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Jim Dunlop WAY HUGE SMALLS AQUA-PUSS ANALOG DELAY WM71 レビュー解説|温かく透明なディレイ

「アナログディレイが欲しいけれど、どれを選べばいいかわからない」

「ジョン・メイヤーが使っているペダルが気になるけれど、実際の使い勝手はどうなの?」——そんな悩みを抱えているギタリストは少なくないはずです。

Way Huge Aqua-Pussは、1990年代のハンドメイド・エフェクター黎明期に誕生し、その希少性とサウンドから伝説的な存在となったアナログディレイです。

本記事では、そのSmallsシリーズ版であるWM71の特長からスペック、実際の使用感、メリット・デメリット、そしてユーザーからのリアルな評価まで、購入判断に必要なすべての情報をお届けします。

目次

Way Huge Aqua-Puss WM71とは?ブランドの歴史と製品の位置づけ

Way Huge Electronicsは、天才ビルダーと称されるジョージ・トリップスが1992年に立ち上げたエフェクター・ブランドです。

当時はマイケル・ランドウやティム・ピアースといったLAの一流セッションミュージシャンが愛用し、ハンドメイド・エフェクターの先駆け的存在として知られていました。

しかし1999年にブランドは一度終了。

生産数が極めて少なかったことからオリジナル機にはプレミアがつき、中古市場では数千ドル規模で取引されるほどの「幻のペダル」となりました。

その後、Jim Dunlop傘下で復活を遂げ、2010年にリイシュー版「Aqua-Puss MkII」がリリースされます。

さらに機材の小型化ニーズに応える形で2018年に登場したのが、本記事の主役であるWM71 Smalls Aqua-Puss Analog Delay MkIIIです。

オリジナルと同等の回路を、ペダルボードに組み込みやすいコンパクト筐体に収めた、いわばAqua-Pussの「完成形」ともいえるモデルです。

主なスペック・仕様

WM71の基本スペックを整理します。

本機のエフェクトタイプはアナログディレイで、ディレイタイムは20msから300msの範囲で設定できます。

コントロールはDELAY(ディレイタイム)、FEEDBACK(リピート回数)、BLEND(ドライ/ウェット・バランス)の3つです。

バイパス方式にはトゥルー・ハードワイヤー・リレーバイパスを採用しており、バイパス時の信号劣化がありません。

電源は9Vバッテリーまたは9V DCアダプター(センターマイナス)に対応し、消費電流はわずか16mAです。

入力インピーダンスは300kΩ以上、出力インピーダンスは1kΩ以下、S/N比は96dB以上を確保しています。

ノイズリダクション比は2:1、ディレイ・ディストーションは1%以下という仕様です。

筐体サイズは58(W)×103(D)×55(H)mmで、接続端子はINPUTとOUTPUTの各1系統となっています。

製品の特長:他製品との差別化ポイント

アナログなのに透明感のあるディレイ音

Aqua-Pussの最大の特長は、アナログディレイでありながら高い解像度と透明感を備えたサウンドです。

一般的にアナログディレイといえば「ウォームで暗めのリピート」をイメージしますが、本機はそのイメージを良い意味で裏切ります。

ブライトでジャングリー(キラキラとした)なリピート音は、デジタルディレイに近いクリアさを持ちながらも、アナログ回路特有の偶数次倍音歪みによる「生きた質感」を併せ持っています。

この絶妙なバランスこそが、数あるアナログディレイの中でAqua-Pussが長年支持され続ける最大の理由です。

BOSS DM-2の遺伝子を受け継ぐ設計思想

本機の回路設計は、アナログディレイの名機として知られるBOSS DM-2を参考にしています。

BBD(Bucket Brigade Device)素子によるアナログ遅延回路は、リピートのたびに信号がわずかに劣化し、自然に減衰していきます。

この「不完全さ」が、デジタルディレイの無機質な正確さとは異なる、音楽的で心地よいディレイ体験を生み出しています。

コンパクト筐体で省スペース

Smallsシリーズの筐体は手のひらに収まるサイズで、オリジナルの大型筐体と比べてペダルボードの占有面積が大幅に減少しています。

底面はフラットでゴム足がないため、マジックテープなどでボードに直接貼り付けやすい設計です。

実際にオリジナルの大型Aqua-Pussから本機に乗り換えたユーザーも多く、「まったく同じサウンドが省スペースで得られる」と高い評価を得ています。

驚異的な省電力設計

消費電流わずか16mAという数値は、デジタルディレイと比較して桁違いの省電力です。

たとえばデジタルディレイでは100〜300mA程度の消費電流が一般的ですが、本機はその10分の1以下で動作します。

これにより、小型のパワーサプライでも余裕を持って駆動でき、バッテリー駆動での長時間使用も現実的です。

パワーサプライの出力容量が限られるペダルボードにおいて、この省電力性は大きなアドバンテージとなります。

実際の使用感:3つのノブが生み出すサウンド

DELAYノブ:20ms〜300msの世界

DELAYノブはディレイタイムを設定するコントロールです。

12時の位置でちょうど中間的なディレイタイムが得られます。

MIN方向に絞ると20ms程度の極ショートディレイとなり、ダブリング効果(音を二重に重ねる効果)が生まれます。

リードギターのトーンに厚みを加えたいときや、ボーカルライクなダブル感が欲しいときに有効です。

ノブを上げていくと、ロカビリーやカントリーの定番であるスラップバック・ディレイの領域に入ります。

最大300msでは、空間的な広がりを感じられる中程度のディレイが得られます。

ただし、ロングディレイやアンビエント的な深いエコーを求めるプレイヤーにとっては、300msという上限はやや物足りなく感じるかもしれません。

FEEDBACKノブ:繊細な調整が求められるリピート制御

FEEDBACKノブはリピート回数を制御します。

MINの状態でリピートは1回のみ。

9時の位置で5〜6回、10〜11時で13〜15回程度のリピートが得られます。

そして12時の位置に達すると自己発振が始まり、ペダルが「暴走」するかのような強烈なフィードバック・サウンドが発生します。

この自己発振はシューゲイザー的な表現や実験的なノイズ・プレイに活用できる一方で、12時以降は発振の強度が増すだけとなり、実質的にはMINから12時までが通常使用の範囲となります。

なお、初めて使用する際に全ノブを12時に設定してスイッチをONにすると、いきなり発振が始まるため「故障か?」と驚く可能性があります。

使い始めはFEEDBACKノブを9時以下に設定しておくことをおすすめします。

BLENDノブ:原音を活かすミックス設計

BLENDノブはドライ信号とウェット信号のバランスを調整します。

特筆すべきは、このノブがいわゆるウェット/ドライの独立レベル制御ではなく、ドライ信号はフルのまま維持され、ウェット音が加算される方式を採用している点です。

10時の位置で原音とほぼ同音量のエフェクト音が得られ、MAXにすると原音の約2倍の音量差が生じます。

この設計のおかげで、ディレイをかけても原音の芯が失われず、トーンの太さを維持したまま空間的な広がりを加えることができます。

おすすめな点:このペダルを選ぶ理由

スラップバック・ディレイの決定版

本機が最も真価を発揮するのは、スラップバック・ディレイの領域です。

20ms〜100ms程度の短いディレイタイムでBLENDを控えめに設定すると、音にほんのわずかな「影」が加わり、ヴィンテージ・レコーディングのような心地よい空気感が生まれます。

ロカビリー、カントリー、50〜60年代のロックンロールはもちろん、ブルースやファンクのカッティングにも絶大な効果を発揮します。

チューブアンプとの抜群の相性

Fender Deluxe ReverbやBlues Juniorなどのフェンダー系アンプとの相性は特に秀逸です。

フェンダーアンプ特有のスクープドEQカーブに対し、Aqua-Pussのミッドレンジの甘さが見事にフィットし、クリーンでもクランチでも音楽的なディレイが得られます。

Vox AC30と組み合わせると、ヴィンテージ・ブリティッシュ・サウンドに温かな空間表現が加わり、Marshall系ではアンプをプッシュした状態で「Sun Studiosを彷彿とさせるテープエコーのような質感」が得られるとの評価もあります。

オーバードライブとの組み合わせが秀逸

本機はオーバードライブやファズの後段に配置することで、その真価をさらに発揮します。

歪みペダルで作ったトーンにAqua-Pussのアナログ・リピートが重なることで、デジタルディレイでは再現しにくい「有機的な空間表現」が実現します。

ペダルの信号経路上の配置としては、歪みペダルの後・リバーブの前が最も効果的です。

トーン・シックナーとしての活用

ディレイタイムを極端に短く設定し、BLENDを軽めにかけることで、ディレイとしてではなく「音を太くするツール」として機能します。

常時ONにして微量のダブリング効果を加えれば、ソロはもちろんバッキングにも説得力のある厚みが生まれます。

注意点:購入前に知っておきたいこと

最大ディレイタイム300msの限界

本機の最大ディレイタイムは300msです。

これはアナログディレイとしては標準的な数値ですが、付点8分音符の残響を活かしたアンビエント・プレイや、テンポの遅い楽曲で明確なエコーが欲しい場合には不足する場面があります。

ロングディレイを多用するプレイスタイルの方は、上位機種のSupa-Puss(最大900ms、タップテンポ搭載)やデジタルディレイの併用を検討する必要があるでしょう。

FEEDBACKノブの調整幅に癖がある

前述のとおり、FEEDBACKノブは12時で発振が始まるため、実質的な可変範囲がノブの前半分に集中しています。

わずかな角度の変化でリピート回数が大きく変わるため、ライブ中の即座な微調整には慣れが必要です。

この点は多くのユーザーが指摘しており、「もう少しフィードバック量を抑えて調整範囲を広くしてほしかった」という声が聞かれます。

クリーン・セッティングでのヘッドルーム

完全にクリーンなトーンで使用する場合、ディレイのリピート音にわずかな歪みが混じることがあります。

これはBBD素子によるアナログ回路の特性であり、オーバードライブと組み合わせる場合はまったく問題になりません。

しかし、ジャズのクリーントーンなど、徹底的にクリーンなリピートを求めるプレイヤーにとっては気になるポイントになり得ます。

高ディレイタイム設定時のクロックノイズ

ディレイタイムを最大付近に設定すると、リピート音の上にわずかなホイッスル音(クロックノイズ)が聞こえる場合があります。

設計者のジョージ・トリップスはこれをヴィンテージ・アナログディレイの特性として意図的に残していると説明しています。

ヴィンテージの味わいとして楽しめる方には問題ありませんが、完全にノイズフリーな環境を求める方は認識しておく必要があります。

Smalls筐体ゆえのスイッチ・ノブ近接問題

コンパクトな筐体設計の代償として、フットスイッチとノブの距離が近くなっています。

足の大きい方や靴のサイズが大きい場合、スイッチを踏む際にノブに触れてしまい、意図せず設定が変わってしまう可能性があります。

また、スイッチ自体の踏み心地にやや癖があり、しっかりと踏み込まないとON/OFFが切り替わらないと感じるユーザーもいます。

多機能ディレイを求める方には不向き

タップテンポ、プリセット保存、モジュレーション、サブディビジョン切替、MIDI制御といった現代的な機能は一切搭載されていません。

「シンプルであること」がこのペダルの美学ですが、曲ごとにディレイタイムを正確に切り替える必要があるプレイヤーには向きません。

評判・口コミ

ユーザーが評価するおすすめな点

本機に対する評価で最も多いのは、サウンドの質に関する称賛です。

「透明感があってとても良い感じ」「アナログだが温かみがありクリアー」「ラッシュで温かいディレイ効果」といった声が多数を占めています。

特に「アナログなのにデジタルに近いクリアさがある」という点は、従来のアナログディレイのイメージを覆すポイントとして高く評価されています。

操作性についても「直感的で使いやすい」「マニュアルなしでも迷わない」という評価が一般的です。

3ノブのシンプルな構成を、制約ではなく美点として捉えるユーザーが圧倒的多数です。

「最近のディレイは多機能ですが、これで十分」という感想は、本機の設計思想に共感するユーザーの声を代表しています。

アンプやエフェクターとの相性の良さも頻繁に言及されるポイントです。

チューブアンプ、ソリッドステート、安価なアンプから高級アンプまで幅広く対応し、ファズやオーバードライブ、リバーブなど他のペダルとの親和性も高いと評価されています。

コンパクトなサイズへの満足度も高く、オリジナルの大型版を使っていたユーザーが「まったく同じ音で省スペース」と確認した上でSmalls版に乗り換えたという報告も複数見られます。

購入者の総合的な満足度は非常に高く、5段階評価で4.8という数値が示すように、大多数のユーザーが期待通りまたはそれ以上の満足を得ています。

「ペダルボードの定番になった」「もう外せない」という声は、本機のリピート購入や長期使用にもつながっています。

購入前に確認すべき注意点

不満の声として最も多いのは、FEEDBACKノブの扱いにくさです。

12時で発振が始まる設計について「さすがにやりすぎではないか」「調整がシビアで面倒」という指摘は、初心者から上級者まで幅広いユーザーから寄せられています。

次に多いのがディレイタイムの短さに関する指摘です。

300msという上限について「ロングディレイが作れない」「アンビエント用途には向かない」との声があり、この点はスラップバックやショートディレイ以外の用途を考えているプレイヤーにとって重要な判断材料となります。

クリーン・セッティングでのヘッドルームの低さについても、一部のユーザーが「ディレイ音が歪んでいる」「完全クリーンのギターで歪んだリピートが気になる」と報告しています。

ただし「オーバードライブをかけていれば気にならない」という補足も同時になされており、使用環境によって評価が分かれるポイントです。

ディレイタイムの数値表示がない点について「今何msなのかわからない」という声もあります。

耳頼りの設定となるため、テンポに合わせた精密なディレイタイム設定が必要な場面ではやや不便です。

まとめ

  • Way Huge WM71 Smalls Aqua-Pussは、90年代の伝説的アナログディレイをコンパクト筐体に凝縮した現行モデルである
  • 最大の魅力はアナログ特有の温かさと透明感を両立したブライトなディレイ・サウンドで、多くのユーザーから「アナログなのにクリア」と評価されている
  • スラップバック・ディレイの用途では最高クラスの評価を獲得しており、ロカビリー、カントリー、ブルース、クラシックロック系のプレイヤーには最適解のひとつである
  • DELAY・FEEDBACK・BLENDの3ノブによるシンプル操作は直感的で、マニュアル不要で使い始められる
  • 消費電流わずか16mAという省電力設計で、パワーサプライの容量を圧迫しない
  • FEEDBACKノブは12時で発振が始まるため調整がシビアで、可変範囲の実質的な使用域が狭い点は要注意
  • 最大ディレイタイム300msのため、ロングディレイやアンビエント用途には向かない
  • クリーン・セッティングではリピート音にわずかな歪みが混じる場合があり、完全クリーン志向のプレイヤーは事前に試奏を推奨する
  • Smalls筐体のフットスイッチとノブの近接は、ライブでの踏み替え時にやや注意が必要
  • 総合評価として、シンプルで音楽的なアナログディレイを求めるプレイヤーには自信を持っておすすめできる一台であり、購入者満足度の高さ(5段階中4.8)がその実力を裏付けている
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