーもいます。

「低域を補うというよりは高域のアタックを戻す感覚で、原音とエフェクト音が完全に溶け合わない」という印象を持つ声が散見されます。

ブレンド機能に高い期待を持っている方は、できれば実機を試奏してから判断することをおすすめします。

また、通常のRatと比較してサウンドがやや暗め(ダーク)であるという特性も把握しておく必要があります。

TONEノブを2〜3時方向まで回さないと求める明るさが出ないケースもあり、Rat特有のギラつきをそのまま期待していると印象が異なるかもしれません。

「基本的なサウンドキャラクターはRat系の一本道で、劇的に異なる音色は出しにくい」という意味で「ワントリックポニー」と評するユーザーもごく少数存在します。

ただし、これはRat系の歪みが好きな人にとってはむしろ一貫性のある美点とも言えるため、好みの問題といえるでしょう。

競合製品との比較

M85の購入を検討する際に、比較対象としてよく挙がるペダルがいくつかあります。

まず、ProCo Turbo Ratとの比較です。

LEDモードのM85はTurbo Ratに近いトーンキャラクターを持つと言われていますが、M85にはクリーンブレンド機能とSIL/LEDの切替がある分、ベース用途での使い勝手は一歩リードしています。

2アンプ体制やブレンダーペダルなしで低域を維持できる点は大きなアドバンテージです。

次に、同シリーズのMXR M80 Bass D.I.+との比較です。

M80はプリアンプ/DI機能を備えた多機能ペダルで、3バンドEQやノイズゲートを搭載していますが、歪みに関してはTONEノブやSIL/LEDスイッチがないため、ディストーションの追い込みはM85のほうが圧倒的に得意です。

「歪みの質と多彩さ」を重視するならM85、「1台でプリアンプからDIまで完結したい」ならM80という棲み分けになります。

同じくMXRのM89 Bass Overdriveは、より控えめな歪みを得意とするペダルです。

微妙なドライブ感を常時ONで使いたいプレイヤーにはM89のほうがフィットする可能性がありますが、ハイゲイン領域の破壊力ではM85に軍配が上がります。

また、開発元であるFuzzrocious Ram the Manpartsとも比較されることがあります。

より幅広いトーンパレットとリーズナブルな価格という点で、M85のほうがアクセスしやすいという評価が一般的です。

どんな人におすすめか

M85は以下のようなベーシストに特におすすめできるペダルです。

まず、ヘヴィロックやメタルを演奏するプレイヤーには文句なしの選択肢です。

バンドの中で低域を失わずに攻撃的なディストーションサウンドを実現できるため、2本のギターに負けない存在感を確保できます。

次に、Rat系の歪みが好きで、それをベースに最適化された形で使いたいプレイヤーにとっても理想的です。

Turbo Ratの音が好きだがクリーンブレンドが欲しい、というニーズにピンポイントで応えてくれます。

さらに、ブティック系ペダルの音質を手頃な価格で手に入れたいコスト意識の高いプレイヤーにも適しています。

約2万円前後という価格でこのクオリティは、コストパフォーマンスの面で非常に魅力的です。

一方で、繊細なオーバードライブだけを求めている方や、極めて多様なエフェクトバリエーションを1台に期待する方には、別の選択肢を検討することをおすすめします。

まとめ

  • MXR M85 Bass Distortionは、Fuzzrocious Pedalsとの共同開発によるベース専用ディストーションペダルである
  • DRY/WET独立コントロールにより、低域を維持したまま歪みをブレンドでき、2アンプ体制が不要になる
  • SIL(シリコン)とLED の2種類のクリッピングモードで、アグレッシブな歪みからオープンで太いトーンまでカバーする
  • アナログ回路・9V駆動・消費電流11mA・トゥルーバイパス仕様で、電池運用でも安心の低消費電力設計
  • 操作はシンプルな4ノブ+ミニスイッチ構成で、直感的にサウンドメイクが可能
  • ヘヴィロックやメタルでのカットスルー性能に優れ、実際のライブ環境で高い評価を得ている
  • LEDモード・ローゲインでの常時ON運用など、ディストーション以外の用途にも応用できる汎用性がある
  • 繊細なオーバードライブ的用途にはやや不向きで、ゲインレンジの最低域でも一定の歪み感がある点には注意が必要
  • クリーンブレンドの効き方に独特のクセがあり、実機での試奏を推奨する
  • 総合評価として、約2万円前後でブティッククラスのベースディストーションが手に入る、コストパフォーマンスに優れた実力派ペダルである
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